朝から日差しが強く新緑がとても美しく光っている。街路樹を歩きながら私はこの辺りで最も大きい公園に足を踏み入れた。
人口わずか10万人ほどの地方都市に年間800万人ほどの観光客が訪れるという。
散歩のルートにもなっていて歩く人たちもちらほらいた。
新緑の鮮やかなきみどりいろが美しいな、と思って歩いていると木製の丸テーブルを囲む3人が目に留まった。
真ん中の車椅子の老婆を挟むように初老の男女が座っている。それぞれが老婆の手をとって握りしめて目をつぶっているようだ。
私は少しはなれたベンチに座って様子を見ていた。
初老の男女は夫婦のように見えた。ということは車椅子の女性は母親だろうか。
5分
10分
…
じっと手を繋いでいる
時折、目を開けてうなずきあっている。
もはや言葉はいらない。
結局、30分くらいそうしていただろうか。
彼らが立ち上がるとき、今まで彼らに隠されて見えなかったピンクのしゃくなげが可憐に咲いていた。
行楽地は人で一杯なゴールデンウィークにこうして静かな時を過ごす人がいる。
ぼくは、幸せな気持ちで一杯にして公園をあとにした。
