我が国、特に大阪港、神戸港の貨物の取扱高が減少する中、橋下市長等が港湾機能(阪神港)の一元化を目的とする法律改正を国に要望しています。橋下氏の言うように、港湾管理の一元化(仕組みを変える)ができれば本当に大阪の経済は良くなるのでしょうか。我々もシンガポール港に近いマレーシアのタンジュン・ペラパス港の躍進を勉強することで議論を深めて参りたいと考えています。

タンジュン・ペラパス港

シンガポール港はタンジュン・ペラパス港が開港するまでは取扱高が世界1位でありましたが、現在はその地位を明け渡しています。きっかけは、世界最大の海運会社マースク・シーランド(デンマーク)が、マラッカ海峡を通過する貨物の積み替え港をシンガポールから同港へ移転したことであります。タンジュン・ペラパス港では、シンガポール港と比較し約3~4割安い手数料を提示し、マースク社に同港の株式30%の保有を認める等、誘致に力を入れた結果、シンガポール港との競争に打ち勝ってきました。

開港当時の1999年は4万コンテナ(2社)、2012年には770万コンテナ(30社)にまで成長し、2013年には830万コンテナを見込んでいます。現在の護岸の延長は4.3km、10~12隻の船が365日、24時間、同時に積み降ろしをすることができますが、更に2隻の受け入れができるよう準備に取りかかっています。同港は開校以来、実に毎年14%の成長を遂げており、マレーシア全体の約4割の貨物を取り扱うまでに成長してきました。

日本では港湾建設等インフラ整備は公共が行い、管理運営を民間に委ねるということはありますが、タンジュン・ペラパス港は政府がPTP株式会社(民間)に2055年まで土地を貸付け、港湾整備、管理運営も同社が行っており、世界でも珍しい港湾の1つであります。

同港湾が急速に成長した背景は、政府の協力だけではなく、何より立地条件が原因だと考えます。マラッカ海峡に接していること、水深が深く大型船の入港が可能なこと、近くに高速道路も整備されており、マレーシアの首都クアラルンプールやシンガポール中心部に短時間で行くことができること。更に、チャンギ空港(シンガポール)、セナイ空港(マレーシア)とも比較的近い場所にあることなど物流拠点としては最高の立地条件を満たしています。同港では2032年までに更にエリアを拡張し、更なる発展を目指しています。

大阪府も港湾機能の強化、組織の効率化については進めていくべきだと考えますが、それだけで大阪港の取扱い量が増加するものではないと考えます。今後とも冷静で慎重な議論を重ね、間違いのない判断をして参ります。


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