みなさんこんばんは🌇オトマール・スウィトナー、古典からロマン、近現代と幅広いレパートリーを指揮した20世紀を代表する指揮者です。モーツァルト、ベートーヴェンはもちろんマーラーなどを演奏してきました。そんなスウィトナーによる珍しい?選曲をされたCDがこの度タワレコからリイシューされました。ストラヴィンキーのバレエ音楽「春の祭典」、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、チャイコフスキーの弦楽セレナードの3曲です。演奏はシュターツカペレ・ドレスデンで録音されています。
「オトマール・スウィトナー指揮/シュターツカペレ・ドレスデン」
ドビュッシー作曲:
牧神の午後への前奏曲
ストラヴィンキー作曲:
バレエ音楽「春の祭典」
チャイコフスキー作曲:
弦楽セレナード
私個人的にスウィトナーはモーツァルト、ベートーヴェン、マーラーなどを取り上げているため、古典的な演奏を多くしている印象だったが、今回の曲目を聴き驚いた。ドビュッシーの「牧神(牧神の午後への前奏曲)」とストラヴィンキーの「ハルサイ(春の祭典)」という後の現代音楽に大きな影響をもたらした作品とチャイコフスキーの「弦セレ(弦楽セレナード)」というなんといえばいいのかわからない曲目。これは聴かないわけにはいかないと思い今回購入したわけである。
ドビュッシーの「牧神」、木管と弦楽による小編成オーケストラながらその幻想的な曲は聴くだけでいつもうっとりとする。今回「牧神」と「ハルサイ」という20世紀音楽に大きく影響を与えた2曲がこうして一緒のCDに収録されていることは非常に面白い。演奏に関しても名門シュターツカペレ・ドレスデンによる安定感のある演奏を聴くことができると同時にスウィトナーによるこれまでにない視点で奏でられることにより、この曲の良さを改めて理解することができる。人気曲だからこそ好みが分かれるかもしれないが、この演奏は名演だ。
ストラヴィンキーの「ハルサイ」、1962年の録音当時でいえばブーレーズがフランス国立管と録音を残したものが話題を呼んだが、技術的に難易度の高い曲のため録音されている中にもミスができてしまうことはよくあることのようだった。それでいうと普段演奏している曲の雰囲気とは真逆の「ハルサイ」を指揮したスウィトナーはシュターツカペレ・ドレスデンと共に全身全霊をかけてこの難曲に挑んできたというのが聴いているとよくわかる。録音がわりと前のもののためノイズが多少残っているが、正直そんなことを気にしている余裕などない。クルレンツィスのような野性味はないが、正面からこの曲に立ち向かう音はおそらくこの時代に録音された中のものでも屈指のものだろうと思われる。第一部では激しい箇所が多く、まさに熱演と言えるだろう。オーケストラ全ての楽器たちが騒音に近い形で音の塊を奏でる。一瞬音の暴力にも聴こえるかもしれないが、凄まじい演奏である。続く第二部、生贄が決まる瞬間まではこれまた幻想的な雰囲気を印象付け、生贄が決まった瞬間たまっていたストレスが爆発したかのように演奏が再開する。個人的に思ったのは打楽器の音が非常に良い形で録音されているというのが感じたところだろうか。ティンパニとバスドラムの音が歯切れが良く聴きやすい。
思えば今回の3曲、どの曲も冒頭から印象的な部分が多い曲が収録されている。「弦セレ」は弦楽ながらその音響はまさに「音の波」である。モーツァルトやベートーヴェンの印象が強いスウィトナー。チャイコフスキーの名曲を見事に美しさだけではなく、強靭さも演奏で表現している。SACDハイブリッド盤だからこそ楽しめる良質な演奏だと言えるだろう。
スウィトナーのCDはいくつか所持しているがまだ当ブログではご紹介していない。後日モーツァルトの交響曲や序曲集などを取り上げたいと思っている。それにしてもタワレコ限定で発売されるSACDハイブリッド盤の良さには毎度驚かされる。オリジナル・アナログ・マスターテープを使用できているからこそだろう。今後もスウィトナーのCDがリイシューされるのだろうか?何にせよ、スウィトナーによる演奏をもっと聴いてみたいと思った演奏だった。