加藤君と21匹の猫5
~今日か明日で人類は滅亡します~
赤茶色のマンションの一室で世界が滅びようとしてるのに私達はまだ布団の取り扱いをしていた。
ドドドド…地響きがなる。
布団の取り扱いも馬鹿らしいのであんなに欲しがって奪い合った毛布の耳をぱっと捨てて窓の外を見た。
大量の水が押し寄せてはビルとビルの間を我先にと曲がりくねり濁流が濁流をのみ、
先ほどの“この世の終わり”の地響きを鳴らしてる。
もはや逃げる事も出来ない。
TVをつけると勇気あるアナウンサーが私達に向けてアナウンスをしてる。
即身仏になるつもりなのか…青ざめた顔をしながらも必死にアナウンスを続けてる。
“皆さん、我々の青い地球は我々を拒み、消し去る事を決断したようです。ですが、我々も地球の一部なのです。
そして再び地球が人類を所望する時が必ず来ると私は信じています。
そうです。今は我々は地球に淘汰されるだけなのです。
そしてまたいつか私達の仲間が青い地球を目にする日が必ずやって来ます。
えぇ、そうですそうです。きっと必ずやって来ます…”
…彼がいつ画面から走って消えるのか、それとも聖人君子なのか?考えると少しおかしくなったが、
ふと考え止まると全くこの国のお偉方の姿は表に現れないのをみると“腐ったノアの箱舟”があるという都市伝説は本当だったのかもしれない。
その噂通りならどの道生き残ったってお偉方が選んだ厭らしいDNAが蔓延る人類なんて滅んだも一緒だ。
崩れさろうとする中でも新しい発想は生まれるなんてなんとも悲劇なような望みのような不思議な気持ちになった。
その時赤茶色のマンションがついに傾いた。
布団で寝てた毛布敵の彼が漫画の様に転がった。
壁やらスタンド電気やらリモコンやら雑誌・テーブルの足…粗大ゴミ屋が羅列するだろう家財が彼と共になだれ、もみくちゃにされた。
…大丈夫??…私は離れた場所から屈んで覗き込む。
彼は頭を少しコトン・と鳴らしたが…
-呆れた。まだ寝てる。
ため息をつきながら私は彼の方に近づき
相変わらず地響きが鳴る中彼と家財がなだれ込んだ壁に背を預け体育座りをした。
このまま終わるんだ。
電車のように揺れだした部屋の中で私はポツンと考えた。
濁流はもはや巨大な沼のようにぬらりぬらりと湖面が糊を練るようなうねりを見せ始めてる。
彼は傍らでグースカ寝てる。
寝たまま死ぬ方が幸せかも知れない。
のでこの男は幸せなのかもしれない。
けれど、こんな時にいつまでも寝てるなんて。
残りわずかな私との時間をなんだと思ってるんだろう?
突然、彼だけ幸せの内に死んでいくのが憎たらしくなった。
私はこのまま崩れるマンションとドン・キホーテのように無駄な格闘をし、濁流に呑まれ、大量の水を飲み、苦しもがき死ぬかもしれないのに
この男は夢の中でパカンと頭を何かに小突かれいとも簡単に死んでゆく。
まさか牧歌的な幸せな夢なんか見てるとしたら本当に許さないかもしれない
さっきまで同じ布団で寝てたのにこんなの不公平だ。
そう嫉妬する反面、彼と手を握りしめ濁流に沈む姿を想像し、
寝てる彼を見るとそれすら…それだけの事すら叶わない自分を哀れに情けなく思えた。
そしてまた死にゆく姿に憧れさせるなんてと
この男が憎たらしくなった。
「 起きて!逃げるわよ!? 」
彼の尖ってツヤツヤな肩口をパンパンと叩いた。
一息男は唸りを上げた。
「 とにかく…逃げるのよ!! 早く起きなさい!! 」
揺らぐ地面と同じくらいグダグダに男は手をつき体を起こす。
濁流の音がすぐそこまで近づいてる。
歪んだ赤茶色のマンションは絶えきれずひびを作り白い粉塵をまき散らし始めた。
その音はダイレクトにこの世の中心になった
轟音のせいで何をしてもサイレント映画のように自分達にも聞こえなかった。
彼を叩いても聞こえないのでどれだけ力が入ってたかもわからない。
彼の腕を引っ張り足を滑らせ尻餅をついた。
音がしないので全く感覚がない気がする。
もしかしてこのまま死ぬときもなんの感覚もしないのかもれしれない。
