皆さんが「MMTとは一体なんなのか?」と聞かれた場合、どんな回答を思い浮かべるでしょうか。
 
『国債はどれだけ発行しても問題ないという理論』と考えた人、(そういう情報は多数ながれていますが)それは100%完璧に間違いです。

『インフレしない限り国債はどれだけ発行しても問題ないという理論』と考えた人、それでもやっぱり間違いです。

『自国通貨で発行されている国債は、債務不履行になることはないという理論』であれば正解には近づきましたが、しかしそもそもそれは財務省も言っている話ですので、それを認めたからといってMMTになるわけでもありません。

 

(むしろ『国債発行なんかやめてしまえ』と主張したり、『どういう条件で財政破綻になるのか』を研究したりするのがMMTだったりします)

 

ここでは、なるだけ簡単にMMTの説明をしてみたいと思います。

 


MMTの歴史(この段は興味のある人だけ読めばOKです)

MMTModern Monetary Theory、現代貨幣理論※1)は、ウォール街の投資家であるウォーレン・モズラー(Warren B. Mosler)氏が、30年ほど前に唱え始めた理論です。

彼は、自分の金儲けのために「お金の動き」を観察し、研究をしていました。

 

その研究の結果、『自国通貨は債務不履行にならない』などの現在のMMTに繋がる知見を発見し、(当時ユーロ加入前だった)イタリア国債を購入することで1億ドルを超える利益を得ました。

(そしておよそ10年後、同じ理屈でロシア国債を購入して8億ドル以上の損失を得るというオチがついたりもしたが)

 

その後彼はランダル・レイ(L. Randall Wray)、ビル・ミッチェル(Bill Mitchell)、ステファニー・ケルトン(Stephanie Kelton)といった経済学者と接触し、『MMT』と呼ばれるものを作り始めました。

 

 

それは『新しい学説』というよりも、表券主義(Chartalism)などの過去唱えられたことのある数々の理論を発掘し、統合し、整理された体系にまとめあげたもの、と言ったほうがより近いかもしれません。

 

クリントン大統領時代、アメリカ政府の収支が黒字になり、ほとんどの経済学者たちがそれを賞賛していたころ、彼らは「このままだと大きな不況が来る」と主張し、無視され……そしてその後、予想通りに不況が来たことで注目を浴び始めることになりました。

 

MMTは『能天気に財政拡張さえしていればOKだと連呼する理論』というイメージが先行していますが、『次にくる危機の予測』『今ある危機の芽の可視化』のほうが実態に近いのです。

 

(参照:現代金融理論(MMT)ー 伝統的ではない経済運営提案【翻訳記事】政府が無限のお金を持っているという過激な理論【MMT入門向け】来日記念、ケルトン先生のこれまで現代貨幣論の系譜など)

 


MMTの概略

MMTは、大雑把にいって2つの段階に分けられます。

 

一段階目は、思い込みや空論、イデオロギーを可能な限り排除し、主に政府や銀行において現実に行われているお金の流れ』に焦点を当てて、経済そのものを『あるがままに記述する(descriptive)』段階。

 

二段階目は、一段階目で得られた知識を元に、『経済が最大のパフォーマンスをあげるための規範(prescriptive)の提言を行う』段階。

 

たとえば『政府部門が財政黒字の場合、民間部門の返済不能な借金が膨れ上がり、バブル経済が発生しやすくなる』ことを明らかにするのが一段階目、『それを回避するためにはどうすれば良いのか』を考えるのが二段階目にあたります。

なお(特定の条件下では)『国債は返済不能にはならない』というよく用いられる話は一段階目です。

 

言ってみれば『地球は丸い』というのが一段階目、『東の果てに行きたいのであれば西に向かうべきだ』というのが二段階目になるのでしょうか。

「教科書に地球は平らだと書いてある!」と力説しても、私たちが現実に存在する地球が丸いという事実は変わりません。

ただし、『地球の大きさ』の見積もりが間違っていた場合には、「西に行くより東に行く方がやっぱり近かった」ということも十分あり得ます。

 

一段階目はイデオロギーを排除していますので、政策的にはどのようなスタンスでも取り入れて適用することが可能です。どのような政策目的を組み込むかによって、またそれぞれの国の歴史や制度によって二段階目の内容もそれぞれ変わってきます。アメリカでは左派が推進側で、日本では右派が推進側になっているのが面白いところ。

 

「これからMMTを学んでみたい」と考えているかたはまず、このYahoo!知恵袋の「ric********さん」による回答をご参照ください。必読です。

 


 

※1:一時期 『現代金融理論』と翻訳されることもありましたが、MMTは金融理論(Financial theory)の系譜ではないこともありこちらの訳語を使用しています。