「・・・あなたたち何なの?」・・・まり(仲里依紗)はそんな風に言った。
杏(木村佳乃)と斉木(小泉孝太郎)たちを咎めたのだ。
・・・斉木は建設会社を辞めた・・・失踪した妻の再婚・・・彼女の再婚相手は駆け落ちした杏の夫・慎吾(渋川清彦)ではなかった・・・何もかも厭になった・・・転職・・・週刊誌のグラビア記者・・・通報!・・・芸能人不倫?・・・人気落語家・丸太郎(阿部サダヲ)・・・まりの夫の不倫相手の通報・・・関係は入り乱れている・・・爛れの輪?
まりは、眼の前のふたり、杏と斉木の只ならぬ雰囲気を感じた・・・良からぬことに勤しんだ過去の匂いを嗅いだ・・・欲望に負けた・・・いや、「性」に躓いた・・・性愛という言葉があるが?・・・やはり、「性」の方が「愛」より先だ・・・やはり欲望に負けたのである。
この三人の醸し出す空気には、シリアスと斜に構えた「なるようになれ?」観がちょうどよく混ざっている。そこがいい。
このドラマでは、杏の夫と斉木の妻の逃避行がシリアスな情感を湛えながら語られ、残された杏と斉木の虚しさも哀感を持ってその表情と言葉にし難い悔しさや怒り、歳月の中で忘れていたことが思い出されるものの諦念にはまだやや早い感情のごった煮が思い入れたっぷりと描かれ、前回も記したが、何処か成瀬巳喜男の爛れの切なさがしとしとと降る雨の如く影を落とす。・・・と思いきや、斜に構えて「・・・いけ好かないな」と斉木から杏を情事の場に押し倒す・・・妙な「なるようになれ?」的な鼓動、ラテンのリズムが覆い始める・・・「和」と「ラテン」の融合ならぬ・・・かき回し・・・ごった煮・・・ごったがえし
・・・その「転調」にこそこのドラマには魅力がある。
・・・いまひとりの女。気丈な優子(吉田羊)は、閉じ込められたEVの停電でのニアミス以来、部下・赤坂(磯村勇斗)に言い寄られ、「女」を意識する。・・・欲が動く?・・・気づかない忘れてた、自分?・・・夫の献身・・・それに応える貞淑な妻のはず。
杏の話に戻る。斉木はみた・・・与論島・・・杏の夫はいた・・・観光ガイド・・・島民からも慕われる男・・・崖から落ちた記憶喪失・・・忘れたのか?忘れたいで「ふり」か?・・・記憶の断片?・・・あるのか?・・・杏はそれが知りたいのでは?
大石静は『大恋愛~僕を忘れる君と』で、記憶が消えていく妻とそれを支える献身的な小説家の夫の日々を情感を溢れさせて描いていた。ケースは大きく異なるが、歳月の重さで感情が混濁する中で、何が訊きたい、言いたい、風化する対象への切迫した想いだけがカラカラと風に舞うその哀感にこそこのドラマはまずは向かいつつあるようだ。
・・・フェリーニの「道」のどうしようもないザンパノの後悔と、その風体ならではの言動・・・あの時そう言った。だからそう言われた・・・言った。言われた・・・歳月の重さで解決できないこと?・・・或いは、「間が悪かった」こと・・・斉木は違う言葉でそう言ったのでは?・・・違う映画の引き出しと私たち自身の感慨が何より必要では?・・・まぁ、毎日のわたしたちの日常なんだけど・・・コロナウイルスショック「下」欲しいけど?
