前回、ついに初診日!③ ~辛い時は周囲に応援を要請する勇気を持ってほしい~の続きです。

廊下で待っていた時に一緒に診察室へ連れて入ってくれた少し年配の看護師さんがとても心配そうな表情で「もっと早く病院へ行っておけばよかったのに」と声をかけてくれた。「今G教授が必要なことを早急に行えるように手配してくれているからね!」と励ましてくれた。

私はいよいよ本当に死ぬかもしれない恐怖をまじまじと見つめるしかなかった。

恐い。本当に恐い。

今まで感じてきたどんな恐怖よりもリアルな恐怖だ。この世にこんな恐怖があるのか。


私は恐怖のあまり萎縮していた。私の家族も同様だったと思う。


そして再び診察室に呼ばれて中に入った。

その日に行うべきことが淡々と言い渡された。どこに何があってどの順番で行ったらいいのかなど病院の簡単な地図も渡された。

肝胆膵外科のG教授から言い渡されたのは①採血・採尿、②レントゲン、③心電図、④呼吸機能検査、⑤整形外科の受診った。

この時点で既に(2012年9月21日の)13時15分である。

心電図の検査は胸と足首が出るようにしてベッドに寝て両手足と胸部6箇所に電極をつけて心臓の電気的興奮を記録するというものだった。

私はいつもひどくくすぐったがりでこの手の身体を直接触れられる検査は苦手だった。

呼吸機能検査は肺活量と息を吐く勢いを調べた。マウスピースを加えてクリップで鼻をつまみ、口だけで呼吸をしてどれくらいの息の量と勢いがあるかを調べる。

肺の病気が考えられる場合や、手術でどれくらいの麻酔を使えるのかを見極めるために行われる検査だ。

手術を受けることが前提になっている検査であることはわかっていたので、「それほど悪いのか」と自分の未来を不安に思わずにはいられなかった。


検査技師さん(看護師さん?)が大きな声で「はい、息を吸って吸って吸ってー!!はい、ヒューっと息を吐いてー!最後まで吐いてー!」と失礼かもしれないが一聴すると少し滑稽にも聞こえる声でサポートしてくれる。なんだか異様な空間だった。


検査の為に移動する間もかなり腰が痛かった。

私の両親が次の場所か立ち止まって議論を始めたのだが、私は腰の痛さのあまり静止して立ち止まっていることができず、「次はこっちだから早く移動してくれ!!会話するなら椅子に座ろう。」と言った。

この時すでに歩行器を使っていて、歩行器なしでは歩くことができないほど腰の痛みは酷かった。


整形外科の受診もこの間に行っていた。

整形外科の待合にいると、病院の混雑具合に驚いた。休日の商店街の次くらいに人口密度が高いのではないかと思った。

商店街と違うところは、皆何かの病気や怪我を抱えているということである。顔中を包帯で巻かれた人、明らかに手術後とわかる傷跡が顔面にある人、ギブスをして松葉杖で歩く人。ストレッチャーに乗せられて運ばれていく人、そんな人でごった返す場所に来たのは初めてだった。

「ああこれが大学病院か。」と病院の外の世界しか知らなかった私は圧倒されていた。

この待っている間も相変わらず腰痛は酷かった。長く待って呼ばれて診察室へ入ると、整形外科の先生が座っていて、その後ろに医学生だろうか白衣を着た若い人たちが3人ほど座っていた。

医師4名の診察を受けるのはなかなか迫力がある。ここでも私は自分の痛みの感じ方や現在の状況を説明した。

先生が私の話を詳細にパソコンに打ち込みながらいくつかの質問があった。あと簡単な検査として、座っている状態で膝を叩いて足が反応するかや右太腿が麻痺していたのでその麻痺具合の確認などがあった。

私は腰の痛みと共に右太腿の麻痺具合が気になっていた。これも「治る」と言って欲しかった。

その場ではその簡単な問診と検査で診察を終えた。

全ての検査を終えて、再び肝胆膵外科の診察室に戻った。そこでは週明けの月曜日からすぐ入院するようにという指示を受けた。

一安心だった。私の中にはもっと待たなければいけないかもしれないという恐怖があったからだ。

本来ならその時すぐにでも入院して検査を続行してほしいところだったがその日は金曜日で週明けまで待たなくてはいけなかった。

この時、教授が私の容体を診て緊急での措置をとってくれなかったらきっと私はこれを書いている2016年には生きていない。

この時の教授の措置には本当に感謝している。


正確な順番は覚えていないが、全ての検査を終えた後だったと思う。私たちは遅い昼食を摂った。病院の地下にあるレストランでだ。私はカツカレーを食べた。縁起の良いものを食べたかった。この時、カツカレーを食べながらどんな困難にも打ち勝とうと決意をしていたことは忘れられない。

午前から入っていた病院も、会計を済ませて出たのは夕方の4時を過ぎた頃だった。

私は両親が運転する車に乗り会社に電話をかけた。

「月曜日から緊急入院が必要ということです。まだ何が悪いのかはわかりませんが、これから入院してさらに詳しく検査していくことになります。」と言ったら、上司がものすごく心配そうに、

「わかった、こちらのことは全て任せておけ。お前が担当していた仕事も他の従業員にやるように指示する。病院の指示に従ってきちんと検査を受けて来い。」と言ってくれた。

理解のある職場で本当に良かった。

帰り際、楽しみにしていた11月にあるVAN HALENのライブに行けそうにないと思い、チケットをとってくれていた友人にその旨をメールした。

家族共々疲れ果て、帰りに弁当屋で弁当を買って帰り、長い1日が終わった。

どうなるかわからないけど、とにかくできることをやろうという雰囲気だった。


つづく


次回、ついに初診日!①~初診日の検査内容~