20年という歳月は、ひとを成長させることもあるけれど

ひとに鎧や、澱を身につけさせることもある。

とまで言っては残酷か。


この連休、「影武者」(1980)と「隠し砦の三悪人」(1958)を観た。

(博士!相変わらず、観てる映画が、渋すぎです!)



「影武者」は、主演・勝新太郎が降ろされて仲代達矢が代役に立った作品として有名。

という先入観があったせいか、

「なんで勝新で撮らなかったんだあああ!」という嘆きばかりが先に立つ作品。

何しろ、盗人が武田信玄になりすまし、見破られないかヒヤヒヤする話なんだから

基本的に「面白うて、やがて哀しき物語」であるべきなのだ。

しかし残念ながら、我らが愛する仲代達矢には、勝新の「おかしみ」や「生命力」が欠けている。

そもそも仲代は存在からしてどことなく虚無的で、そこが魅力でもあるのだから

生きることに必死でどこか滑稽な小悪党の役は、きびしい。笑えそうなところが笑えない。

しかも演出は勝新を想定したままに思える(特に前半)ので、

ソシアルダンスの名手にかっぽれを踊らせているような違和感。

(!ゆうぞうお兄さんなら、出来たのか?!)


相方とえんえん「ああーここ勝新で観てえ!」といいながら、

勝新の演技で脳内変換しながら観る、という無駄に高度な鑑賞方法を確立。

人間の脳ってすばらしい。のはわかったが、普通に映像で観たかったよ・・・。


台所に女は二人いらないように、

存在=芸の勝新と、こだわりの美学・黒澤監督は

所詮一緒に作品創りなど出来なかった・・・のかもしれないけれど、

それでも、観たかったよ。何回言ってんだ。


で、そんなトラブルがあったせいか、映画自体も何か勢いがないように感じたのだよ。

美術(「風林火山」のオープニングはこの映画を参考にしてる?)、衣装はすばらしい。

あと馬の演技がありえないほどすごい。

でも・・・、あまり、おすすめはしない。長いし。音楽もいまいち。


一方、「隠し砦の三悪人」(なんかもうタイトルだけでワクワクするよね!)は、

素直に、めっちゃ面白かった!

出だしからぐいぐい引き込まれる。落ち武者最高。

「スターウォーズ」にインスピレーションを与えた作品として有名だけど、

人間くさーい又七と太平の魂が、海を越え時を超えて

ロボット魂にまで受け継がれていったと思うと、微笑ましくも感慨深い。

そして、三船敏郎がかっこいい!

黒澤といえばミフネ。ミフネといえば黒澤。

何が言いたいのか。とにかく、またもや最高のミフネがここにいる。


それと、ああ、先日「風林火山」の由布姫に今ひとつ乗り切れなかったのは、

この映画の雪姫を観てしまったからかもしれないなあ・・・。

この上原美佐という人、上手いんだか下手なんだかわからないが

(たぶん下手なんだと思う)とにかく抜群に「姫」なのである。

好演、とかいうレベルではない、破壊力といっていいほどの存在感。(褒めてる。)

世界のミフネ(映画「風林火山」では勘助だよ)がかしずくのも納得の、堂々たる「異彩」だ。

そして、「姫」たるものは、自ら名科白を言うものではなく

男に名科白を言わせるもの。

「裏切り御免!」には、もう、しびれた!


何かを考えさせる映画では全くないが、

とにかくみんな生き生きと生きている。それでいい。

この生き生き感を、年月や、巨匠の地位や威厳やいろんなごたごたが

少しずつ吸い取っていったのかと思うと、なんだか切ない気がするのである・・・。



   
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