wrote in 2008-07-10 08:00:00 corrected today
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夕方から待っていても一向に帰ってこない日が続いたので、いくらボクでも避けられていることは、もう揺ぎ無い事実だと分かってしまったから。
帰った振りをして時間を潰し、ほとんど飲み屋ばかりが入っている雑居ビルの3階にある彼の部屋へと、足音を忍ばせながら階段を上がっていった。
もう、秋口ではあったけど、エアコンもない彼の部屋は、ドアを開け放したままだった。
ボクは、一層気づかれまいと、息さえ潜めて、部屋へと近づいた。
そこには、以前、彼が気になっている素敵な女性がいると言っていた、その人が居た。
彼と、キッチンのテーブルで向かい合い、手を握り合っていた。
ボクは、足が竦んで、一歩も動けなかった。
なのに、酷く動悸がして、ぐるぐると頭の中が回転し、天地の感覚がおかしくなった。
二人は見つめあい、穏やかに微笑していた。
ボクには、最近、微笑んでもくれなかったと言うのに。
ボクは、嫉妬した。
嫉妬で、狂うかと思った。
しかし、ボクはその場へ躍りこんで行くことは、出来なかった。
余計、惨めになりたくなかったからなのか、最後のプライドなのか。
ひっそりとその場を後にして、当て所もなく夜の街を徘徊した。
行く当てもなく彷徨った。
高校生のボクなどが行ける場所など限られている。
結局、何処へも寄ることもせず、ひたすら歩いてくたびれ果てた。
くたびれ果てて、また、それでも彼に会いたいと思った。
思ってしまったら、もう、止まらなかった。
足が自然と、アパートを目指して動いていた。
正直、彼とあの彼女が、部屋にいるだろうと考えていたので、怖くはあった。
一緒の布団で寝てたらどうする、セックスしてる最中だったらどうするなどと、詮無いことを考えてますます恐怖した。
しかし、止められなかった。
今度は、足音を忍ばせるどころか、存在を誇示するように足音を立てて、階段を上がっていった。
部屋の灯りは消えている。
バクバクという心臓に鞭を打って、ドアを開けた。
しかし、そこは、もぬけの殻だった。
拍子抜けすると同時に、ほっとしてもいた。
だが、ボクの目からは、涙が盛り上がっていった。
もう、元通りにはならないことくらい、分かりきっているというのに、未練で胸が張り裂けそうだった。
それにしても、二人は何処へ行ってしまったのだろう・・・
ボクが、涙に暮れていると、思いも掛けず彼が帰ってきた。
びっくりしたボクは、バカのように何も言えずただ見つめるしかできなかった。
「なんだよ、来てたのか・・・」
「彼女は?」
「帰ったよ。いい家のお嬢さんはな、外泊なんてしないの。」
ボクは、一度だって送ってもらったことなんかないのにと、事ここに至っても嫉妬していたが、何も言い返せずにいた。
「なあ、もう、分かっただろ。俺はあの人と付き合ってるんだよ。真面目にな。」
そんな・・・
「もう遅いから、泊まってってもいいぞ、俺、出かけてくるから。でも、朝になったら帰るんだぞ。で、もう、ここには来るな。な、わかったな。・・・短い間だったけど、楽しかったよ。」
彼は、靴を突っかけると、ばたんとドアを閉じて、出て行ってしまった。
ボクは、何も聞けず、罵倒することすら出来ず、ただ悲しかった。
それになんだよ、楽しかったって・・・楽しくなんか、なかったじゃないか。
ボクは、朝まで泣いて、泣きはらした目のまま、ぐずぐずと部屋を後に出来ないまま、狭い部屋を見回していた。
何も、楽しいことなどなかったのに、この部屋へももう来れないのかと思うと、また、泣けてきた。