失語症に関する記事が出ていたので、抜粋して紹介します。

 

(4月25日配信 山陽新聞 digital)

「失語症の父と雑談楽しみたい」

 ~女子高生が研究続けるツールとは~ 

  「言語障害の一つで、言葉が思うように出てこない”失語症”。そんな失語症の父親と雑談を楽しみたいとの思いから、コミュニケーションツールの開発を続ける女子高生がいる。操山高校(岡山市)2年藤原咲歩さん(16)だ。咲歩さんは”父親をはじめ、同じような障害のある人たちの雑談のきっかけをつくり、笑顔にしたい”と研究に没頭している。4月25日は”失語症の日”ー。」

  「開発するのは”雑談創造機器チット”。3Dプリンターで作った手になじむマウス型で、指先には四つのスイッチが付いている。押すと”どうだった””いつ””なんで””どこで”といった音声が内蔵のスピーカーから流れ、会話をサポートしてくれる。英語で雑談を意味する”チットチャット”から”チット”と名付けた。」

  「父親が脳梗塞で倒れたのは咲歩さんが小学6年生の時だった。県外の出張先で発症。まだ30代だった。病院から連絡を受け、夜中に家族とともに駆けつけると、集中治療室で眠る父親がいた。”頭を手術するため髪の毛がなくて、体も動いてなくて、入院着を着ていて。いつものキラキラでかっこいい父親とは違う姿にショックを受けました”と振り返る。」

  「父親は後遺症として失語症と全身まひが残った。当初は寝たきりで手を握ると握り返すのみだったもののリハビリを経て、車いすで移動できるまでに回復した。ところが、失語症の影響で言葉のキャッチボールができない。そんな父親に咲歩さんのイライラは募った。“当時の私は失語症の知識がなく、『なんで言葉を返してくれないの?』『何を考えているの?』『私と話したくないから?』と腹が立ちました”。」

  「失語症の症状は人それぞれ。父親の場合、言葉は出づらいものの、短文で答えることができる。ただ、”好きな○○は?”のように答えが広範囲な質問には考える時間がかかる。”おかえり”と声をかけると”ただいま”ではなく”おかえり”とオウム返しになることもあるそうだ。メールは、短文では理解できるが、長文になると頭が混乱するという。」

  「NPO法人日本失語症協議会(東京)によると、失語症者は全国で30万~50万人いるとされている。症状は人によって異なるが、頭では分かっているのに言葉が言い表せなかったり、文字の読み書きができなかったりすることがある。復職率はわずか8%という調査結果もあり、社会との接点がなくなったり、家族と思うようにやりとりできない中で、引きこもりになったり、離婚したりする人もいるという。」

  「咲歩さんは周囲の人に伝えたいことが二つある。一つは”健康診断の結果を疎かにしないでほしい”ということだ。”父は運動もしていたし、病気一つしない人でした。でも頭痛がすると言っていたことがありました。もし体に異常を感じたらすぐに病院に行ってほしいです”。もう一つは”家族との会話を大切にしてほしい”。”私が研究を続けられているのは、小さい頃の父との楽しい会話がずっと支えになっているからです。家族との日常会話は当たり前のようで、とてもありがたいもの。それを大切に毎日生活してほしいです”と呼びかける。」