「縮小ニッポンの衝撃」(2017年7月20日発行、NHKスペシャル取材班、講談社現代新書、740円+税)

 

   最近のベストセラー「未来の年表~人口減少日本でこれから起こること」(講談社現代新書)が話題になっています。これは読んでいませんが、同じ出版会社から出されている表題の本の紹介をします。宣伝文句は、「北海道・夕張市、東京都・豊島区、神奈川県・横須賀市、島根県・雲南市など、迫りくる人口急減社会に苦悩する自治体に密着取材。”縮小ニッポン”の過酷な未来を描き出す。」です。私は、「少子高齢化」という言葉をニュースで聞くたび、漠然とした不安を持っていました。この本は、データと取材に基づき、「少子高齢化」が日本の将来にどのような影響を及ぼすのかを具体的に示しています。

 

  まず、「プロローグ」でデータを示しています。「2017年に発表された最新の予測では、2053年には日本の人口は1億を切り、2065年には8,808万人になるという。これから約50年間で実に3,901万人の日本人が減少することになる。・・・これから8年後の2025年には、日本は5人に1人を75歳以上の後期高齢者が占める超高齢社会に突入する。」「2050年に日本が直面する課題は過疎地域の無人化というよりは、日本全体の過疎化とも言うべき事態である。推計によると、現在人が住んでいる地域の6割以上で人口が半数以下になるというのだから、驚くほかない。」

 

  こうして取材は、将来日本の各地で起こると思われる地域を、自治体を中心にレポートしています。その中で印象に残ったのは「北海道・夕張市」の取材です。「破綻の街の撤退戦争~

財政破綻した自治体の過酷なリストラ」の章です。「撤退戦。それは、縮小していく地域の現実に正面から向きあい、それに合わせてあらゆるサービスを縮小していくことにほかならない。」「縮小の時代。そのとき自治体職員たちは住民の痛みに正面から向き合うことを迫られる。それは、拡大の時代を生きてきた公務員たちがおよそ感じることのなかった痛みである。自治体を安定的に継続させていくために、どれだけの痛みを住民に引き受けてもらうのか。市民のために働くとはどういうことなのか。そもそも、自治体とは何のためにあるのか。これからの時代

、自治体職員はこれまで以上にこうした本質的な問いに向き合わなければならなくなるのかもしれない。」

 

   「地域社会崩壊 集落が消えていく~”農村撤退”という選択」の章では、取材者としての意見をこう述べています。「今回の取材を通して痛感したのは、これまでの”地方再生”一辺倒の議論だけでは到底解決することができない”縮小ニッポン”の厳然たる現実だ。消滅をタブー視していては、何も進まない。何を守り、何を諦めるのか。私たち一人ひとりが自分の問題として考え、戦略を持って選び取る時代に来ているのではないか。」

 

  「エピローグ」では、こう述べています。「私たちもまた、・・・日本が再生するための方策がないか、考え抜いた。・・・”これが処方箋です”と勧められるような策は見当たらず、その提示を諦めざるを得なかった。」「2025年は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる年である。

社会福祉費が増大し、国家財政が破綻の危機に瀕する。東京オリンピックは、縮小ニッポンがもたらす歪みが噴出し始める分水嶺となる。祝祭の先で私たちを待ち受けているのは、奈落の底へとつながる絶壁なのかもしれない。」(※大げさかも知れません)

 

  ”処方箋はないか”と思っていたところ、ありました。

「”エイジノミクス”で日本は蘇る~高齢社会の成長戦略」(2017年7月10日発行、吉川洋・八田達夫共編者、NHK出版、820円+税)

  この本は、2016年に新書部門No.1に選出された「人口と日本経済~長寿、イノベーション、経済成長」(2016年8月25日発行、吉川洋著、中公新書)と大筋で似ています。宣伝文句は「高齢者向けイノベーション=エイジノミクスでGDPはまだ伸びる!成長の道筋を初めて論証」。2017年8月5日、日本経済新聞の読書欄の新書紹介で出ています。「少子高齢化が進み、人口が減る社会は活力が乏しく、経済成長もなくなるだろうと思いがちだ。しかし、この本によると違う。規制改革を進めれば、高齢化に合わせた産業のイノベーションが起こり、成長は続くという。全国各地の意欲的な取り組みの紹介もあり、これからの社会を考える参考になる。」

  興味のある方は、購入して読んでみるとよいと思います。一貫して言っているのは「労働生産性の伸びをもたらす究極の要因は、イノベーションである。イノベーションという概念は、・・・次の五つ。1.新しい商品の創出、2.新しい生産方法の開発、3.新しい市場の開拓、4.原材料の新しい供給源の獲得、5.新しい組織の実現」です。例として、「病弱な人のための財・サービスのイノベーション」としてあげているのが「創薬開発」「介護施設でのロボットの活用」「遠隔医療サービス」。一方「健康な人・・・」は、「ライドシェアリングによる配車サービスへの需要」「シニア向けの旅行サービス」です。

 

 

 

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