山を始めた頃から、山で出会う老夫婦の後ろ姿が好きで、いつもこっそり撮ってしまいます。その佇まいは2人の人生そのもので。


もう何年も前だけど、八ヶ岳の赤岳で追い抜いた老夫婦と山頂でもう一度話すタイミングがありました。ご主人は『山を2人でゆっくり登り、私たちはいま、2度目の人生を歩いています』と僕に話してくれました。その言葉は今も妙に脳裏に焼き付いています。


登山哲学と人生哲学は同じで、絶景を拝める事や、五感が震える感動を含め、僕が山にのめり込んでいるのはこの哲学的な部分も大きいです。


いくら難易度のある高山を登っていようが、美しい身のこなしで登れようが、山の場数が優っていようが、人生の先輩である以上は山の先輩なのです。音楽も同じ。音楽は音符を追うものではなく、人生を乗せるもの。なので、人生の先輩は音楽の先輩なのです。


北アルプスであっても、街の里山であっても、老夫婦の後ろ姿から感じるものは同じで、とにかく謙虚にペースを守って一歩ずつ。背中が語ると言うのは本当です。


@ 福山市 蔵王山