旅の終わりにすこし草臥れて

電車のドアに凭れれば

窓の向こうに

天翔(かけ)る墨絵の龍を見る


龍は果てしなく遠く、あえかに、

禍々しくも雄々しくうつくしく

思えば災いと恵みは

メダルの表裏


この季節

東へ西へと蠢き

あるいは競い合う運動の祭典に狂喜し

あるいは戦いの報道に心痛めながら

それぞれに生きる無数のものどもを睥睨して


雨を降らせまいと

天にミサイルを放った者を

天は嘲笑うか、慈しむか


たなびく龍は

駅から駅へ

隧道を過ぎてなお

居並ぶビルヂングのはるか上方

圧倒的に、静かに、

色褪せた白き空をともない


馴染みの駅に降り立って

日常に取り込まれてゆくちいさな家族の姿を


気にも留めず、ほの赤く

変幻する