俺の親父は本を読まない。
あいつの本の粗末な扱いは完全に本に失礼だと思う。
そんな親父とある日仕事に出掛けたわけ。
で、仕事暇になってさ、親父が手持ちぶさたにしてるわけ。
俺、マンガでも買ってきてやるかってことで、本屋に行った。
そしたら急に何でか分からないけど、この本が頭に浮かんだ。
そういえば親父矢沢永吉好きで、成りあがりの話してたっけ。
親父に渡した。
元々本を粗末に扱うからあいつ、バイブル失くしちゃったのなきっと、そりゃ嬉しそうに貪り読むわけよ。
それから、あの本の行方を俺は知らない。
あいつに本、と言ってもマンガだけど、本貸したら、いつもボロボロになって返ってくるんだけど、成りあがり、返ってこないね一度も
でも、親父今度は失くしてない気がする。
だって、親父の人生そのもんだもん、「成りあがり」
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読者へ
オレは、昔のことを思い出すとマジになる。これは素晴らしいことだ。二十八歳。スーパースターと呼ばれ、所得番付に出るようになっても怒っている。怒ることに真剣になる。
銭が正義だ。こう思ってしか生きてこれなかった。ほんとは銭が正義だなんてウソなんだ。それは良く判ってる。でも、そう思わなければ生きてこれなかった自分に腹が立つ。
攻撃することが生きることだ。負い目をつくらず、スジをとおして、自分なりのやり方でオトシマエをつけてきた。休むわけにはいかない。やらねばならぬことは、まだある。
この本に書いたことは、あくまでもオレ自身の背景だ。読者は、特殊な例だと感じるかもしれない。でも、オレは、だれもがBIGになれる"道"を持っていると信じている。
五十三年六月 矢沢永吉
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そんな親父の生き様を息子は生きたい。