楽譜がどうしても読めない子への、ちょっと安心できるお話
こんにちは。ピアノやリトミックの現場で、よくある悩みがあります。
「音符がどうしても読めない…」「見ただけで嫌がる」そんなお子さんです。
正直に言うと、これは 努力不足ではありません。
むしろ、脳の特性や情報の処理の仕方が影響しているだけなんです。
今日は、そんなお子さんたちの特徴と、家庭やレッスンでの対応のヒントをお話しますね。
まずは知ってほしい、共通する特徴
ここに書くのは、私の長年のレッスン経験と、チャイルドコーチングの視点を合わせて整理したものです。
「うちの子も当てはまる!」と感じることがあるかもしれません。
① 五線を“地図”として認識できていない
線や間の区別はできても、音名と結びつかないことがあります。
頭の中で「ここがド」とパッと紐づく回路がまだ作られていない状態です。
② 形で覚えようとする
「この丸い形がド!」と形で覚えようとする子もいます。
でも楽譜は配置によって意味が変わるので、うまくいかないことも…。
③ 鍵盤から逆算するタイプ
鍵盤のド→譜面のド、と逆に考えながら覚えようとする子です。
読むスピードが追いつかないため、演奏はスムーズでも楽譜は苦手、というパターンがあります。
④ 名前付け(ラベリング)が苦手
情報を整理して「これはこれ」とカテゴリー化するのが苦手な子は、音符を覚えるときも混乱しやすいです。
⑤ 間違いに敏感で回避行動が出る
間違えることがストレスになり、脳が「避けたほうがいい」と判断してしまいます。
これが、音符を見ただけで止まったり、逃げたりする態度につながります。
⑥ 空間認知が弱い
五線の上下位置を読むのは、空間を把握する力も必要です。
空間認知が不安定な子は、楽譜を理解するのに時間がかかります。
⑦ 聴覚型・身体型の子
耳や体感覚が優位な子は、視覚情報に頼らず耳コピで弾けてしまうこともあります。
「楽譜は後回しでいいや」と思ってしまうタイプです。
「できない…」は脳の防御反応
楽譜を見ると、脳は瞬間的にこう判断します。
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わからない
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間違えそう
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できない
すると、「逃げよう!」と体が反応します。
これは性格の問題ではなく、脳の自然な防御反応なんです。
どうして“読めないのに弾ける子”がいるの?
耳コピが得意な子は、
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聴覚記憶
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運動のルート
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位置パターン
を組み合わせて演奏ルートを作ります。
でも、これは読譜とは別の能力です。
だから「弾けるけど読めない」という状況が生まれるんですね。
家でもできる、短期の工夫
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五線を「位置の地図」として扱う
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音名を“呪文”ではなく“住所”として教える
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間違いを責めず、読めた瞬間を褒める
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視覚ストレスを減らす
読譜は脳の回路作り。繰り返すことで、自然に強化されます。
長期的な回路作りのヒント
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見た瞬間に口で出す癖をつける(反射化)
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上下移動をゲーム化
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ト音記号の基準点で答える
ポイントは、「考えずに出る回路」を作ることです。
まとめ
音符が読めない子には理由があります。
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脳の回路特性
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認知のクセ
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ストレス回避
大切なのは叱ることではなく、回路作りと成功体験。
レッスンで「できない…」が「読めた!」に変わる瞬間は、子どもの学習スイッチになる大事な瞬間です。
読譜は回路作り。今日の小さな一歩が、未来の大きな自信になります。
