山田太一さん。 | KOMIRAGEのブログ「日常記録」

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先週、脚本家で「岸辺のアルバム」「男たちの旅路」「ふぞろいの林檎たち」などで知られる、山田太一さんが亡くなっていたことが発表されました。

 

享年、89歳でした。

 

山田太一さんのドラマはある世代から上の方は、1974年の多摩川水害をモチーフに中流家庭の崩壊と再生を描いたTBS系金曜ドラマ「岸辺のアルバム」や元特攻隊の生き残りの警備保障会社で働く初老男性と共に働く若者たちとの交流、現代社会の歪みと人としてどう生きるべきかを描いたNHKドラマ人間模様「男たちの旅路」のイメージが強烈かと思いますが、私たち世代だと、やはりTBS系金曜ドラマ「ふぞろいの林檎たち」シリーズですかね。

 

首都圏の4流私立大学に通う3人の若者と彼らと知り合った看護学校の女子学生との恋と友情を交えながら、学歴社会、後の格差社会にも通じる社会の厳しさ、世の中の不条理に苦しみ、揉まれながらも、自分らしい生き方を見出し成長していく様を描いた人間ドラマでした。

 

シリーズは4作作られ、学生時代から就職してからの数年間、紆余曲折して転職したり、離婚したり・・・・とそれぞれの登場人物の変化を、その時代の社会情勢、世相を絡めながらも、実に丁寧に丹念に描いてた作風が好きでした。

 

第一シリーズの1回目は、私が丁度幼稚園年長で、亡き祖母と当時住んでた田舎の家の居間のTVで観てましたが、子供心に社会の厳しさがTVの画面からヒシヒシと伝わって来て、祖母が「これが世の中ばい」とポツリと言ったのを、今でも鮮明に憶えてます。

主人公の仲手川を軸に、学歴コンプレックス、バブル期前夜~バブル絶頂期~バブル崩壊以降の平成不況の時代の変遷とともに、それぞれが社会の厳しさ、世の中の矛盾、不条理に困惑しながらも、自分らしい生き方を模索し、成長していく様に勇気を貰った人も少なくないだろうし、私もその一人でした。

 

今の時代のドラマにはない、人間の醜い部分、冷酷な部分をあぶり出しつつも、それでも前向きに生きていく事こそ人間の凄い部分、良い部分であり、どこか、こう、希望を持たせてくれる終わり方、「個人としての人間はまだまだ捨てたモンじゃないよな」って思わせてくれるモノが、山田太一さんのドラマにはありました。

この「ふぞろいの林檎たち」で伝えようとした事は、今の時代にも通ずるモノがあって、今の時代は、それこそ「実力主義」が幅を利かせるも、まだまだどこかで「格差社会」というか「学歴社会」とかを引きずってるのかなとも感じてて、それに対して、人として大切なモノは何か、生きてく上で守るべきモノは何なのかって言うことを改めて問いかけてる気がします。

 

一つの時代が終わったと言うか、自分の中の昭和が遠くなりましたね。

 

改めて山田太一さんのご冥福をお祈り申し上げます。