しかし、今日は少し様子が異なっていた。青空が少しのぞき日も差した瞬間、今年初めての蝉が鳴く声が聞こえたのだった。たった一瞬だけではあったが、それでも梅雨明け、さらに夏の始まりを待ち遠しくさせるには十分の一声だった。少し空気が変わったような気がした日だった。まだまだ湿気の多い梅雨真っ盛り。どことなく息苦しくなるような日々だ。ところが、頭上の厚い雲の上では間違いなく夏がそこまで近づいてきている。一面の夏の青空が待ち遠しい日が続く。都心を離れるとこの梅雨の時期には水が張ってある水田が広がる景色が見ることができるだろう。水辺に寄る鳥の長い脚が優雅に泥に浸しているのを眺めたり、あまり耳慣れない虫の声を耳にしてみたり。そんなことをしていると、どこかしらどこか風も涼しく感じられる。原風景でこその見つかる涼ではないだろうか。