日頃気にしていた本を購入しました。2021年新書大賞第5位にランクインし、2021年に1番売れた本「スマホ脳」です。

 

  実は、私も以前、友達の勧めもあり「フェイスブック」に登録していました。ところが、スマホを頻繫に見る機会が増えて、個人情報がどう保護されているのか分からず、怖くなって登録抹消をした経過があります。「フェイスブック」は登録するのは簡単ですが、抹消手続きが複雑で苦労しました。

  大人も子供もスマホ依存症(中毒)になっている気がして、それが与える影響について知りたいと思いました。生成AI(人工知能)が作成する偽動画(本物と区別がつかず)を見て、今後どうなってしまうのだろう? と危惧しています。

 

スマホ脳

 アンデシュ・ハンセン著。久山葉子訳。2020年11月20日発行。新潮新書。980円+税。

  本の紹介から。著者は、スウェーデン・ストックホルム出身の精神科医。

  「平均で一日四時間、若者の二割は七時間も使うスマホ。だが、ステイーブ・ジョブズを筆頭に、IT業界のトップはわが子にデジタル・デバイスを与えないという。なぜか? 睡眠障害、うつ、記憶力や集中力、学力の低下、依存ー最新研究が明らかにするのはスマホの便利さに溺れているうちにあなたの脳が確実に蝕まれていく現実だ。教育大国スウェーデンを震撼させ、社会現象となった世界的ベストセラーがついに日本上陸。」

 

  著者は、「まえがき」でこう述べています。

  「今あなたが手にしている本は人間の脳はデジタル社会に適応していないという内容だ。」(p7)

  「現在、大人は1日に4時間をスマホに費やしている。10代の若者なら4~5時間。この10年に起きた行動様式の変化は、人類史上最速のものだ。それにはどんな影響があるのだろうか。」(p7)

  「(その影響から逃れるために)睡眠、運動、そして他者との関わりが、精神的な不調から身を守る3つの重要な要素だ。」(p10)

  「新しいテクノロジーに適応すればいいと考える人もいるが、私は違うと思う。人間がテクノロジーに順応するのではなく、テクノロジーが私たちに順応すべきなのだ。フェイスブック他のSNSを、現実に会うためのツールとして開発することもできたはずだ。睡眠を妨げないようにも、身体を動かすためのツールにも、偽情報を拡散しないようにもできたはずなのだ。

  そうしなかった理由ーそれはお金だ。あなたがフェイスブックやインスタグラム、ツイッター、スナップチャットに費やす1分1分が、企業にとっては黄金の価値を持つ。広告が売れるからだ。彼らの目的は、私たちからできるだけたくさんの時間を奪うこと。」(p14)

 

  著者の言う「人間は現代社会に適応するようには進化していない」(p32)とはどういう意味か? 人間は長い歴史(20万年間)の中で、飢餓や闘争や死の恐怖からどのように逃げ出すことができるのかという点で過ごしてきた。そんな人間の感情・精神は、現代社会(デジタル社会)に十分対応できるものを持っていない、と著者は述べています。

 

  著者が言うスマホ依存症(中毒)の影響は、どのような形で出てくるのか? それを要約してみました。

  集中力の欠如。ストレス。うつ。睡眠不足。自制心の欠如。孤独。

  「スマホでうつになる?」から(p116-117)

  「過剰なスマホの使用は、うつの危険因子のひとつだ。睡眠不足、座りっぱなしのライフスタイル、社会的な孤立、そしてアルコールや薬物の乱用も、やはりうつになる危険性を高める。スマホが及ぼす最大の影響はむしろ”時間を奪うこと”で、うつから身を守るための運動や人づき合い、睡眠を充分に取る時間がなくなることかもしれない。」

 

  印象に残った文章を抜粋して紹介します。

 

  第6章「SNS-現代最強の”インフルエンサー”」から。

  「私たちは本当に、フェイスブックなどのSNSによって社交的になったのだろうか。そういうわけでもないらしい。2000人近くのアメリカ人を調査したところ、SNSを熱心に利用している人たちのほうが孤独を感じていることがわかった。」(p137)

  「フェイスブックを使った人ほど、人生に満足できていなかった。・・・フェイスブックは表面的には、人間のソーシャルコンタクトへの本質的な欲求を満たしてくれる貴重な場である。しかし、心の健康を増進するどころか悪化させることを調査結果が示唆している。」(p146)

