サパークラブを経営するその男を紹介されて、一応挨拶をした。
「こら、酔っぱらい。飲み過ぎだろう。」
いきなりそう言われて、ボクは客商売にもあるまじき反応をしてしまっていた。
「うるせー。偉そうに言うな、おっさん。」
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悪酔いして足元のふらつくボクは、カウンター越しにおっさんに絡んだ。
おっさんは父と同年代くらいに見える男だった。
グレーがかった髪は、父を彷彿とさせた。
ボクは、父を重ね合わせられる人にいつも弱かった。
ボクはドロドロに酔いながら、今度は泣き上戸になっていた。
酒を飲んで泣いたことなどなかったし、何も悲しいことなどなかったのに、おっさんの顔をまともに見据えた途端ぼろぼろと涙が溢れ、止まらなくなってしまった。
「くそっ、おっさんの顔がいけないんだ。おっさんの顔が・・・。」
支離滅裂なことを言いながら、あんあんと声を上げて泣いた。
マネージャーや店長も、こうなったボクを手が付けられないという顔で見守るだけだった。
おっさんはと言うと、じっとこちらを見ながら、それでも酒を飲んでいた。
別に叱る訳でもなく、ずっと声を上げて泣くボクを、見つめるだけだった。
「おい、そこで突っ立ってないで、こっち来て座れ。」
「何で。」
「他の客が、吃驚してるだろ。まあ、いいから、座れ。」
マネージャーも、ボクの背中を押した。
確かに品のいい店で、ボクの暴挙は問題有りだろう。
渋々ながら、と言っても、本当は酔いすぎて立っているのもやっとの状態だった。
よれよれになりながら、おっさんの隣になんとか座った。
座ったら、また声を上げて泣いた。
おっさんが、意外にも優しく頭を撫でてくれた。
ボクは、おっさんに身体を預けて、それでもおっさんに悪態を付きながら、泣いた。
おっさんとボクの、これが出逢いだった。