加藤君と21匹の猫6
テーブルに色とりどりの小さな瓶が並ぶ。
久しぶりにこんなに並べたかもしれなぃ。
七色のマニキュアの瓶の傍らには携帯番号の書いてあるメモが寄り添ってる。
指を広げ手をかざしす。
浅黒い疲れきった働く手にバカみたいになにも知らないお嬢様のように爪だけがキラキラと着飾ってる。
いつの間にかネイルが似合わない手になってるのも気が付かなかったんだなぁ…
絹江はポツンとつぶやくと外の工事の音や車の滑る音・鳥の鳴き声
急にいつも聞く現実が入ってきた。
爪だけがいつまでも現実を知らないおとぎの国。
絹江は気恥ずかしい気持ちで一杯になりリムーバーを探した。
ーピンポンー
玄関のチャイムがなった。
ひやっとしたがまさかと思いながら覗き窓を覗く。
…真っ暗…
指で押さえてるんだ…
絹江は一気に不信感を募らせ体を硬くした。
するとぱっと光が差し覗き窓の作用でエイリアンみたいに歪んだ顔の幹夫が笑って手を振った。
…
絹江は嬉しい反面、急にウチを訪ねるなんて少し図々しいようにも思え何か得体の知れない黒い固まりが胸の中に生まれた様な気がした。
…ような気がしたけど久しぶりに目の前に心をときめかせる存在がいる事の方が勝ってしまい絹江は躊躇わすドアを開けた。
「 こんにちは。」
首を傾げにこりと微笑み小さく紳士にそうつぶやき立ち動かない男に絹江の不安は一気に消し飛ばされた。
「 入ったら? 」
「 ありがとう 」
彼は不思議な魅力がある。
前もそう感じたけど玄関を開けたら“待ち合わせ場所決めたじゃない?”だの“どうして訪ねてきたの?”だの問いただしたいと思ってたのに
彼の顔をみると…とたんに“早く助けてあげなくちゃ”という使命感にかられる。
だからあの雨の日も気が付けば傘の下に彼を入れていた。
何故?…と言われてもわからない。ただそうしたくさせるとしか言いようがない。
絹江の小さなアパートに幹夫が入ると部屋が沈み込む様な気がした。
きちんと並んだ玄関に似合わない大きな靴。
この違和感があんな夢を見せたのかもなとふっと笑う。
幹夫はそれを敏感に気が付いて振り返り顔を覗き込んだ。
「 いや…なんかウチの狭いアパートに男の人が入ると…大きいなって。
…あ、アレみたい。ハンバーグのCMで大男が子供達に大きくなれよって言うの。自分が大きいくせに…
知ってる…? 」
幹夫は首を横に振り、堂々とベッドに座る。
人間は馴染みのある場所を大抵選んでそれなりのテリトリーにする。
幹夫がこの狭いアパートで選んだのはベッド。
狭いからしょうがないけど…
何かあからさまでこっちが照れてしまった。
私ったら…緊張してるみたいだ…
絹江はようやく冷静に自分の事をたしなめる。
ベラベラしゃべってカッコ悪い。
もっと大人の女性らしく振る舞って余裕を見せつけたかった。
幹夫がベッドに座っただけで…こんなに高揚して情けない。
絹江はなんか飲む?と顔も見ずに尋ねて冷蔵庫に向かおうときびすを返す。
すると急に幹夫が手を掴む。
さっきまで座ってた人が瞬間移動でもしたかのようで絹江はえらく驚いたのは言うまでもない。
「 …途中じゃん。ごめんね。急に来て邪魔だったよね 」
幹夫は絹江の手を取って指先をじっと見て言った
ホラ…図々しいなんてむしろ逆だわ。
絹江は控えめな幹夫の発言にさっきの不安は自分が独り身の長さのせいでどこか過敏になってただけかもと少し恥ずかしさを覚えた。
「…ううん。落とすから… 」
幹夫は急に顔を上げて切ない目をして絹江を見た
「 なんで? 」
懇願して切ない声だった。彼の真剣さに絹江は自分が悪い事を言った気分にさえなった。
