プチ物語第一話『邂逅』 | つー君のブログ

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日々の何気ないこと

私、気ままにプチ小説…いや、物語を不定期に書いてみようかと思います。
つたない素人文章です。
飽きたら止めます。
疲れてたら書きません。
素人なので、発想力をあげるため大好きなあの女性をモデルにしようかと( ・∇・)フィクション

『邂逅』

「もう少しで逢える…」
病院のベッドで男はぽつりと呟いた。
誰に話しかけたのでもない。
病室には男一人のみ。
一週間ほど前に男の病が悪化し、大部屋から個室へと移ったのだ。
男の名は和泉幸人。(いずみゆきと)
先月39歳の誕生日をむかえたばかりであった。
幸人は手にしていた写真立てに軽くキスをして、机の上に置いた。
写真には茶色かかった髪の麗人が微笑んでいる姿があった。年の頃は20代とみていいだろう。
幸人は愛しむようにしばらく写真を見つめてから、ベッドに横になった。
わずかなブラインドの隙間から月明かりが漏れている。
幸人は自分の死期が近いことを悟っていた。もう、この心臓はもたないだろう。だが、死ぬことをさほど怖いとは思わなかった。
先に待っていてくれているであろう愛しい人がいると思えばこそである。
「長かった…」
愛しい女性がなくなってから10年の月日が流れていた。
初めてあの女性(ひと)を意識したのはさらに10年前のあの日…。
幸人は思い出すようにゆっくりと目を閉じた。