前回、検査入院!① ~入院初日~の続きです。

入院した時の私にとって、やっかいだった問題の一つが腰の痛みのコントロールだった。

私の腫瘍について、後から取り寄せた資料には「MRI、CT検査にて椎体前面に膵臓、腹部大動脈、下大静脈を背側から腹側に圧排する巨大腫瘍」と説明されていた。当初は精巣腫瘍ではなく肉腫の疑いとして見られていたようだ。

何せ腫瘍のサイズが165×160×95mmだ。それが腰の神経を圧迫して激しい痛みをきたしていたし、右太腿内側は腫瘍に神経が圧迫されて痺れていた。

最初に病棟の担当の看護師と面会したときに、毎回のラウンド時などに看護師痛みの強さを伝える手段として、痛みを1から10の数字の間でどれくらいか教えてほしいと伝えられた。

簡単であるが有効な伝え方だ。是非痛みのある方には活用してほしい。痛みは我慢することなくきちんと表現して伝えないとだめだ。

また、病棟の担当の薬剤師とも入院初日に面会し、これから投与されることになる医療用麻薬、オキシコンチン錠オキノーム散について説明を受けた。

医療用麻薬は医師の指示通り服用すれば中毒になったりはしない。

オキシコンチンやオキノームの副作用として吐き気、便秘、眠気などがあり、眠気は体が慣れる期間まであり慣れれば眠気は消失すること、便秘に対しては酸化マグネシウムでコントロールしていくことなどが説明された。

実際服用しだしてから、服用した後に眠気が来ることはよくあった。何だか手に力が入らないということもあった。

化学療法中にも抗がん剤と併用してオキシコンチンを服用していたので、抗がん剤の副作用の吐き気と共振して吐き気が増幅したが、最終的にオキシコンチンの服用を止めてしまえばそれ以上は副作用は起こらなかった。

私に処方されていたオキシコンチンは2012年9月24日の入院時点で錠剤5mg、朝夕食後の2回分だった。

この他に特にひどく痛む時はレスキューとしてオキノーム0.5mg/0.5g包 1包を服用することが許可されていた。

そしてこの痛みのコントロールを通して、生涯忘れ得ない出会いがあった。

大学病院の緩和ケアチームとの出会いだ。

私の主治医、GT先生がこの痛みのコントロールについて緩和ケアチームに依頼してくれていた。

緩和ケアで主にお世話になったのは緩和ケア専従のS先生とO看護師だった。他にも時折臨床心理士さんや栄養士さんが巡回に着いてきてくれて話をできることもあった。

私はこのとき初めて「緩和ケア」という言葉を聞いた。


緩和ケアとは端的に言うとがんと診断されたときから行う身体的・精神的な苦痛をやわらげるためのケアのことだ。

緩和ケアの具体的な措置としては①がん告知時の精神的なケアや予後の説明のタイミングの見極め、②治療の方針の選択や治療の場所の選択についての情報提供、患者の意思決定の支援、③疼痛(とうつう)管理、④胸水や腹水のコントロール、⑤栄養管理、⑥蘇生措置拒否をするか否かの確認など臨死期の措置、⑦臨死期・死後の家族の悲嘆への配慮などがある。

私が受けたのは主に疼痛管理と日々の巡回を通しての意思決定支援、栄養管理だった。

ちなみにこの時私は緩和ケアが世間一般的に「根本治癒を望めない臨死期にある人が受ける痛みの管理」という緩和ケアの本質の一部分のみのイメージで受け取られていることを知らなかった。

http://gan-mag.com/medical/2103.html知っておきたい「がん緩和ケア」の誤解 | 数字から見る「がん治療」の今

私のように緩和ケアを受けながら治療して、治療後普通に働いている人もいる。

身体の痛みが激しかったり、治療方針や場所の選択についての情報提供などがほしければ緩和ケアの利用希望を申し出てみるのはいいと思う。各病院のがん相談室なども積極的に利用してほしい。


私はこうして痛みのコントロールの為に緩和ケアのチームと出会ったのだが、本当にこの緩和ケアのサービスを受けることができたのは有難かった。

痛みのコントロールをお願いできたことは勿論、がん告知されて精神的にもボロボロになっていた時、治療方法についてあれこれ悩んでいた時、副作用に怯え苦しんでいたとき、もう色んなことが本当に辛く苦しくなって涙が出たとき、いつも私の話を聴いてくれて感情や思考の整理を手伝ってくれたり、アドバイスをくれたのはこの緩和ケアチームだった。

この緩和ケアチームのサポートがなければ私の入院生活はもっと暗く辛いものになっていただろう。

緩和ケアのチームの方と話しているときは、どんなに辛い状況でも笑うことができ、治ったらどうしたいとか夢を考えることができた。そういう風に考えられるよう温く接してくれた。

ちなみに、私はここでマインドサポートを受けて本当に良かったと思ったことから治療後にコーチングを学んだ。

このチームと私が学んだコーチングスクールのメンバーが実はそれなりに縁があることは後になって知ったのだが…

緩和ケアをはじめとする臨床でのメンタル面のケアの充実は今後益々進めていってくれることを願う。


緩和ケアの意味は、がん治療+痛みの緩和+生きる勇気である。

終末期だけではなく、「がんと診断された時からの緩和ケア」であることを覚えておいてほしい。


http://www.kanwacare.net緩和ケア普及啓発事業|緩和ケア.net


つづく