刀が好きな人間としては刀匠から直接なにかを教えてもらうと嬉しくなるものです。

それが本やネットには書かれていないような事だと、なんだか「刀作りの真実」とか「業界の真実」の一端を知ったような気になってしまったりします。

これは私が作刀依頼に関して助光刀匠と連絡を取り合っていた時に、ついでに色々教えてもらって実感した事です。

客観的にみると、こういう体験をした人は日本刀の注文打ちを経験した人や刀匠と個人的に親しいような人であればきっと他の人も経験してきた事なのだと思います。注文打ちを経験した人の絶対数が少ないから母数は少ないはずですが。

ネットで調べるとそういう「刀匠から聞いた話し」が書かれているものを見かける事があります。ネット普及前の時代だと本や雑誌に書かれていたりもします。

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「刀匠の話はリップサービスが多いから、あまり真に受けない方が良い」

前に助光刀匠から頂いたコメントにあったように思います。これ、大事な所だと思うのです。

オフレコっぽい話やどこにも書かれていないような現役刀匠の話は愛刀家に喜ばれる。刀匠側もそれを理解したうえで話をされる事が多いのかもしれません。

自分なりに「刀匠の話をあまり真に受けてはならない」理由を以下のように考えています。

・本当に大事な事であれば弟子くらいにしか教えないはずで、顧客に教えるような事ではない。

・真実を語っていたとしても流派・刀匠ごとの違いが多くて、それらは秘伝。だから普遍的な内容ではないかもしれない。

・内容が真実であったとしてもウラの取れないものが多い。実際に刀を作ってみないと確認しようがないものも多い。

・嘘はなく内容が真実であっても、本当に大事な部分は語られていないかもしれない。

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書籍に書かれている現役刀匠の意見であっても、刀作りに関する部分は秘伝に触れない範囲の事しか書かれていないのだという前提で読むべきなのだと思います。つまり、嘘ではないけどそれが真実の全てではない。

水心子正秀の書籍ですら大事な部分は「この所は口伝の通り」みたいな書き方をされていたと記憶しています。

前に記事についたコメントで「論理で考えれば正しいかどうかわかる」と言われた事があるのですが、刀を作った事のない素人の論理こそアテにならないだろうと私は思います。

だから、私は懇意の助光刀匠の話でもウラのとれないものはあまり真に受け過ぎないよう注意しています。ただ、ウラがとれることがあったりもします。そんな時はこの業界のことが少しわかった気がして面白く思ったり怖く思ったりします。

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