「 綺麗なのに…絹江さんがしたの? 」
「…うん…実は前はネイルアートの店をやっててね…」
「 見てるからやりなよ最後まで。見てみたいから 」
狭い鏡台にある七色の瓶たちにまた役目が来る。
窓の外からは工事の音・車のすべる音や鳥の鳴き声。
そしてさっきはいなかった好奇心の目で絹江の手先を見つめる男性。
すべてが現実なのが不思議に思えた。
「…お店どこでやってたの? 」
「 隣の駅の…東にある雑居ビルの中だから…一番下が呉服屋で…」
「 通りに潰れたフレンチ料理屋がある! 」
「 うん。その通りの手前!! 」
「 …僕の店だよ。潰れちゃったフレンチ料理屋 」
絹江は手を止めて幹夫を見た。
幹夫は何事もなかったかのように平和な笑顔をして絹江の手元を指出さして続けるように催促した。
あぁ、と言って作業に戻った
…不謹慎だけど…
縁を感じてしまった。
私がいつか行こうと思ってたお店のオーナーが彼で…
私たちは今夢を置いたままここでこうして出会ってる…
絹江は爪を塗りながらそんな事を考えていた。
「 じゃぁ、もしかしたら私がお店に食べに行ってたらあなたがいたんだね。 」
「 ごめんね。潰しちゃって 」
幹夫はまた控えめにそんな事を言ってる。
「 なに謝ってるのよ!なんかこんな風に言いたくないけど、お互い様よ 」
絹江はさっきまで大男に見えてた幹夫に
なにか同士のようなものを感じてやっと安心した。
切ないけど人生を失敗した先で繋がってる人がいたことに救われたような気がした。
浅黒い手にバカみたいに浮かれたネイルが出来上がった。
幹夫はポツリときれいだな…と言った。
あなたが綺麗と言うならそれで良いわ。
七色の瓶が安アパートに浮かび上がるように
絹江の今のこの気持ちはここには似合わないくらいキラキラしてるのかもしれない
久しぶりにこんなに並べたかもしれなぃ。
七色のマニキュアの瓶の傍らには携帯番号の書いてあるメモが寄り添ってる。
指を広げ手をかざしす。
浅黒い疲れきった働く手にバカみたいになにも知らないお嬢様のように爪だけがキラキラと着飾ってる。
いつの間にかネイルが似合わない手になってるのも気が付かなかったんだなぁ…
絹江はポツンとつぶやくと外の工事の音や車の滑る音・鳥の鳴き声
急にいつも聞く現実が入ってきた。
爪だけがいつまでも現実を知らないおとぎの国。
絹江は気恥ずかしい気持ちで一杯になりリムーバーを探した。
ーピンポンー
玄関のチャイムがなった。
ひやっとしたがまさかと思いながら覗き窓を覗く。
…真っ暗…
指で押さえてるんだ…
絹江は一気に不信感を募らせ体を硬くした。
するとぱっと光が差し覗き窓の作用でエイリアンみたいに歪んだ顔の幹夫が笑って手を振った。
…
絹江は嬉しい反面、急にウチを訪ねるなんて少し図々しいようにも思え何か得体の知れない黒い固まりが胸の中に生まれた様な気がした。
…ような気がしたけど久しぶりに目の前に心をときめかせる存在がいる事の方が勝ってしまい絹江は躊躇わすドアを開けた。
「 こんにちは。」
首を傾げにこりと微笑み小さく紳士にそうつぶやき立ち動かない男に絹江の不安は一気に消し飛ばされた。
「 入ったら? 」
「 ありがとう 」
彼は不思議な魅力がある。
前もそう感じたけど玄関を開けたら“待ち合わせ場所決めたじゃない?”だの“どうして訪ねてきたの?”だの問いただしたいと思ってたのに
彼の顔をみると…とたんに“早く助けてあげなくちゃ”という使命感にかられる。
だからあの雨の日も気が付けば傘の下に彼を入れていた。
