堤 未果(つつみ・みか)さんの最新版が出たので紹介します。

 

国民の違和感は9割正しい

 (堤 未果著。2024年4月8日発行。PHP新書。900円+税。)

  本の紹介から。

 

  「最近、こんなことはないですか?

 

   テレビ、新聞、政府が知らせてくること、

   周りがみんなやっていること、

   正しいことだと言われても、

   モヤっと、何かが引っかかる・・・

 

   今感じている違和感、その9割は正しいです!

 

   大富豪たちが大量に売り逃げる中、

   日本国民に新NISAで米国株?

   被災地が苦しんでいるのに外国に1兆円?

   偽情報って誰がきめるの?

 

   疑問を口に出したら最後、陰謀論だと叩かれる。

   けれど思い切ってその外に出たら、

   世界は180度姿を変え、真実が見えてきます。

 

   『デジタル・ファシズム』『日本が売られる』など、

   数々のベストセラーで注目される国際ジャーナリストが、

   丹念な取材と調査と分析を重ね、

   ”お金・人事・歴史”の3つから、

   違和感の裏側を徹底的に暴き、

   未来を選び取る秘策を明かします!」

  著者は「はじめに」でこう述べています。

  「うずらの卵で一人窒息死が出ると、大騒ぎして全ての卵を廃棄するのに、ワクチンで何万人死亡しても、立ち止まるどころかわざわざ工場で大量生産し、定期接種を推奨してくる国。スター選手大谷翔平の結婚報道の陰で、タネや水道に続く、通信インフラ(NTT)の民営化や、緊急時に自治体や農家や病院を、国の支配下に置く法改正。脱税している人が納税を呼びかけ、法律を守らない人が憲法改正を訴え、戦争に行かない人が戦争の準備をせっせと進める今の日本を、おかしいなあと感じる人は、決して少なくないのです。」

 

  後は、各章ごとに、印象に残った文章を抜粋して紹介します。

 

1.第1章 災害の違和感~立ち止まれますか?

  ここでは、能登半島地震を取り上げています。政府の対応の遅さが描かれています。覚悟のない岸田総理は、1月5日の経団連の新年会に出席したことや、馳浩石川県知事は、県の予算から 1000万円を大阪万博関連事業に入れると発表したことなど、「総理と知事に共通しているのは、被災地への関心がよく見えないこと」だと述べています。(p23)

  志賀原発の災害に対する情報の遅さ、水道管の工事の遅れも指摘しています。

  「もう一つ、能登半島地震のどさくさと裏金スキャンダルの裏で、私たちの大切なインフラが売られようとしていることをご存知でしょうか? 自民党が防衛費のために、NTT法を改正したのです。・・・この売国的な法改正が、2024年3月1日に、閣議決定されてしまったのです」(p54-56)

  「私たち住民の税金が投じられた公共サービスについての情報公開といつでもチェックできる体制は、手放してはなりません。」(p59)

 

2.第2章 「戦争と平和」の違和感~お金は噓をつかない

  「2023年6月16日。あるトンデモ法案が参議院で可決していたことを、知っている人はどれほどいるのでしょう? その名も<防衛財源確保法>。・・・歳出改革・決算剰余金・国有財産の売却・・・これで足りなければさらに、法人税、所得税、たばこ税、復興税の余りを回す。そして最後は消費税アップ・・・と広げ、とにかく引き上げたばかりの向こう5年分の防衛費43兆円を、増税でまかなう計画です。」(p90-92)

  「そもそも増税してまでアメリカから割高の中古武器を買うことが、はたして本当に日本の防衛力強化につながるでしょうか?」(p93)

  「新NISAは、株が上がっている時は税金もかからず良いのですが、あくまでも利益が出ている時に優遇される制度なので、損した時の対処法はありません。”資産運用立国”とはすなわち、将来年金が不足しても、老後資金は政府の責任でなく、国民の自己責任。・・・年金で足りない分の老後資金を増やしましょう! とメリットばかり並べられても、買うタイミングについては、よくよく慎重になったほうが良いでしょう。」(p105-106)

  「そもそもマイナ保険証やワクチンでメリットばかり連呼した挙句に、都合が悪くなると相手をブロックし”そんなこと言ってません”とすっとぼける大臣や、中抜き祭りの公金プロジェクトに、絶対捕まらない裏金七人衆、虚偽の収支報告書を出した裏金議員たちに批判が飛ぶ中、納税は本人の自由ですといってのける財務大臣、トドメは相手によって耳が閉じたり開いたりする総理の<聞く力>。」(p108)

 

3.第3章 <いのちは大切>の違和感~虫の声が聞こえますか?

  「農業基本法改正」について。著者は「食料安全保障の抜本的な強化」に批判的です。

  「具体的に何をするかというと、まず、日本からの輸出を増やすために、農業を成長産業にするスマート化。デジタル化して効率を上げる他、ゲノム編集魚の陸上養殖事業などが盛り込まれています。・・・ゲノム編集魚もまた、環境や人体、生態系への影響は、未知数であることを、私たち国民は理解しておいた方が良いでしょう。」(p111,p115)

  「有事に海外から食べ物を輸入品できるよう、輸出国への投資を増やす。・・・コロナやウクライナ紛争で、食を輸入に頼ることがいかに危険なことか、有事の時に国内で食料確保できる体制を作ることが急務だと、世界中が実感したばかりです。」(p116)

  「有事に備えて投資すべき相手は、輸出国よりまずは国内農家であり、もしも老後が不安な個人なら、今株価が高騰しているこのタイミングで株などを買うより、小さくても農地を買った方がはるかに安心です。」(p119)

 

4.第4章 <真実とウソ>の違和感~先入観を外せますか?

  省略。

 

5.第5章 <民は愚かで弱い>~未来は選べる

  「<違和感>を覚えたら、まだ大丈夫、と安心してください。感じる力が働いていることは、思考停止した受け身の消費者でなく、血の通った身体と健やかな心がある、人間である証拠です。<民は愚かで弱い>というのは、私たちがそれを受け入れ、自信を失い、無力になることで、得をする誰かからの刷り込みにすぎません。」(p217)

 

  私は、政府のやる事の一つ一つが「違和感」を覚えます。岸田総理の「日米共同声明」「米議会演説」を読んで、これでは戦前だ、と思わざるを得ませんでした。「日米同盟が『前例のない高みに到達した』」という岸田総理の言葉には不安を感じます。国民の生命に関わる防衛、安保政策がなし崩し的に変更する危険性を感じます。岸田総理には、解散をし、国民の声を聞くべきだと思います。

 

  著者の新刊は、急いで出したという感がします。「日本が売られる」「デジタル・ファシズム」「ルポ 食が壊れる」の方が衝撃的でした。堤未果さんの本は次の通りです(テーマ別:書評)。

「日本が売られる」(2019年1月7日ブログ)

「デジタル・ファシズム」(2021年12月21日ブログ)

「ルポ 食が壊れる」(2022年12月21日ブログ)

「堤未果のショック・ドクトリン」(2023年6月14日ブログ)