全ての国が経験しているように、近代国家であるシンガポールも60~70年代にかけて排水機能(下水)が整備されるまでの期間は至るところで洪水があり、下水道の整備が急がれてきた経過があります。同時に急激な工業化、近代化に伴って上下水道の整備と水資源の確保が課題でした。

 面積の小さく山間部のないシンガポールは水源に乏しいため、国内にある多数の貯水池とマレーシアからの輸入した原水で水の需要に応じてきました。

 シンガポールには4つの蛇口(水道)があると言われていますが、そのうちの1つは隣国マレーシアからの輸入です。マレーシアとは必ずしも良好な関係とは言えず、いつ水の供給を停止させられるか、いつ値上げを迫られるか等、不安は尽きません。マレーシアからの水輸入の契約期限である2061年に向け、依存度を下げることが政府にとって政策課題となっています。

 山間部がなく、川が少ないシンガポールでは雨水や下水処理された水は貴重な資源であり、直に海に流すのではなく、貯水地に溜めて再利用しています。シンガポール政府は、日本の逆浸透膜を使った高度濾過技術を導入して下水を再生処理し、飲用水にも再利用する「ニューウォーター」計画を開始しています。将来的に水需要の30%をこの再生水で賄うとしています。
 下水を再処理した「ニューウォーター」は勿論、飲料水として安全に飲むことが出来るのですが、消費者の理解を得るまでには暫くの時間がかかることから、多くは工業用水等として利用されています。

 一般家庭の蛇口から出る水道水は飲料水として利用可能であり、国際基準を満たしています。消費者は使用量が多くなればなるほど水道料金が割高になるような料金設定をしています。大量の消費者には職員が節水を促し、聞き入れない消費者には水の供給を止める場合があり徹底して節水に取り組んでいます。また、工場等、水を多く使う事業者には使用料とは別に税を加算し、積極的に節水をしている家庭や企業は優遇しています。

 更には、ボランティアが各家庭に出向き節水型の機器の普及に努め、ビジターセンターを利用し水の大切さを教えています。


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