男子が彼に電話してから

男子にとってはあたしが彼と別れたと思っていたけど
普通に今まで通りなにも変わることはなかった

でも、またまた
納得のいかない男子によって

「今からその人の店に行こう」と言われ
荷物までまとめさせられた

あたしの部屋にある
彼の服など

それをボストンバックや紙袋に入れて
男子の車に乗り、彼のお店へ

22時までのお店なので着いた頃には閉まっていた
お店の前の公衆電話から電話をした

「今お店まで来た」
って言うと彼はとても喜んで
「おいでや」と言った

「あたし、一人ではないよ」と言うと
少し怒った風に
「なんでや」
と言った

彼のお店から信貴スカを登る時
助手席のドア越しに
左に綺麗な夜景が広かった

宝石を散りばめたような
山の高いところの澄み切った二度と見ることがない夜景

涙が出てきてはっきりとは見えない
見ることができない

彼のマンションに着いた

顔を見た途端涙が溢れて止まらなかった

玄関を入って左の彼の廊下側の部屋で話しした

男子には車で待っててと言った

あたしは彼とは別れたくないが別れなくてはいけないこと
だけど絶対に彼と結婚するということ
彼の手帳の最後のページに
「来年の6月に名前を変えてね、二人はエンドレス」
と書いた
今思えばなんと勝手な

なんて、思い上がった人間
廊下に物音がした
男子が例の彼の荷物を車から運び出しては
廊下の欄干に掛けていたのだ

彼と二人で廊下へ出た

あたしが初めて見た
彼が怒った瞬間だった