それが世界の終わりがくれた最後の処方薬なのかも。
その時轟音は更に勢いを増し鳴り響く。
水が入り込み床に滑り込んで一気に家財が立体的に暴れ始めた慌ただしい傾いた床の上
サイレントの世界の中、彼女はさっきまで叩いていた男の肩口にキスをした。
~~~~~
…はっと絹江は目を開けた。
当たり前だが馬鹿げた夢だ。
がばりと一気に起き上がると布団はきっちりかけられていて
けれども絹江は裸だった。
左手をベッドに滑らせた
そこには温もりはなくシーツのさっくりした手触りのみだった。
絹江はベッドから起きていい加減にパジャマを着る。
寝る前ではなく起きてからパジャマを着るのもあべこべなんだけど。
テーブルにメモがある。
“ 昨日はありがとう。
僕はまた来ても? ”
しゃべりかけるような筆跡の下に携帯番号が書いてあった。
玄関には傘が2本ならんである。
「 なんで彼とのあんな夢を… 」
昨晩、土砂降りの中、
絹江はネコを拾った。
雨に閉じ込められたずぶ濡れで哀れな男に置き傘を差し上げたんだけど、
彼はその傘をささずに軒下にいた。
襟のたったジャケットを着た坊主のネコは
サングラスを外すとくるりとした夜目を見せた。
絹江はそのネコを拾ったのだった。
土砂降りの中絹江は傘をさし、ネコはまだ大事そうに差し上げた傘を抱えて絹江の傘に入り、
傘を持った。
お名前は?と聞くと
「 すいません。幹夫って言います 」と答えた
生きてる事に謝るかのような返事に絹江は大分控えめな男の人だなぁとくるりとした目の次に好感を持った。
ー続く
赤茶色のマンションの一室で世界が滅びようとしてるのに私達はまだ布団の取り扱いをしていた。
ドドドド…地響きがなる。
布団の取り扱いも馬鹿らしいのであんなに欲しがって奪い合った毛布の耳をぱっと捨てて窓の外を見た。
大量の水が押し寄せてはビルとビルの間を我先にと曲がりくねり濁流が濁流をのみ、
先ほどの“この世の終わり”の地響きを鳴らしてる。
もはや逃げる事も出来ない。
TVをつけると勇気あるアナウンサーが私達に向けてアナウンスをしてる。
即身仏になるつもりなのか…青ざめた顔をしながらも必死にアナウンスを続けてる。
“皆さん、我々の青い地球は我々を拒み、消し去る事を決断したようです。ですが、我々も地球の一部なのです。
そして再び地球が人類を所望する時が必ず来ると私は信じています。
そうです。今は我々は地球に淘汰されるだけなのです。
そしてまたいつか私達の仲間が青い地球を目にする日が必ずやって来ます。
えぇ、そうですそうです。きっと必ずやって来ます…”
…彼がいつ画面から走って消えるのか、それとも聖人君子なのか?考えると少しおかしくなったが、
ふと考え止まると全くこの国のお偉方の姿は表に現れないのをみると“腐ったノアの箱舟”があるという都市伝説は本当だったのかもしれない。
その噂通りならどの道生き残ったってお偉方が選んだ厭らしいDNAが蔓延る人類なんて滅んだも一緒だ。
崩れさろうとする中でも新しい発想は生まれるなんてなんとも悲劇なような望みのような不思議な気持ちになった。
その時赤茶色のマンションがついに傾いた。
布団で寝てた毛布敵の彼が漫画の様に転がった。
壁やらスタンド電気やらリモコンやら雑誌・テーブルの足…粗大ゴミ屋が羅列するだろう家財が彼と共になだれ、もみくちゃにされた。
…大丈夫??…私は離れた場所から屈んで覗き込む。
彼は頭を少しコトン・と鳴らしたが…
-呆れた。まだ寝てる。
ため息をつきながら私は彼の方に近づき
相変わらず地響きが鳴る中彼と家財がなだれ込んだ壁に背を預け体育座りをした。
このまま終わるんだ。
電車のように揺れだした部屋の中で私はポツンと考えた。
濁流はもはや巨大な沼のようにぬらりぬらりと湖面が糊を練るようなうねりを見せ始めてる。
彼は傍らでグースカ寝てる。
寝たまま死ぬ方が幸せかも知れない。
のでこの男は幸せなのかもしれない。
けれど、こんな時にいつまでも寝てるなんて。
残りわずかな私との時間をなんだと思ってるんだろう?
