日の出はもうすぐ。息を飲む静寂。
穂高の方面は、今日も美しい。
御来光。呼吸をするのを忘れてしまう時間が続く。
陽が登る。槍は今日もそこに雄然とそこにある。
高知から訪れたお父さんとお母さん。御年73歳と70歳。
何度も並びながら登らせて頂いた。
お二人の言葉と姿勢は、俺の心に残っている。
福島のいわき市から河口湖に疎開している青年。
色んな思いを抱いている彼の足取りは力強かった。
一期一会。
他にも、道中で会話を交わし、肩を並べて登った方々が居た。
最高齢は78歳での単独登山をされている方でした。
人生の先輩であり、山の先輩である彼らが発する言葉は、
その一言一言が心にスッと入ってくる。
この先、俺は彼らの続きの人生を知る由もない。
それはお互い様だろう。
センチメンタルな別れは山では要らない。別れ際は力強い握手と笑顔で。
ただ、決して忘れないよ。
東鎌尾根を下るパーティー。なかなか強烈な稜線だ。
槍を背に、ただひたすらに山を楽しむ。
俺は先行し、危険箇所のチェックを。
大喰岳、中岳、南岳、北穂高、奥穂高、前穂高。遠くに乗鞍。
鳥肌が立つぐらいの抜け具合だ。
彼方に鹿島槍ヶ岳、五竜岳、剣岳を望む。
槍からの北鎌尾根。ここに地図上の登山ルートはない。
槍からの東鎌尾根。俺らはここをずっと下降中。
再び北鎌を望む。右のピークは北鎌独標。厳つすぎるルート。
凍りつく葉。山はこいつらの集合体だ。
西岳から大天井岳に続く尾根を望む。表銀座の一部だ。
この尾根を下りてきたんだな。東鎌尾根。ここも表銀座の一部。
穂高方面を望む。
難所の大キレットは切れ落ち過ぎていて、ここからは見えない。
メシは自分で持参しているけど、山小屋の弁当をお願いした。
おこわ。力が湧いてくる。
頑張った足の労をねぎらう。
上高地に戻ってきました。全員無事が一番だ。