視察先 スウェーデン・クオリティーケア(会議室)
目 的 高齢者福祉対策及び年金制度
説明者 Emil(エミール氏)

先ず「クオリティーケア」とは日本とスウェーデンとの交流を主な目的とし日本大使館とも連携し、環境、教育、福祉の面で様々な実績を挙げている団体であり、一方で今後の人材育成と人材の提供に力を入れている団体である。
 
当日、我々にレクチャーして頂きました、エミール氏自身が視覚障がい者であります。
エミール氏は大変な努力家で、長野パラリンピックの銀メダリストであります。
日本に長期滞在(早稲田大学に留学)していた経験があり、大変な親日家であります。

レクチャーの大部分を日本語で話して頂くと同時に、エミール氏が日本の諸問題を熟知していることが何よりの比較参考となった。

スウェーデンは日本と比べて以前より高齢化が進行していたこともあり、高齢者福祉に対する長い経験があり、「高負担」「高福祉」に対する考え方が日本とは根本的に異なります。

その政策を支えてきた背景には宗教的な思想、生命に対する考え方も大いに関係していると思いますが、実際、高福祉を支えてきたのはスウェーデンの高い経済成長と政府の財政力、また政治の安定があった。

日本と同じで法律の整備は国で実施(ナショナルミニマム)、実際のサービスはコミューン(市)で行います。

スウェーデンは日本より地方自治が進んでいますが、スウェーデンの福祉に対するナショナルミニマム徹底されており、どこに住んでいても一定の高い福祉サービスを受けることが出来ます。

戦後のスウェーデンの経済発展の大きな理由は第2次世界大戦には参戦していないことが大きな理由であり、国としては200年以上も戦争をしていないのが現状です。

ヨーロッパ各国が大戦後の混乱に苦しむ中、スウェーデンは農業国から工業国へと転進し大きな成功を治めてきました。
そのことが戦後のヨーロッパの経済復興に大きな原動力となった。

しかし工業国として飛躍的に発展した一方で深刻な労働力不足に陥った。
そのため、女性を労働力として積極的に活用していくことなり、女性の社会参加は飛躍的に高くなったのである。

スウェーデンにおいては福祉、教育、医療は国民が平等に受けられる権利があり、お金持ちや高額納税者が特別のサービスを受ける施設はない。
しかし最近になって社会民主党から保守政党が政権を担当するようになり、福祉サービスも民間委託をする方策が一般的となってきた。
そこで若干ではあるが有料のサービスを決められた制度の中で運用する施設もではじめている。

スウェーデンの福祉の基本は高齢者も障がい者も自立を目的としている。 
高齢者に対する考え方は前途のように出来るだけ長く自宅で自立して生活できるようにサポートすることを基本としており、以前は大きな老人ホームが施策の主流であったが、現在は在宅介護(ホームヘルプサービス、デイサービス)が中心あり、病院の入院用のベット数でさえも50年前より少ない状態にある。 
 
障害者に対する政策も同様で施設ではなく、自宅やグループホームで自立した生活できるように社会環境が整えられてきた。
障がい者が健常者と同じように社会参加できることにも力を入れており、自分のライフスタイルを自分で決定する「自己決定権」が尊重されています。

高齢者も障がい者も補助器具等を無料で提供することで、一層の自立を促しているのである。
同時にサービスのIT化、システム化することにより施設や病院にいる時間を出来るだけ短縮することを徹底している。一人一人が少しでも自立に向かうことで結果的には安い医療費、介護費となるという考え方であります。

スウェーデンでの高齢者、障がい者に対する考え方は前途であるが、日本と異なる点は、福祉サービスを提供する側の全職員の研修、勉強にも大変な努力をしていることである。
また、注視すべき点はサービスを受ける側が機械的ではなく人間的な環境で生きていけるよう、ヘルパー等に質の高いトレーニング(教育)を実施し、その一方でヘルパー等の肉体的な負担の軽減にも力を注ぎ最新の介護機具の開発と提供を行っている。

日本と異なりスウェーデンでは福祉分野における、労働力に現在は問題がないものの、近将来の不足の事態にも十分に備えている。
一つに労働環境の整備と改善。2つめに労働の対価を十分な報酬で補償することである。
これは施設介護でなく在宅介護にすること、また国民の高負担により十分な財源があることでない得る対策であります。

日本も福祉の目的を「自立」という面に政策の重点を置くべきであり、福祉に対する考え方、発想を根本的に転換すべき時期にきていると思います。

そういう意味でスウェーデンの福祉政策は大いに参考にすべきで点が沢山あります。