「山手線全駅を徒歩で走破する。」

 

 この日やることを思いついたのは、午前3時過ぎのことだった。

 前日に昼寝をしてしまったためなかなか寝付くことができない。

 ならばいっそ徹夜をして、早朝からしかできないことをやろうと思ったのだ。

 

 山手線一周におよそ12時間程度かかることは、RTAを見て学んだ。

 深夜のためか異常に高いテンションを抑えつつ、必要最低限の持ち物を考えて始発電車へと準備をする。

 

 この日の持ち物は

・アミノバイタル×3

・塩分タブレット×5

・ウインドブレーカー(ユニクロ)

・替えの下着

・モバイルバッテリー

 

 あとは財布とスマホを持って家を後にした。

 

 

 

 始発電車を待っていると綺麗な朝日が。

 

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 今思えばこれは後の過酷な戦いを暗示していたのだ…

 

 GW後半初日の始発列車らしく、車内はスーツケースやボストンバッグを持った人が多数。

 

 「みんなが友達や大切な人と行楽を楽しむ中、自分は何をしようとしてんだろう。」

 そんな考えが生まれかけたが、すべては後の祭りである。

 

 新宿駅に到着し、皆が思う「新宿駅」の写真を撮るべくバスタ新宿へ向かう。

 

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 新宿駅と一口に言っても色々な景色が浮かぶ。

 しかしニュースなどで最も馴染みがあるのはここだろう。

 

5:30 新宿駅

 ついに過酷なチャレンジが幕を開けた。

 

 今回の目標はもちろん山手線一周、全駅を徒歩で走破することだ。

 しかし、これにはもう一つの目標が隠されている。

 

 それは、「弱い自分に打ち勝つ」ことである。

 「この試練に勝てなければ、就活も何も上手くいかないぞ。」

 そんな強烈な自己暗示は、このあと何度も自分を踏みとどまらせることとなる。

 

 とはいえ、最初の一駅分の足取りは実に軽やかだ。

 

 

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5:41 代々木駅

 山手線でも特に短い駅間のため、特に疲労は感じず。

 

 バイトのトレーニングといいOBOG訪問といい何かと縁がある場所である。

 

 ここから先は道を知らないため、Google Mapに頼ることとなる。

 が、これが意外と頭を使う作業でストレスを感じることに。

 

 兎にも角にも線路沿いに進み、次駅を目指す。

 

 新宿渋谷間とは思えぬ閑静な住宅街を進むと、明らかに歴史を感じる施設を発見。

 

 

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 どうも原宿駅の皇族用?ホームらしい。

 それにしてもなぜ明治神宮側ではなく逆側にホームや入口を作ったのだろうか?

 

 

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6:02 原宿駅

 若者の聖地?の原宿駅だが、通過しなかったのはおそらく初めてだ。

 生まれて21年間流行を追うモチベーションは湧かなかった。

 

 混んでいることで有名な竹下通りも午前6時では静寂の中。

 

 

 特に思い入れもないのに、渋谷を目指し急ぎ歩みを進める。

 

 オシャレな公衆電話を発見。海外にありそうだ。

 

 

 外国人の男女が大声で話しながら自転車を漕いでいる。そこら中に転がるゴミや生ゴミの酸っぱい匂い。

 

 やはり渋谷はどこか日本ではない感じがする。

 

 

 

 若干の居心地悪さや怖さを感じながら109の前まで出る。

 

 

6:23 渋谷駅

 夜を徹して呑んだであろう男女とそこら中に落ちたゴミ。

 

 どこか去年行ったカンボジアを思い出す光景だ。

 猿の惑星の看板がどこか皮肉である。

 

 それにしても何が若者をそこまで渋谷に引き寄せるのだろう?飲み屋やカフェは別の場所にもいくらでもある。

 「渋谷で」騒ぐと言うのが一種のステータスなのだろうか。

 

 どうもその感覚は永遠に分からないようだ。

 

