・・・・・京都・宇治の感情のぶつかりは、それぞれの想いに気まずさを残した。

あー言ってしまった、じわじわと溜まって来たものが、吐き出される、もー言うしかない、そんな時がある。

 

その淀みが、人々の対話場面に、独特の味わいを醸し出す。まず、光君(千葉雄大)は、中将(桐山漣)と酒を酌み交わす。

光君が、一人の女性と添い遂げる心情に惹かれ、その相手・対象が沙織(伊藤沙莉)であることを推察する、中将。

ともに、沙織が好きな彼も、脇役人生もわるくない、友には恵まれた、と共鳴する。店で静かに仕事をこなす従業員と、何気なく、歓談するお客が、カウンターの平安ブラザーズを挟んでいるかのような落ち着きがいい。沙織(伊藤沙莉)は、妹・詩織(入山杏奈)と、お好み焼きを囲み、光君の人生と自分のそれは、フィフティフィフティだと語り、独占を拒否する姉の潔さを妹・詩織は心から讃える。

・・・・・この二組の淀みながら、独特の味わいとコクがあるのは、彼等の表情・話す顔と聴く顔の撮り方に相違ない。

圧巻は、妹・詩織からの賛美に心が動いた沙織が、妹の傍に身体を運び、隣に腰掛ける顛末である。

心が動くことで、身体も動いたのである。

 

でも、それは沙織の本心ではない。

・・・・・心は、嘘をつけない。但し、やむを得ず嘘を選択することはある。

中将が語る、「女というものは、言葉と逆のことを考えてるものよ」

光君は、友人のアドバイスが、あたまを過ったか?

沙織の「光君のこと、嫌いだから出て行って」を何か変だと思った?

騙されたふりをする?<嘘>を引き受ける、算段?光君は、女心を悟ったのだろうな。

淀みの渦→真の心情→虚飾の言葉の欺き→欺かれた、ふり

このドラマは、高級な意味で、古典的な約束が、新鮮に思えるのだ。

・・・・・光君も、嘘をついた。平安京のことを思い浮かべてたと語るが、目線はビルの上だ。

タイムスリップ!撮影技術は、ドラマのパーツにすぎない。

 

・・・・・心は、嘘をつけない。夏の花火。眼前に広がる美・音、そしてスイーツの甘さ?

視覚・聴覚やがて、味覚も連れて来るような、場所。

いま・ここに「ある」場所を、いま・ここで抱き締める。

・・・・・行きたい場所にいけば、いいのだ。そこで生きればいい。

それだけのことだ。