2年経った今も、変わらない悩みは減らない。

 

自営業とはね。

 

 

本当に、世界どこに行っても、自営業って辛い立場なのかなー。それともドイツだからかなー。それとも、飲食店業だからなー。

 

と色々頭をなやますこの頃。

 

 

 

というのも、ドイツ、2014年ぐらいから最低賃金制度っていうのができて。

ミニジョブと呼ばれる最大450ユーロまで稼げるバイトさんの時給は、知識、年齢、経験など問わず、時給一律支払われるって仕組みで。

昔までは、学生さんだからー、とか、外国人さんでドイツ語上手に話せないし〜、とか、まだ、この職種経験がないから〜ってことで、上司が、その人個人個人の時給を、決めることができたんだけれども、これが全くなくなったってこと。

 

私たちがお店を始めた当時は、高校生の経験のないバイトさんには、5ユーロ(640円ぐらい)ぐらい上げてたのが、その制度が始まった2014年は、7ユーロ(896円)ちょっとから始まって、そのうち去年あたりには8ユーロ20セント(1049円)ぐらいまで上がって、今になって9ユーロ25(1184円)セント。

 

 

そして、昨日、税理士さんからの封筒を開けると、9、50ユーロ(1216円)になりますよと。そして、その日の夜には、ある政党が来年は時給を12ユーロ(1536円)まで上げると。

 

 

どんな状況か、日本に置き換えてみると。

中卒でも。

学校に出てなくても。

仕事経験がなくても。

北海道の村中でも。

東京の六本木ヒルズの上階でも。

刑務所歴があっても。

バイトに行って受け入れられれば時給1536円。

要するに、月38時間が最大労働時間数。

毎日1時間ちょっと働けば、1ヶ月に450(57000円相当)ユーロは手に入るって計算。

もちろんバイトさんたちに1時間だけのために来てねーなんてことは言えないので、だいたい来てもらう時には、3、4時間をめどに来てもらうんだけれども、だいたい3、4時間毎回働くなら、2週間ぐらいくればいいってことで。

 

 

私の日本でのバイト経験といえば。。。

地元の街中で某チェーンレストランで、17歳当時690円。

家庭教師(大学経歴やら高校の経歴)19歳1200円

東京の個人指導塾にて1500円

 

当時は、週に3、4回働いても4万近くなんてもらえたことなかったのに。

 

 

こんなことを考えてると、ほんと働く意欲が欠けてきて、むしろどっかに雇われていた方が、お金も儲かるし、責任も少ないし、時間もたくさんあるのになーと。むしろ、ドイツの場合、失業して、失業手当をもらってる人なんて、普通に真面目に働いてる人と同様の手当もらってるし、かなりいい暮らししてる。家具が壊れれば、市役所に申し出れば、手当もらえるし。住居も光熱費も、交通費、さらには娯楽費も毎月、市から払ってもらえる。将来の不安だけを持ち続けなければいけないだけで、今だけいい暮らしをしたい、働きたくのが馬鹿らしいって思うなら、みんな失業手当出して、仕事しないなんて人は、結構そこらへんに隠れている。働いているっていうステータスと将来の保証のためだけで働いてるわけで、別にいい車が欲しい、家が欲しいから働いてるわけじゃない。

 

こんな悩みが重なった上で、急遽ミーティングを行うことに。

 

いつもだったら、旦那さんが主に話して、私が隣で聞いてる〜なんて感じで。やっぱり、ドイツ人の旦那さん、バシバシダイレクトにいうし、ドイツ語でも気をつけてってくれるので。

でも、今回ばかりは、私も口を閉じておられず。

 

 

「この状況に来て、はっきり言って、この先本当に継続していくかどうか私的には悩んでる」と切り出してみて。

 

 

みんなビックリして、顔を合わせてみてたけども。

パートのおばちゃんが、「えー、そこまで考えてるの?」と笑い気味で言うので、「去年ぐらいから、最低賃金制度が上がっていくのをみて、真に考えてるわ。旦那さんがもうちょっと頑張ってみよーって引っ張ってるけれども、私的には、本当にモチベーションが湧かない」と。