 歩道橋を渡り、恵比寿へ向け線路脇を進む。

 

 ふと見ると、そこかしこに「落書き禁止」の張り紙。

 正しい生き方を求め、そこから外れることを恐れる自分にはこれも理解できない行為だ。

 

 やはり自分には合わない街だと実感する。

 

 次第に治安の悪さは薄れていき、高級マンション、オフィスへと街並みが変わって行く。

 

 その途中でこんなものが

 

 歴史を感じる「自販機コーナー」の看板

 徒歩だとこういう細かい風景を拾えるのが醍醐味だ。

 

 そして再び街が華やかさを少し取り戻し恵比寿駅。

 

 公衆トイレがまさかの全個室で少々驚いた💦

 

 

 

6:48 恵比寿駅

 ここまで来ると渋谷の禍々しさは消え、「高級」という雰囲気に。

 

 ロータリー出口で学06が撮れるらしいが、いかんせん被り率が高すぎるらしい。

 

 そしてこの付近は起伏が激しく、目黒へ向け急坂を登ることに。

 ここで初めて脚の疲労を実感する。

 

 果てしない道のりに不安を感じつつ、懐かしい街並みに安心感を覚える。

 

 何を隠そう、この区間にある日の丸自動車学校は自分が運転免許を取った学び舎なのだ。

 

 坂道発進や交通量に泣いた教習を懐かしみながら歩みを進めて行く。

 

 何故か2軒だけあるラブホテルを横目に目黒駅に。

 

 

 

 

7:10 目黒駅

 目黒〜五反田は正直言ってあまり印象がない。

 綺麗なオフィスビル、飲食店がある綺麗な街といった感じだ。

 

 しかし五反田に近づくと様子が一変する。

 鶯谷駅を思い出す大きなラブホテル街。

 

 彼女無し歴=年齢の自分が歩くと、いささか虚しさを感じてしまう場所である。

 

 「ここら辺のコンビニやドラッグストアのコンドームの売れ行きはいいんだろうなぁ」とくだらないことを考える。

 

 するとふと視界にこんなものが

 

 

 

 世にも珍しいワンカップの自販機である。

 

 記念に一杯やろうかとも思ったが、先を考えグッと我慢。

 

 古い旅館ではたまに酒の自販機も見かけるが、新しいのは全く見かけない。

 

 おそらく未成年飲酒や飲酒運転を防ぐためだろう。

 

 そんなこんなで

 

 

 

 

7:28 五反田駅

 就活イベントでTOCに行く際に数回お世話になった五反田駅。

 

 2月のイベントは帰りが豪雪だったのが懐かしい。

 

 五反田〜大崎は線路に沿って歩きづらいため、一旦山手線を離れる。

 

 道中に平太周の本店を発見。

 いつかここの爆盛油脂麺を食べてみたいものだ。

 

 山手線を陸橋で跨ぎ大崎駅へ。

 

 

 

 

7:44 大崎駅

 休み込みで8:30に品川を出たいと思っていた自分にとって、ほぼ予定通りの到着だ。

 

 ここから先は線路沿いに歩けないため、どのルートも線路を大きく外れることとなる。

 

 自分は山手線より大幅ショートカットすることを良しとせず、京急線新馬場駅を経由する迂回ルートを選択。

 

 が、これが失敗だった。

 

 大幅な迂回とGooglemapの奇怪なルート選択により体力は見る見る消耗。

 

 都営バス品川車庫を通り

 

 

 

 京急の踏切を渡る時には、膝の裏に鈍い痛みを感じていた。

 

 そして

 

 

 

8:28 品川駅

 駅の規模にしては随分寂しい入口だ。

 

 今後京急の駅の大工事とともに、西口がどう変貌するのか非常に気になるところである。

 

 

 まだ全行程の1/4程度だが、長くなりすぎたので一旦ここで区切ることとする。

 

 次回以降は痛みとの格闘がメインで、街について考える余裕は無くなってゆく…