今回は「会社が土地建物を売却するとき」についてお送りします。
会社が土地や建物を売却する場合、他の売上や経費と一緒に利益計算をして、その利益に対して法人税がかかるのが原則です。
例えば、通常の経常利益が▲20百万円の会社で、そこに土地売却益が50百万円ある場合、最終の税引き前利益は30百万円になりますね。
つまり、土地売却益50百万円があっても法人の利益が赤字であれば、相殺されることになり、その分税額が低くなります。
そのため、法人の利益が赤字であるような年度、または過去の累積損失があるような場合には、土地売却益の計上というタックスプランニングがあります。
また逆に、会社で多額の利益が出ているような場合には、土地売却損の計上があれば、損益が相殺されて納税額を抑えることができます。
但し、ここで注意点があります。
それは、会社の土地建物で売却益・売却損が出て、法人税に影響が出る場合は、「売買の実態・形式」をしっかりと整える必要があることです。
特に関係会社間で土地を売買するような場合は「故意に」税金を減らした、と見做されるリスクが高いので注意が必要です。
このような関係会社間で土地売却損を計上した件につき取引の実態がない、として争った裁決があります(平成11年12月22日)。
その事実関係は次の通りです(実際の事案はかなり複雑なのですが、要点を簡素化しています)。
○A社は関係会社であるB社に対して、土地を売却し、多額の売却損を計上した。
○その事業年度のA社は土地売却益を除くと、多額の黒字決算であり、結果として法人税が大きく節税されていた。
○上記土地売買に関わる売買契約書、代金の支払、所有権移転登記はしっかりと行われ、売買の形式は整えられていた。
○但し、土地には買戻し特約が付されており、将来買い戻すことが予測される。
上記の事案に対して、税務署の見解は次の通りです。
○AB間での土地売買は経済取引として不自然な点が少なからず見受けられ、経済取引として合理性を欠く。
○AB間の土地売買には買戻し特約が付されており、利益操作が目的であり、土地の譲渡損の計上が目的である。
上記の理由から、税務署はこの土地売買取引は仮装取引である、としてその譲渡損を否認し、重加算税を課す処分をしました。
これに対して納税者は取引は適切なものであり、取引の形式はしっかり整っている、との主張をし、争った事案でした。
結果として、この事案では納税者の言い分が認められ、重加算税などの処分は取り消されることになりました。
その裁決事由としては、「売買契約書等の書類が完備され、代金の支払い、土地の引渡し及び所有権移転登記がいずれも実行されているよう本件の場合においては法を潜脱するための手段であることが明白でない限り、関係法人間の取引であることをもって、直ちに利益調整のための仮装取引とみな」すことはできない、というものでした。
また、この事案では取引に至った経緯を、納税者は取引金融機関からの強い勧告、指導があったことを説明していました。
いかがでしょうか。
ちょっと複雑な事案ですが、次の2点は覚えておいたほうがよいと思います。
まず1点目は、このケースは税務署から一旦は否認されるという、かなりリスクが高い内容であり、その理由は節税以外の経済的合理性をしっかりと明示できなかったことにあります。
経済合理性を欠く取引は当然に否認の対象となりやすいので、多額の法人税を節税するようなケースでは、取引に至る経緯をしっかりと説明できる必要性があります。
なぜ土地売買をしなければならないのか、を節税目的ではなく、実態経済の経済合理性から説明できる必要がある、とういうことですね。
もう1点は、売買の形式を常にしっかりと整えておく必要がある、ということになります。
このケースでも納税者の言い分が裁決で通った理由は、売買契約書、登記、代金の支払い等、形式面がしっかり整っているからでした。
売買をした、ということは、まず形式面からも判断されます。
こういう形式面からも判断される、というのは税務の基本的考え方のようなところでもあるので、どんな内容でも形式をしっかりと整えておくのは重要なことになります。
ここも十分注意してくださいね。
実態面と形式面をしっかりと整える、これは法人間の土地建物の売買に限らず税務では常に重要なこととなります。
ただ、土地や建物の売買は特に金額が大きいため、注目を集めることがあると思いますので、十分ご注意ください。