 

いつもだったら、「そんなにダイレクトに言わない日本人の社長夫人」って顔があるので、みんなちょっとやっぱり驚いていたようだけれども、日本での自分の経験も含め、私が悩んでる根本を話してみた。

 

バイト、パートに来てくれてる人たちは、主婦の人だったり、大学生だったり、飲食業のバイト未経験の高校生だったり。3年前にドイツにやってきた難民の人だったり。

 

 

「日本とドイツは違うって言われるかもしれないけれども、私は、東京に住んでる時、大学卒業っていう条件のもとに、塾のバイトに受け入れてもらって、今のドイツの最低賃金9、25ユーロをいただいていたの。自分が持ってる言語の資格、レベル、留学の経歴、大学の名前などをすべて提示して、雇えてもらってたの。よく考えて欲しいのは、東京の地価は世界でも上位に入るほどで、家賃も高かったし、物価も高かった。それを経験した私が、当時の私の給料と同じ額を従業員さんに払えって言われてる。飲食業と教育者としての職種の違いも考えて欲しいし、私たちのヘルネっていう田舎の土地と世界でも大都市と言われる東京という都市の違いも考えてほしい。自分が若い当時働いてた労働の質と時間と、今みんなが働いてる状況とを比べてしまうのはやも追えないのはわかってもらえると思う。」

 

 

みんな下を向いて考え込んでいたようで。

特に突っ込んで言ってみた。

「例えば、お客さんが少ない時に、やることないなーと、5分間携帯をいじってるなら、棚の掃除もできる。3時間の労働時間の間に、毎回3分間、3回のタバコ休憩に行く時間があるなら、約10分間。その間、ゴミ出しにだって行けるし、庭の草取りだって、机の片付けだってできる。私の頭の中は、1分いくらって計算が常に回っているの。」

 

外国人のバイトさんにも、

「言葉が通じなくて、社長と話ができないような状況であるあなたたちでも、どこかに受け入れてもらえて、この額の時給をもらえるのは、難民が溢れかえるドイツだけだと思った方がいい。ここで働くからには、熱心にドイツ語学校に通ってもらって、文化の違いに関係なく、時間通りに来て仕事をこなして欲しい。外国人だからドイツ語が話せないっていう考えは捨てて欲しい。私も、外国人だし、ドイツ語学校に通わなかった私でも、ドイツ3年目には、お客さんの前に立って、たくさんチップをもらえるように、お客さんとコミュニケーションをとっていたわ。」

 

「何を言いたいかというと、自営業やっていこうとこの道を選んだのは私たち。最低賃金制度をどんどん高騰させていくのは、ドイツ政府。あなたたちバイトさんのせいでは、全くない。けれども、ここまで最低賃金制度が上がった中で、バイトをしていくなら、私も旦那さんも時給9、50ユーロの労働力と分刻みでの労働質を望んでる。そういう目でいつもみんなの仕事を見てる」と。

「もちろん、私たちがレストランをやめるって言って、みんなに違うところで働いてもらうことになったとしても、どこの自営業者も、このバイトさんは時給9、50ユーロの価値があるかって目で面接をすること頭に入れて欲しい。」

 

と、話し合いをした結果、結局は、他の飲食店同様、お店の商品の値段を上げる他ないとなり、みんなで夜中まで、メニューの値段について話し合った。

 

なんだか、今までなーなーで働いてもらったり、長い間やってるバイトさんとは友達感覚でもやっていたけれども、周りの自営業さんが言ってるように、ほんと仲良し感覚で労働なんていうのをやっていると損するばかりだとわかった気がする。

このミーティングの次の日からは、パートのおばさんがシャキシャキと動き回って働いてくれたり、バイト君が効率よく、自分のアイディアをどんどん盛り込んでくれたりするのが目立った。

 

果たして、これがいつまで続くことやら。

 

 

とある、経済雑誌の広告を見てたら、こんなことが書いてあった。

「ドイツよ、世界からバカにされて笑われる日もそう遠くはない」と。