  「人類史上最大のニュース発信源フェイスブックは、拡散される内容の信憑性に編集責任を取っていないという批判を受けている。人間に備わった恐怖や争いへの興味を食い物にして、私たちの注目を引きつけている。すべては広告を売るためだ。こんな指摘をする人もいる。SNS上のフェイクニュースは軍事紛争を煽っているし、民主主義を揺るがしている。いやそれどころか、すでに決定的な影響を与えてしまってもいると。」(p166)

 

  第7章「バカになっていく子供たち」から。

  「スマホを使いながらの学習だと、複数のメカニズムが妨げられる。」(p184)

  「研究者たちの結論は簡潔だ。子供たちが能力を発揮するためには、毎日最低1時間は身体を動かし、9~11時間眠り、スマホの使用は1日最長2時間まで。この睡眠や運動、スマホ・タブレットの時間制限はごく現実的なものだ。」(p185-186)

  「スクリーンの前にいる時間が長いほど不眠になる。やはり、スマホが若者の睡眠不足の大きな原因だというのは間違いなさそうだ。」(p188)

  「SNSは私たちの精神状態に影響を及ぼす。常に他人と比較することがストレスになり、心に不調をきたすのだ。」(p192)

 

  第8章「運動というスマートな対抗策」から。

  「基本的にすべての知的能力が、運動によって機能を向上させるのだ。集中できるようになるし、記憶力が高まり、ストレスにも強くなる。 多くの人がストレスを受け、集中できず、デジタルな情報の洪水に溺れそうになっている今、運動はスマートな対抗策だ。最善の方法と言ってもいいかもしれない。」(p203-204)

  「あらゆる種類の運動が知能によい効果を与えるということだ。散歩、ヨガ、ランニング、筋トレーどれも効果があった。運動によっていちばん改善されたのは、知能的な処理速度だ。運動をしていると頭の回転も速くなるというわけだ。」(p216)

 

  第9章「脳はスマホに適応するのか?」から。

  「近代技術によって私たちは情報の洪水に溺れ、自分で考えることができなくなる。」(p224)

  「スマホやタブレット端末を子供の手からーもしくは自分自身の手からー無理矢理もぎ取らなければいけないような状況なら、スマホ依存を疑おう。スマホに1日3時間費やした挙句によく眠れない、前より不安になった、集中力が落ちたと感じるなら、しばらくスマホから遠ざかる価値はある。」(p226-227)

  「(作家ニコラス・カーは)インターネットは本とは真逆の存在だと考えている。インターネットは深い思索を拡散してはくれない。表面をかすめて次から次へと進んでいくだけだ。目新しい情報とドーパミン放出を永遠に求め続けて。」(p228)

 

  最後に著者は、「デジタル時代のアドバイス」を述べています。項目だけを抜粋して紹介します。(p244~)

  自分のスマホ利用時間を知ろう。 毎日1~2時間、スマホをオフに。 (職場で)集中力が必要な作業をするときはスマホを手元に置かず、隣の部屋に置いておこう。 チャットやメールをチェックする時間を決めよう。 (人と会っているとき)友達とあっているときはスマホをマナーモードにして少し遠ざけておき、一緒にいる相手に集中しよう。 

  (子供と若者へのアドバイス)教室でスマホは禁止! スクリーンタイムを制限し、代わりに別なことをしよう。 (寝るとき)スマホやタブレット端末、電子書籍リーダーの電源を切ろう。 スマホを寝室に置かない。どうしてもスマホを寝室に置くなら、着信音を消しマナーモードに。 寝る直前に仕事のメールを開かない。 

  (運動と脳)どんな運動も脳に良い。 最大限にストレスレベルを下げ、集中力を高めたければ週に3回45分、できれば息が切れて汗もかくまで運動するといい。 (SNS)積極的に交流したいと思う人だけをフォローしよう。 SNSは交流の道具と考えて。 スマホからはSNSをアンインストールして、パソコンでだけ使おう。

 

  言うことに説得力がある新書でした。街で見る多くの人がスマホ依存症だと思っています。電車で幼児にスマホを渡しているのを時々見かけますが、「子供のスマホ依存の危険性」と「幼児には向かないタブレット学習」を読めば、それは間違いだと分かります。歩きスマホ、自転車スマホなどは相手に迷惑どころか怪我をさせる危険な行為です。電車の中で、スマホを一心不乱に見ている人たちも、スマホ依存症かも?  彼らが幸せそうに見えないのなぜでしょうか?

  とにかく、運動がいいと言うことで、今日から再びウオーキングを始めます。