SIシンガポール-画像-Aug2013

 我が国にとって初めての自由貿易協定締結(2002年)相手国でもあり、日本との外交関係は良好だと言えます。面積は東京23区と同じ大きさということもあり、「国家」というよりは「大都市」というイメージです。人口 532万人、永住権の取得者は380万人の多民族国家であるため言語、宗教も様々でありますが公用語として英語が使われています。
 シンガポールは48年前に、マレーシアから追われるような形で独立しているので、両国の間は経済交流や人的交流は盛んなようですが、領土問題や水問題もあり決して良好な関係とは言えない状態です。
 シンガポールは建国以来持続的に経済成長を続けており、1990年と比較すると経済規模は約2倍にまで拡大しています。何より経済成長の要因は政治が安定していることに尽きます。建国以来3代の首相、初代リー・クアンユー(建国の父)、2代ゴー・チョク・トン、現在のリー・シェンロン首相とわずか3人の首相がリーダーとなり、人民行動党が長期安定政権を担っています。

 この国ではスーパーエリートが政治家、役人になるのが通例であり、特に政治家には優秀な役人、軍人、学者の出身がほとんどで、政治を支える清潔で優秀な官僚組織があります。官僚の中でも、スーパーエリートといわれている約200人の年収は非常に高く、30歳で年収約2,000万円、45才では年収5,000万円程度になるそうです。エリート官僚は、退職後は民間企業等に就職し官僚時代の知識、人脈を生かしながら国家の発展に貢献しています。海外からは「テクノ・クラートによる開発独立国家」「明るい北朝鮮」等との批判の声もありますが、エリートを育て発掘する教育システム、国民の教育に対する高い意識が国家の発展を支えてきたのでしょう。

経済成長著しいシンガポールですが、様々な点で分岐点に差し掛かっていると感じています。

 我が国よりも出生率は低く、合計特殊出生率は約1,2人、そのため外国人の受け入れを積極的に行ってきましたが、その政策が絶対的に成功しているとは言い難い状況です。
 隣国から賃金の安い労働者が大量に入ってくるために、国内の労働賃金が低下しており、低・中所得者には大きなダメージになっています。また、裕福で優秀な外国人を積極的に受け入れてきたことで富裕層は拡大しましたが、結果として、所得格差は拡大し、経済成長に伴う物価の上昇(インフレ)に低・中所得層の所得水準が追い付いていない状態となっています。
 特に、若年層は独裁的な制度への窮屈さ、所得格差の増大、物価の上昇、公団住宅の値上げ等に大きな不満を持っています。建国以来政権を担当してきた人民行動党への批判が拡大し、7割近くあった支持率が6割程度にまで低下しています。
 政府は閣僚等の給与を引き下げたり、外国人へのビザの発給制限を行う等で対応していますが、問題解決には至っていないようです。


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