突然、彼だけ幸せの内に死んでいくのが憎たらしくなった。
私はこのまま崩れるマンションとドン・キホーテのように無駄な格闘をし、濁流に呑まれ、大量の水を飲み、苦しもがき死ぬかもしれないのに
この男は夢の中でパカンと頭を何かに小突かれいとも簡単に死んでゆく。
まさか牧歌的な幸せな夢なんか見てるとしたら本当に許さないかもしれない
さっきまで同じ布団で寝てたのにこんなの不公平だ。
そう嫉妬する反面、彼と手を握りしめ濁流に沈む姿を想像し、
寝てる彼を見るとそれすら…それだけの事すら叶わない自分を哀れに情けなく思えた。
そしてまた死にゆく姿に憧れさせるなんてと
この男が憎たらしくなった。
「 起きて!逃げるわよ!? 」
彼の尖ってツヤツヤな肩口をパンパンと叩いた。
一息男は唸りを上げた。
「 とにかく…逃げるのよ!! 早く起きなさい!! 」
揺らぐ地面と同じくらいグダグダに男は手をつき体を起こす。
濁流の音がすぐそこまで近づいてる。
歪んだ赤茶色のマンションは絶えきれずひびを作り白い粉塵をまき散らし始めた。
その音はダイレクトにこの世の中心になった
轟音のせいで何をしてもサイレント映画のように自分達にも聞こえなかった。
彼を叩いても聞こえないのでどれだけ力が入ってたかもわからない。
彼の腕を引っ張り足を滑らせ尻餅をついた。
音がしないので全く感覚がない気がする。
もしかしてこのまま死ぬときもなんの感覚もしないのかもれしれない。
それが世界の終わりがくれた最後の処方薬なのかも。
その時轟音は更に勢いを増し鳴り響く。
水が入り込み床に滑り込んで一気に家財が立体的に暴れ始めた慌ただしい傾いた床の上
サイレントの世界の中、彼女はさっきまで叩いていた男の肩口にキスをした。
~~~~~
…はっと絹江は目を開けた。
当たり前だが馬鹿げた夢だ。
がばりと一気に起き上がると布団はきっちりかけられていて
けれども絹江は裸だった。
左手をベッドに滑らせた
そこには温もりはなくシーツのさっくりした手触りのみだった。
絹江はベッドから起きていい加減にパジャマを着る。
寝る前ではなく起きてからパジャマを着るのもあべこべなんだけど。
テーブルにメモがある。
“ 昨日はありがとう。
僕はまた来ても? ”
しゃべりかけるような筆跡の下に携帯番号が書いてあった。
玄関には傘が2本ならんである。
「 なんで彼とのあんな夢を… 」
昨晩、土砂降りの中、
絹江はネコを拾った。
雨に閉じ込められたずぶ濡れで哀れな男に置き傘を差し上げたんだけど、
彼はその傘をささずに軒下にいた。
襟のたったジャケットを着た坊主のネコは
サングラスを外すとくるりとした夜目を見せた。
絹江はそのネコを拾ったのだった。
土砂降りの中絹江は傘をさし、ネコはまだ大事そうに差し上げた傘を抱えて絹江の傘に入り、
傘を持った。
お名前は?と聞くと
「 すいません。幹夫って言います 」と答えた
生きてる事に謝るかのような返事に絹江は大分控えめな男の人だなぁとくるりとした目の次に好感を持った。
ー続く