絶縁体の試料をSPSするときの直流経路は下の図のようになります。ダイにパンチを差し込むために,パンチの直径はわずかに小さくなっています。それでは,パンチとダイとの電気的接触はどのようにして確保されるのでしょうか。
それは,物質の持っているポアソン効果によるのです。パンチに縦方向の圧力(SPSのプレス圧力)が加わると,ポアソン効果により,パンチは圧力方向につぶれるだけではなく,それに垂直方向に太ります。
それにより,パンチはダイを押しつけるように広がり,電気的接触がしっかりと保たれるのです。
SPSの最中に圧力を下げると温度は下がるでしょうか,上がるでしょうか。正解は,“上がる”です。圧力を下げるとパンチのダイを押しつける広がり方が少なくなります。そのため,電気的接触が弱くなり,接触抵抗が高くなります。SPSは電流を制御しています。同じ電流では,接触抵抗が大きい程ジュール熱は大きくなります。Pow=R×I^2(Rは接触抵抗,I^2は電流の二乗)ですので。もちろん温調器がありますので,一時的に温度が上昇した後,元に戻ります。圧力を上げたときはこの反対で,一時的に温度は下がります。