困ったものです

 弁護士の不祥事が報道されることは珍しくありません。

 

 平成25年4月に、東京の松○弁護士が後見人で預った3900万円を横領して逮捕されました。信用のある人だったが認知症のきらいもあったという報道でした。

 この人とは15年くらい前に、弁護士会の紛議調停委員(依頼者との紛争の調停)をしたときに小委員長のこの人と顔を合わせたことがあります。ちょっと強引な印象でしたが、不動産投資で行き詰っていたということです。そういう時代でした。

 法定後見人は家裁が指名する場合が多く、他に、裁判所を通さない任意後見人もあります。

 

1 賠償保険の限界

 家裁が指名する場合は、弁護士が1件で1億円までとか複数事件のときは無制限の賠償保険に加入します。しかし横領があれば保険で埋められるとは限りません。

 賠償責任保険の約款を読むと「故意によるものを除く」となっています。

 預った手形を紛失したとか、時効を失念していたというような過失の場合は大丈夫でしょう。

 しかし、横領で有罪になったら故意です。直ちに保険不適用ではないようですが、不適用が多く、被害者は浮かばれません。

 

                    

 

2 裁判所や国の責任

 選任した裁判所や国が補償したことは聞いたことがありません。

 犯罪の被害を補償する保険一般の問題になってしまい、依頼者の側で、犯罪被害にあった場合の保険に加入しておく他ないと思います。

 慎重な人は第三者に財産の管理を任せるようなこともないかも知れません。

 

3 毎月の懲戒の公開

 不祥事の懲戒は各弁護士会が行います。この点は監督官庁の監督が多い他の職業と違います。しかし、身内をかばうような空気はありません。最後は裁判官や検察官も入った委員会で決められますから、厳格性は保たれています。

 懲戒事例の多さは、同じ業界にいるものとして恥ずかしい限りです。

 知っている人も多いと思いますが、日弁連の機関誌に、毎月、懲戒が載っています。最近(平成31年)、若手は増員のために過当競争気味と思われ、弁護士になって5年以内の若手弁護士の懲戒も目につきます。

 

4 対策

 信用を失うことで、信託銀行などに行ってしまう分野も増えます。

 裁判所と弁護士会が対策を講じています。それでも容易ではありません。

 私は、後見人の仕事はしていませんが、リスク対応の感度を高め、一つ一つを着実に進めて信用を積み重ねる他はありません。