「ちょっとは他家の迷惑も考えろよ、なあ兄ちゃん」
突然ワタシの上家のおじさんが叫んだ。
他家の迷惑とは、ヘボが入ったときに起こることといわれています。つまり、ヘボが暴牌を打ったりして
状況が一方的になることを指します。その日はこんな座順でした。
----------ヘボ
Aさん -----|-----オヤジ
---------ワタシ
ヘボが甘い牌を打って、どんどん右の人を有利にしたり、ワタシからポンをして
オヤジのツモ番を飛ばしたりでAさんがかなり稼ぎました。一方オヤジはしばしばツモ番を飛ばされるので
イライラしている上に、状況が一方的になったので冒頭の怒りをぶつけたのでした。
しかし、自分ひとりがイライラしているとは思われてはいけないので、必ず同意を求めます。
それが、同じくあおりを食った私ではありますが、こんなときに同調していてはギャンブラーの資格はありません。
こんな日は大漁になる可能性が高いのです。私の答えはこうです。
「私は迷惑とは思っていませんよ。(ヘボに向かって)楽しく打ちましょう(ニコ)」
ヘボはヘボです。どの道負けますので、止められてはたまりません。是非とも卓に残ってもらうのです。
そうなれば後はAさんのワンサイドゲームにしなければいいだけです。
これでオヤジは余計にイライラしてドツボにはまります。ただしあまりイライラさせてこれも止められては
困りますので、こういう提案をしました。
「それなら1度だけ場替えしましょう。」
ということで場替えの提案をしました。Aさんとしてもここまでマイナスのワタシの提案ですのでむげに断るわけには行きません。そうしてなった座順がこれ
-----------ヘボ
オヤジ -----|-----Aさん
----------ワタシ
これで甘い牌が鳴けるとオヤジはホクホク顔ですが、そうは問屋がおろしません。
ワタシが2枚持っている牌をヘボが捨てたら、ことごとく鳴きました。
上がれる上がれないは二の次です。目的はオヤジを完全に殺すことだけ。
3半荘ほど捨てるつもりでしたけど、思ったより効果は早く現れました。
1半荘するまえにオヤジが完全に切れてしまったのです。
そうなると、もう大物手ばかりを狙うようになります。特に1色手が増えます。当然ワタシへの絞りもなくなりますし、
オヤジ自体の鳴きも増えるので自然とワタシのツモも増えます。
ワタシは後は、Aさんから適当に山越しであたればいいだけです。我ながらうまく行ったと自画自賛です。
実はオヤジはこの店では勝ち組といわれています。技術的にはヘタではなく、むしろうまい部類に入ります。
しかし、このようにカッカしやすいので、私にはほとんど負けています。他にも、冷静な人には
ほとんど負けています。勝っているのはヘボか同じようなアツくなるオヤジ同士のときだけ。
ポーカーフェースといいますが、ギャンブルは感情が吹き出したら非常に不利になります。
アツくなりやすい人は、特に対人ギャンブルではほぼ100%完全に負け組みです。
技術云々、運云々ではなく自分の感情のバランスを崩して自滅してしまうのです。
感情の起伏の激しい人は、ギャンブルをやってみるのもいいかもしれません。
わきあがる感情を浄化するのは結構訓練がいります。
これは感情を押さえ込むのとは違います。
具体的には
心のデトックスというのが必要です。