何故?…と言われてもわからない。ただそうしたくさせるとしか言いようがない。
絹江の小さなアパートに幹夫が入ると部屋が沈み込む様な気がした。
きちんと並んだ玄関に似合わない大きな靴。
この違和感があんな夢を見せたのかもなとふっと笑う。
幹夫はそれを敏感に気が付いて振り返り顔を覗き込んだ。
「 いや…なんかウチの狭いアパートに男の人が入ると…大きいなって。
…あ、アレみたい。ハンバーグのCMで大男が子供達に大きくなれよって言うの。自分が大きいくせに…
知ってる…? 」
幹夫は首を横に振り、堂々とベッドに座る。
人間は馴染みのある場所を大抵選んでそれなりのテリトリーにする。
幹夫がこの狭いアパートで選んだのはベッド。
狭いからしょうがないけど…
何かあからさまでこっちが照れてしまった。
私ったら…緊張してるみたいだ…
絹江はようやく冷静に自分の事をたしなめる。
ベラベラしゃべってカッコ悪い。
もっと大人の女性らしく振る舞って余裕を見せつけたかった。
幹夫がベッドに座っただけで…こんなに高揚して情けない。
絹江はなんか飲む?と顔も見ずに尋ねて冷蔵庫に向かおうときびすを返す。
すると急に幹夫が手を掴む。
さっきまで座ってた人が瞬間移動でもしたかのようで絹江はえらく驚いたのは言うまでもない。
「 …途中じゃん。ごめんね。急に来て邪魔だったよね 」
幹夫は絹江の手を取って指先をじっと見て言った
ホラ…図々しいなんてむしろ逆だわ。
絹江は控えめな幹夫の発言にさっきの不安は自分が独り身の長さのせいでどこか過敏になってただけかもと少し恥ずかしさを覚えた。
「…ううん。落とすから… 」
幹夫は急に顔を上げて切ない目をして絹江を見た
「 なんで? 」
懇願して切ない声だった。彼の真剣さに絹江は自分が悪い事を言った気分にさえなった。
「 綺麗なのに…絹江さんがしたの? 」
「…うん…実は前はネイルアートの店をやっててね…」
「 見てるからやりなよ最後まで。見てみたいから 」
狭い鏡台にある七色の瓶たちにまた役目が来る。
窓の外からは工事の音・車のすべる音や鳥の鳴き声。
そしてさっきはいなかった好奇心の目で絹江の手先を見つめる男性。
すべてが現実なのが不思議に思えた。
「…お店どこでやってたの? 」
「 隣の駅の…東にある雑居ビルの中だから…一番下が呉服屋で…」
「 通りに潰れたフレンチ料理屋がある! 」
「 うん。その通りの手前!! 」
「 …僕の店だよ。潰れちゃったフレンチ料理屋 」
絹江は手を止めて幹夫を見た。
幹夫は何事もなかったかのように平和な笑顔をして絹江の手元を指出さして続けるように催促した。
あぁ、と言って作業に戻った
…不謹慎だけど…
縁を感じてしまった。
私がいつか行こうと思ってたお店のオーナーが彼で…
私たちは今夢を置いたままここでこうして出会ってる…
絹江は爪を塗りながらそんな事を考えていた。
「 じゃぁ、もしかしたら私がお店に食べに行ってたらあなたがいたんだね。 」
「 ごめんね。潰しちゃって 」
幹夫はまた控えめにそんな事を言ってる。
「 なに謝ってるのよ!なんかこんな風に言いたくないけど、お互い様よ 」
絹江はさっきまで大男に見えてた幹夫に
なにか同士のようなものを感じてやっと安心した。
切ないけど人生を失敗した先で繋がってる人がいたことに救われたような気がした。
浅黒い手にバカみたいに浮かれたネイルが出来上がった。
幹夫はポツリときれいだな…と言った。
あなたが綺麗と言うならそれで良いわ。
七色の瓶が安アパートに浮かび上がるように
絹江の今のこの気持ちはここには似合わないくらいキラキラしてるのかもしれない