<少々内容に触れていますので、未見の方はお気をつけて。>
ガツンと、クーデター劇。
「皇帝のいない八月」、稀代のポリティック・パニック・メロドラマ。
映画そのものは、決してよく出来てるわけではないのだ。
全体にやや冗長・盛り込みすぎだし、こう、緊張感が持続しないというか、
めっちゃ緊迫してる段階で小百合ちゃんエロサービスコーナーとか、
大迫力で来てほしいとこに文字だけかい!模型かい!みたいな腰砕け感とか、
まあそんな突っ込みどころも満載。
が、しかしである。
「構え」のデカさ、70年代的ともいえる独特の非情感、
タイトルのセンスの良さといい、不思議と魅力的な作品である。
さらに夜行列車好きならたまらん。
渡瀬恒彦演じる元自衛官・藤崎に引き込まれる。
石森(山本圭、いつも同じ髪型)に「狂ってる」と言われながらも
その歪んだ純粋さが徹底しており、潔く、それでいてそこはかとなく甘美、
杏子(吉永小百合、複雑な内面を演じるのは荷が重い感じだが、まあ綺麗)が
ずっとグダグダしながらも、最後はやっぱり藤崎なのよねーうんうん・・・
山崎努との友情(なんて麗しい響きとはほど遠い壮絶な状況だが)もかっこいい。
そして純情なクーデター組を捻りつぶしていく
腹芸大会の政治家・内閣調査室チームの暗躍がたまらない。
佐橋(滝沢修)内閣の重厚さは見もの。
そもそも、藤崎が信望している大畑(佐分利信)さえ
「政治家」であり、決して彼らの星でも何でもないのだ・・・。
あとは、有名な、江見(三國連太郎)の最後のシーンも衝撃だが
個人的には、大畑の愛人を演じる太地喜和子の最後のシーンが、
後の現実を知っていると、震撼とさせられる。
(それと、鈴木瑞穂がナレーションじゃないんだなーと思ってたら
途中で「ああこりゃ出来ないや」と判った・・・。)
今日的な視点で見ると
藤崎の発言が、実はどこか某総理の言っていることとかぶっているのに
ありゃりゃ感が・・・。
思えば防衛「省」になってるし、憲法改正論議はされてるし、
藤崎の鬱屈は少しずつ解消されておるではないか。
「皇帝のいない八月」計画は、形を変えてひたひたと実行に移されているのかもしれん・・・。
にしちゃ、大畑や佐橋みたいな鵺っぽい大物がもうあまりいなさそうだけど。
いや、それも見せかけなのか。昼行灯ブームなのか(どんなブーム)。
内閣調査室・利倉(高橋悦史なぜかフォードの帽子、陰の主役)は
何気にリアルにいそうだよなあ・・・。
何にしても、今見ると、またいろいろ思うところあり、新鮮である。
まあこういう映画を観た後、
TVで「イケメン・パラダイス」とか観てしまうと(観てんのか)
文字通り隔世の感があるわけだが。
こういう視点でモノを作れるのは、もうかわぐちかいじくらいか。
「亡国のイージス」とか見ていないんだけど、どうなのかなあ。