国田健 -クラリネット・バスクラリネット覚え書き-

国田健 -クラリネット・バスクラリネット覚え書き-

オランダでクラリネットに加えて特にバスクラリネットの専門家として活動しています。また同時に日本のベンチャー音楽出版社ミューズ・プレスの一員としても活動しています!詳しいプロフィールは→https://ja.kenkunita.comからどうぞ!

Amebaでブログを始めよう!

ほぼ毎日ホラーク氏について記事にしているのですが、よく考えたら彼の音源を紹介したことがないことに気づき、今日はネットにある音源のうちの1つを紹介できたらと思います。

 

「組曲」 ビオラとバスクラリネットのために /Jirí Matys(ジリ・マティス・1927 - 2016)

 

Jirí Matysはフランシス・ミカレック音楽院でオルガンを学び(1947年に卒業)、その後ヤナチェック音楽院で作曲を学んでいます。卒業後は同音楽院の作曲科でアシスタントを務め、ブルノ音楽院でも長年教授を務めていました(1969年-1977年)。

 

この「組曲は」1976年に作曲されており、彼は以下の2作品もバスクラリネットのために作曲しています。1曲目はタイトルにデュオ・ボエミのためにと書いているので明らかにホラーク氏の為に書かれていますね。2曲目の方もC管、G管のフルート、ギター、バスクラリネットとかなり変わった編成です。

 

Music for Due Boemi. 3 compositions for Bass Clarinet and Piano
Poetic Movemets No. 4 for Flute in C and G, Clarinet (Bass Clarinetú and Guitar)

 

肝心の音源ですが紹介するのは「組曲」の4楽章です。何故この楽章かというとホラーク氏の特徴が良く表れていると思ったからです。非常に透き通った音で、彼の大好きな最高音域が存分に使われています。音色、鋭いアーティキレーションもビオラの非常によくマッチしていると思います。他の楽章も非常に面白いので機会があればこの曲も是非演奏したいと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

懲りずにホラーク氏関連の記事ですが、今日はマルティヌーのソナチネについて書いてみようと思います。彼のソナチネはクラリネットの曲として有名なので知っている人も多いと思いますが、これもホラーク氏の為に編曲されています。マルティヌーはホラーク氏の為にバスクラリネットソナタを作曲する約束をしており、それが完成するまでとりあえず、という形での編曲だったのですがマルティヌーはバスクラリネットソナタを作曲する前に他界してしまい、結局このクラリネットのソナチネの編曲版がバスクラリネットで繰り返し演奏されることになっています。

 

曲そのものの解説はインターネット上に溢れているのでここでは触れませんが、ホラーク氏がどのように編曲したのかについては少し触れてみようと思います。正式にはマルティヌーの編曲なのでホラーク氏の編曲というと少し語弊があるように聞こえますが、録音を聴いた限りではどちらかというとホラーク氏が変更箇所を提案したように思えます。

 

例えば以下の[ ]で示した部分はオクターブ上げて演奏されています。この箇所はcatabileの指示があり、またその後に低音のBに戻った時に表情が大きく変わるために演奏効果は非常に高いですが、通常使用される音域ではなく、この変更は非常にホラーク的であるように思えます。

 

ちなみにこのCDは1993年に制作されていますが録音自体は1972年のものです。CDが開発されたのは1979年なのでこの録音はほぼ確実にLP用であったことが推測できます。そして当時のチェコの情勢などを考えると恐らくLPの一発撮りではないかと思います。実はこの録音、あと少しでミスになる!みたいな箇所もチラホラ見受けられるのですが、ホラーク氏はそれでも高音域の多用などリスクを恐れずに演奏しています。この録音に限らず、こうした一発撮り、それに近い状況で行われた昔の録音は非常に臨場感があって面白いと思います。現代では編集技術も発達して、素人でもかなり高品質の録音が可能になりました。その反面、人間的な一面が失われるのは少し悲しい気もします。

 

 

 

今回はLuboš Slukaのバスクラリネットのソナタについてです。

 

これは初期に書かれたバスクラリネット曲の中でも自分のお気に入りの曲です。

前回、前々回と同様にチェコ人、彼らと同世代の作曲家、ホラーク関連の曲ですがこの曲はやや異なる雰囲気を持っています。この曲は素朴で、なにより美しいと思います。

 

スルカ(1928年、9月13日)はチェコのオポチュノの小さな町の生まれです。オポチュノは非常に自然が豊かな町で、彼は幼少期から合唱、演劇、オーケストラと様々な芸術に触れていました。曲中に感じられる素朴さは彼のこうした生い立ちが大きく関係しているとも言われています。

(写真はWikipediaより引用)

 

また第二次世界大戦後になって初めてロコフィエフ、ストラビンスキー、オネゲルなど、国外の作曲家の作品を初めて目にする機会を得ました。こうした出会いは彼の作風に大きく影響を与えたと言われています。1951年にはフランス6人組の一人、アルテュール・オネゲルの学生に選ばれ(パリ行きは政治的理由で中止となっている)、チェコ、ロシア、ポーランドなどで作品が入賞するなど国際的な活躍をしています。自分の知る限りではまだご存命のはずです。

 

肝心のバスクラリネットソナタですが、作曲されたのは1971年で同年に作曲されたファゴットソナタの編曲という形だったと思います。タイトルの上部にはプラハ音楽院時代の恩師である”Jaroslav Ridkyに宛てて”という記載があります。

 

 

曲の中間部にはホラークの指示で1オクターブ上げて吹いても良いという書き込みがありますがは自分はオリジナルの方が好きです。非常に素朴なメロディーと美しい和音が心にしみる曲だと思います。一音一音大切に吹きたくなる曲ですね。ちなみ2楽章もあるのですが自分は1楽章が好きで1楽章のみを抜粋で何回か演奏しています。

 

(2020年6月の演奏より)

 

また彼は他にバスクラリネットのための作品を残しています。

Sonata for bass clarinet and piano (1971)

D-S-C-H for bassclarinet and piano (1976)

Con animo for bassclarinet or violoncello and piano (1986)

Andante con moto for bassclarinet and piano (1989)

Songs and Ballads from Kladsko, for bass and piano (1984)

 

自分も全ての楽譜を持っているわけではないので、今後入手できるように調べてみようと思います!