サパークラブを経営するその男を紹介されて、一応挨拶をした。

「こら、酔っぱらい。飲み過ぎだろう。」

いきなりそう言われて、ボクは客商売にもあるまじき反応をしてしまっていた。

「うるせー。偉そうに言うな、おっさん。」

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悪酔いして足元のふらつくボクは、カウンター越しにおっさんに絡んだ。

おっさんは父と同年代くらいに見える男だった。

グレーがかった髪は、父を彷彿とさせた。

ボクは、父を重ね合わせられる人にいつも弱かった。


ボクはドロドロに酔いながら、今度は泣き上戸になっていた。

酒を飲んで泣いたことなどなかったし、何も悲しいことなどなかったのに、おっさんの顔をまともに見据えた途端ぼろぼろと涙が溢れ、止まらなくなってしまった。


「くそっ、おっさんの顔がいけないんだ。おっさんの顔が・・・。」


支離滅裂なことを言いながら、あんあんと声を上げて泣いた。

マネージャーや店長も、こうなったボクを手が付けられないという顔で見守るだけだった。

おっさんはと言うと、じっとこちらを見ながら、それでも酒を飲んでいた。

別に叱る訳でもなく、ずっと声を上げて泣くボクを、見つめるだけだった。


「おい、そこで突っ立ってないで、こっち来て座れ。」

「何で。」

「他の客が、吃驚してるだろ。まあ、いいから、座れ。」


マネージャーも、ボクの背中を押した。

確かに品のいい店で、ボクの暴挙は問題有りだろう。

渋々ながら、と言っても、本当は酔いすぎて立っているのもやっとの状態だった。

よれよれになりながら、おっさんの隣になんとか座った。

座ったら、また声を上げて泣いた。

おっさんが、意外にも優しく頭を撫でてくれた。

ボクは、おっさんに身体を預けて、それでもおっさんに悪態を付きながら、泣いた。


おっさんとボクの、これが出逢いだった。

「おまえもやっと成人だな。おめでとう。」

「はやく、大人にして、おにいさん。大人になりたい。」

自分のあられもない襦袢姿に、興奮しきっていた。

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ボクはその日限り、本当に店を辞めてしまった。

行為の後、ケンゴウにそう伝えたが、そうか、と言っただけだった。

ボクが何処に勤めようと、そんなことは全く気にも掛けていないのだろう。


夕方になり、初出勤した。

6時出勤なので、今までと大した違いはない。

何でも、会社組織になっているらしく、希望すれば保険にも入れると言われたが、それは辞退した。

店は新しいビルの2階で、内装も豪華だった。

今まで勤めていた、うらぶれた店とは比べものにならないほど、清潔で美しかった。

キッチンにはコックが二人も居たし、店長も居れば、社長やマネージャーも時々は顔を出す。

女達もたくさん居たが、男の従業員も居ることで、どろどろとした確執もないような気配で、その点は気楽だった。


二十歳になっていたので、夜の仕事をするにも、もう何も咎められることもない。

新人だし、店の中で最年少だったこともあり、好き勝手が許された。

一風変わった子、それがボクのポジションだった。

昨日までとは、がらりと変わってしまった周りに、ボクは浮かれていた。


セックスワーカーをしていた間、酒を飲むことは全くなかった。

もともと、消毒にも反応するアルコールアレルギーだし、独りで居る時に飲みたいと思うことなどなかった。

しかし、飲み屋に勤めて、いえ、飲めませんとは、ボクは言えなかったし、飲むものだとも思っていた。

飲めない酒を、久し振りに飲むことで、悪酔いもしょっちゅうだった。


ある日、閉店間近、他の客の前ですでにべろんべろんになっていたボクは、ある客の前に居るマネージャーに呼ばれて、ふらつきながら行った。

上得意らしいその客は、ボクは初対面だった。

サパークラブを経営するその男を紹介されて、一応挨拶をした。


「こら、酔っぱらい。飲み過ぎだろう。」


いきなりそう言われて、ボクは客商売にもあるまじき反応をしてしまっていた。


「うるせー。偉そうに言うな、おっさん。」




振り袖姿ということもあり、店の人にも客にもちやほやされた。

燻っていた心も、酒の酔いも手伝いだんだんと晴れてきた。

店のマネージャーの、うちで働いてくれないかという世辞にも近い勧めに、ボクは乗っかった。

勤めることを、その日のうちに決めた。
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日付が変わる頃、アパートに帰った。

ケンゴウは、未だ帰っていなかった。

せっかく振り袖を着ているのに、ケンゴウに見せる前に脱ぐのは勿体なかった。

そのまま俯せになり、眠ってしまっていた。


朝方、ケンゴウが忍び足で帰ってきた。

何処に行っていたのかと聞いたことはないが、仕事でないことは確かだろう。

ボクが起きると、ケンゴウがただいまと言った。


「おにいさんが帰ってくるまで脱がずにいたんだからね。脱がせてよ。」

「悪かったな。どれ、どうやって脱がすんだ?」


綺麗に結っていた髪も解け、着物も着崩れていたが、四苦八苦しながらもケンゴウは脱がせていった。

何本も締め付けている腰ひもを、ひとつひとつ解かれると、ボクは襦袢だけになった。

着物は高価な物なので、さすがにそのまま交わるのは気が引けたが、襦袢ならそれもかまわないと思った。


ケンゴウも、ボクの気持ちを察したのか、襦袢は脱がさないまま、襟を割って乳房を露わにした。

脱ぎ散らかした振り袖や、金襴緞子の帯をさっと横に払うと、布団の上に寝かされた。

ケンゴウは襦袢の前を割ると、腰巻きの裾から手を滑り込ませてきた。


ボクは既に濡れていた。

襦袢の肩と裾をはだけて、腰ひもを締めたまま、愛撫を受けた。

母の選んだ上品な薄桃色の長襦袢に、淫らな行為は似合わなかったが、何かを汚しているという、はっきり言えば母を汚しているという気分は、興奮に繋がった。

脚を開いて突っ張ると、白足袋のコハゼが、ひとつふたつ外れた。

腰巻きの尻の部分に、喜びの汁が滴っていった。


「おまえもやっと成人だな。おめでとう。」

「はやく、大人にして、おにいさん。大人になりたい。」


自分のあられもない襦袢姿に、興奮しきっていた。