今回は「バテ」について。
特に金管楽器にとって永遠のテーマですね。
もちろん、木管楽器や弦楽器、あるいは打楽器であっても筋肉運動である以上、バテることはあると思います。

金管楽器の場合そのバテが発音の可否に直結しているので、単純な話、バテると音出ないよ〜´д` ;な状況に陥ってしまうのです。
音楽を奏でたいのに音が出ない、これはとても辛い状況ですよね、うん、分かります。



さてこのバテを克服していくには、いくつかのポイントがあります。

①アンブシュア周辺の筋肉の鍛錬
②「呼気」に関する筋肉の鍛錬
③根本的なアンブシュアとマウスピースのセッティング



①②については至極当然な事かと思います。
人間はホルンを吹くために生まれていませんので、それなりの鍛錬は必要です。


①【アンブシュア周辺の筋肉の鍛錬】

ここは練習をしていくうちにある意味必然的に増強していくと思いますが、ポイントとしては、

☆息が漏れないようしっかり蓋をする。
→マウスピースと唇が必要最低限密着していることが重要です。

「強いプレスはダメだぞ!」という教えを実直に意識しすぎるあまり、

密着が足りない
息が漏れる
漏れないように唇のみで閉じようとする力が過剰になる
アパチュア周辺が固くなりバズィングが起こりにくくなる
振動を起こすために強い息の圧力が必要となる
結果早くにバテる

という例をよく見かけます。
大事なことは、マウスピースと唇が強すぎず弱すぎず、適度に密着するということです。


・雑音が混ざる
・レガートや跳躍が明らかに困難
・過剰に音が震える(揺れる)

以上のような状態が無い上で、マウスピースを少しだけしっかり唇に密着させてみてもよいかもしれません。



② 【「呼気」に関する筋肉の鍛錬】

呼気、つまり息を吐くほうですね。
これについては、意識的なトレーニングが必要です。

安静時の呼吸と吹奏時の呼吸はまるで異なります。
安静時には自律神経のおかげで自動的に横隔膜をはじめとする吸気に関わる筋肉が緊張(収縮)することで肺に空気を取り込み、その後開いた胸郭や横隔膜が元のポジションに戻ろうととする力(弛緩)で息を排出ています。


管楽器吹奏時においては、呼気を使ってバズィング(木管楽器ではリードの振動等)を起こしているので、この呼気を意識的にコントロールする必要があります。
具体的には、息を吸った(吸気)際に緊張した(下がったor収縮した)横隔膜の状態を維持するつもりで吐く(呼気)ということです。
私の場合は肋骨の一番下の骨ら辺(横隔膜がくっついているあたり)を意識しています。

これを意識することで、呼気に関する筋肉のみが仕事をし、安定した息の強さ、スピードを作り出すことができるのです。
ここに横隔膜の弛緩というある意味不確定(無意識)な要素が加わってしまうと、狙いどおりの息のコントロールが難しくなります。

呼気に関わる主な筋肉に内肋間筋というのがありますが、文字通り肋骨と肋骨の間にあり、息を吸うことで開き持ち上がった肋骨を引っ張り下げ閉じる仕事をこの内肋間筋が担っています。

とりあえず細かいことは後々でも大丈夫ですので、この呼気に関わる筋肉を意識してトレーニングしましょう。

高音域や強奏時には体内気圧に比例してその力を高めます。ここを意識的に行わないと、別の箇所、例えば口輪筋等の比較的小さな筋肉が代替で大きな仕事せざるを得なくなり、結果早い時間にバテがやってきます。
cresc.<>dim.のロングトーンなどのトレーニングでじっくり取り組んでみてください。圧の変化を確かめながらやってみると良いと思います。

この呼吸がうまくできるようになってくると、唇やその周辺にかかる負担が減り、音の響きが増し、以前よりもバテにくくなっていることに気づくと思います。





さて
③【根本的なアンブシュアとマウスピースのセッティング】

実はこれが1番重要だったりします。

結論から言うと、アパチュアが必要以上に広い状態で吹いている例に頻繁に出会います。
この場合、一見ふくよかで幅広い音色というメリットはあるのですが、耐久性や高音域、強奏においてのデメリットが多く、おすすめできません。


私的な意見ですが、in Fト音譜第一線の実音Bやその上のCあたりが「無理なく」張りのある鋭い音で吹ける、ぐらいのポジションが基準になるかと思います。

この「無理なく」というのを言葉で伝えるのはとても難しいのですが、

・唇に対するマウスピースの圧力が強すぎるなと感じる
・音は出るが響きが失わている
・雑音が交ざる

これらが「無い」状態、がポイントになります。


そして、アパチュアと言うと唇自体を中心に向かって閉じる力のようなイメージかもしれませんが、実際にその多くを担っているのは歯です。
主には上下左右の1、2番歯がアパチュアを形成するのに重要かと思います。
上下の歯の隙間が開き過ぎて、その結果特に高音域において唇そのもので過剰に閉じなければならない状態だと、振動体の柔軟性が乏しく不要な労力を強いられることになります。

かと言ってもちろん歯の閉じ過ぎが良い結果をもたらさないことも明白です。
通り道が狭いことで必要な息の流量が得られず、これまた響きの少ないタイトな音色になりがちです。

歯の役割は弦楽器に例えると、駒と、弦を押さえる指の力、あるいはギターのフレット、琴等の柱(「じ」弦を支えている三角の柱)に相当し、ここが弱かったり柔らかかったりすると、振動を吸収してしまい強い響きを損なうことはイメージしやすいと思います。


いずれにせよ、マウスピースと歯というハードを用いて唇というソフトをいかに柔軟に繊細に振動させてあげられるか?そのバランスが重要なのです。

アンブシュアタイプによって異なりますが、タイプ1の人は下唇、タイプ2、3の人は上唇に支持点を設定し、しっかりと密着させることで安定を得ることができます。

ぜひ最適な接触ポジションを研究してみてください。




さてだいぶ長い解説になりましたが、「バテ」について掘り下げてみました。

私自身まだまだ完全に研究しきれていませんが、現時点で考えうることをまとめてみました。


皆さまのホルンライフにお役にたてましたら幸いです。


それではまた。