身体の関係を持ちたいのだろうか。

そう言った思いが去来した。

酔客とホステスの関係であることを、すっかり失念しているボクはそう思った。

「遊びに行ったら、どうなるの?」

「どうなるって・・・。どうもなりやしないさ。」

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・・・と、2ヶ月前に書きかけたまま放置してたら、何だか気が削がれて、むむむ・・・な感じですが、このまま続けてもいいのかな~と思いつつ、ブログタイトルにそぐわないかも知れないけど、やっぱり中途半端は気持ちが悪いので、続行します。(陳謝)

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考えた挙げ句、ボクは結局おっさんの住むマンションには一度も行かなかった。

見え隠れするおっさんの魂胆が、どうにも受け入れられず、急激に会うことに嫌気が差してきた。

しかし、何故これほどまでに固執するのか分からないが、おっさんはボクに執着した。

必ず店の帰りには迎えに来て、運転手よろしくボクをアパートまで送った。

すんなりとは帰してくれず、帰宅時間がどんどん遅くなり、終いには夜が明ける頃まで引っ張り回されるようになってしまっていた。


その日も、何時間も連れ回され、アパートの下まで送ってくれた。

見上げると、部屋には灯りが点っていて、ドアを開けてからのことを考えると、うんざりとしてしまった。


「あれ、明かりが点いてるじゃないか。誰か居るの?」


おっさんはそう言いながら、掌を自分の頭の横に水平に置くと、そこからずんと下げていって、腰の辺りで止めて首を傾げた。子供が居るのかと聞かれたのだと分かった。

普通、水商売に勤める者は、男の存在を隠すが、ボクはもう潮時だと思った。

首を振りながら、おっさんがしたように掌を頭からずずっと上に持って行った。ネクタイを締める真似もしてみた。

一瞬目を見張り、ボクを見つめて、そしてため息を吐いた。


「そうか・・・、そうだったのか。」

「うん。騙す積もりじゃなかったけど、ごめんね。」

「別に、騙されたとは思っていないさ。嘘は言ってないんだし。」


ボクには何となく後味の悪さが残ったが、世慣れたおっさんにはどうということもなかったのだろう。

その後もおっさんは最初のペースで店には来たが、それ以上迫ることはなかった。

結局、ボクは父の幻影を見ていただけで、男としては「パパ」のことを見ることが出来なかったと言うことがおっさんにも分かったのだろう。


そんなことの、ほとぼりが冷めた頃、ボクは懲りもせずに、また客の一人に熱を上げ始めた。

ボクは自分でも父のような人に惹かれるが、ボクもまたそういう人を惹きつけるのかも知れない。

結局、パパと呼ぶようにした。

ボク達の親子ごっこは、始まった。

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足繁く通ってくるおっさんは、必ず看板まで居て、ボクを送って帰るようになった。

いくらパパと呼んでいても、アパートのすぐ下まで送ってもらうのは気が引けたし、何よりひょっこりケンゴウと鉢合わせでもしたら最悪だと思い、すぐ横を走る電車のガードを潜ったところまで送ってもらっていた。

ちょうど空き地になっていたので、そこに車を止めてひと時語り合っていた。


そのうちおっさんは、郊外まで車を走らせるようになった。

海や、山や、どちらにしても真っ暗な辺りで車を止めた。

おっさんは、車の中でボクの手をずっと握った。

手を握り、一度だけキスをした。


「パパ、親子はキスなんかしちゃいけないんだよ。」

「ああ、そうだな。」


そして、なかなかうちに帰らせてもらえなくなった。

もう帰りたいと言っても、もう少し、もう少しだけ、と言って何時間も束縛された。

ボクはだんだん嫌気が差してきた。


おっさんは結婚しているが、今は別居状態だという。

オフィスを兼ねるマンションの一室に、起居しているという。


「どうだ、一遍遊びに来ないか。」


パパと呼ばせたのは、ボクを子供のように思ってくれていた訳ではなかったのか。

身体の関係を持ちたいのだろうか。

そう言った思いが去来した。

酔客とホステスの関係であることを、すっかり失念しているボクはそう思った。


「遊びに行ったら、どうなるの?」

「どうなるって・・・。どうもなりやしないさ。」

おっさんが、意外にも優しく頭を撫でてくれた。

ボクは、おっさんに身体を預けて、それでもおっさんに悪態を付きながら、泣いた。

おっさんとボクの、これが出逢いだった。

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結局おっさんは看板まで居て、ぐずぐずと泣くボクを宥めてくれた。

飲み過ぎはよくないぞ、とボクに声を掛け、閉店時刻になると、大人しく帰って行った。

店の男達に、そのあと散々叱られた。

当然のことだ。

大分酔いも醒めてきて、落ち着いたボクは悄然として謝った。

訳の分からない酔っぱらいになったことに、嫌気が差していた。


2、3日後、おっさんは店に来た。

ボクは、素直に謝った。

酒を飲んだ時の記憶など、なくなっていれば言うことはないのだが、どんなに酔っぱらっても記憶がなくなることはなかった。

おっさんは、まあ若気の至りだ、気にするな、と言ってくれて、別に気を悪くしている様子でもなかった。

それまでたまにしか来なかったおっさんは、どういう訳かしょっちゅう店を訪れるようになっていた。

いつも一人でふらりと来て、美しくて話題の豊富な他の女達を差し置き、なんの面白味もないボクと喋りながら、飲むようになった。


おっさんとの出逢いは最悪だったが、慣れてくると本当に父親のようで、一緒にいると安らいだ。

店が跳ねると、車で送ってもらうようになっていた。

アパートに帰る前に、人気のない場所に車を止めて、話しをした。

何処かに行くかと言われたが、仕事以外で酒など飲みたくなかったし、大抵は酔っぱらっていたので、静かな場所で語る方がずっとよかった。

おっさんのことを、最初はおっさんと詰ったが、店の上客でもあるからそれ以後は、社長と呼んでいた。

大分仲良くなった頃、おっさんが、その呼び方は気に入らないと言い出した。


「じゃあ、何て呼べばいいの?」

「おとうさんか、パパ。どうだ?」

「どうだって言われても。」


ボクは自分でも父のような人に惹かれるが、ボクもまたそういう人を惹きつけるのかも知れない。

結局、パパと呼ぶようにした。

ボク達の親子ごっこは、始まった。