「じゅーん」
「・・・」
「・・さっき、責める資格ないって自分で言ってなかった?」
「・・責めてないもん」
「じゃあなんで」

さっきから頑なに服を脱ごうとしないの?

「無理やり脱がして欲しいとか?」
「そんなわけないでしょ」
「・・・」

・・え、まさか
ここに来てさらにオアズケ?
そんなバカな。

「・・あの、潤」
「だって」
「ん?」
「・・明るいんだもん・・」
「?・・カーテン閉めてるよ?」

それでも若干明るいけど
まだ昼前だもん、仕方ないじゃん。

「・・恥ずかしくない?」
「・・、何で」
「何でって・・、ひ、久しぶり、だし」
「・・・」

ん?
これはもしかして・・

「照れてんの?」
「・・そんなんじゃ」
「ふーん?(ニヤニヤ)」
「ち、違うってば!」
「んじゃ着たままスる?」
「・・バカ」
「ふふ。可愛い」

そっか。
恥ずかしかったのか。
そういやさっき帰ってきた時もメシの話ばっかしてたけど、あれも照れ隠し的な?

なら遠慮なく♪
唇にちゅっとキスをして、潤のシャツに手をかけようとするけど
ガシ、とその手をブロックされる。


「・・、ちょっと」

頑なな潤の抵抗に、短気な俺はだんだんイライラしてきて

「・・マジでなんなの?」
「だって。・・俺、もう32だよ?」
「知ってるよ。それが何?」
翔くんはこれまで若い女の子の裸ばっかり、13人も見てきたんでしょ?俺なんかただでさえ男なのに、そのうえ」
「なんだそんなこと?」
「・・そんなことって」
「そんなの気にしてんの?・・くだらねえ」
「・・・」

ダメだと思っても、あまりに的外れな潤の言動に
頭のどっかが切れる音がする。

「何回言えばわかんの?
俺は潤の身体がいいんだよ。
7年間、ずっとコレが欲しくて欲しくて仕方なかったの。
13人だよ?あれから13人と付き合ったのに、それでも潤じゃなきゃ駄目だったんだ」
「・・翔く、」
「17歳のあの夏、あのジャングルみたいな部屋で初めて潤を抱いて
そっから毎日毎日、何時間でもセッ クスしたよな。
あんな強烈な経験させて、そんで急にいなくなって。残された俺がどんだけ苦しんだかマジで解ってんの?
若くて健康で、溜まるもんは溜まる。でも潤じゃなきゃダメで
もう二度と会えないのなら、早く忘れたかった。
だから違う女と付き合って、それでダメならこの子、ダメならコイツって、その繰り返しで
抱いてる最中に潤を思い出して、イ く寸前に潤の名前を呼んだこともある。女っぽい名前だし、激ギレされたことも一度や二度じゃない。
だけどそれ以上に罪悪感がハンパなくて・・、そりゃ続くわけないよな。
13人てのはそんだけ俺が潤を忘れようと足掻いた結果だ。
彼女達には悪かったと思ってるよ。
だけど、俺をこんなふうにしたのは潤だろ!?」

「・・しょおくん・・」

一気に捲し立てて
震える声にハッと我に返ると、潤が哀しげな顔で俺を見ていた。

しまった。
こんなこと、潤に言うつもりなかったのに・・

「・・ごめ、」

二宮の呆れ果てた顔が頭を過ぎる。

「翔くん・・」
潤が震える手で俺に触れて
「ごめん、なさい・・」
「・・違う、ごめん。謝って欲しいんじゃない」
「翔くん、」
「悪かった。違うんだ、こんなこと言いたかったわけじゃ」
「・・違わないよ」
「・・、え?」
「言ったでしょ?自分が怖かったって」
「・・?」
「頭ではこんな事ダメだって解ってるのに、心と身体はどうしても翔くんが欲しかった。
あの頃の俺は、頭と心と身体がバラバラで・・
自分から居なくなると決めてたのに、どこかで忘れないで欲しいと願ってたんだ」
「・・潤」

「思い出した。
翔くんに抱かれながら、何度も俺を忘れないでって心の中で叫んでたこと。
本当はずっとこのまま、俺のことを好きでいて欲しいって」
「・・・」
「俺はあの夏、翔くんに呪いをかけたんだ」


怖かった。
潤がいなくなって
それでも潤を想ってひとり自分を慰めていたあの頃。
自分はいつまで、あの美しい人を想ったままなのか

目を閉じれば潤の瞳が
俺を呼ぶ甘い声が
長い指が自分の肌を辿る感触まではっきり憶えていて
俺はいつまでこのまま、もう二度と会えない潤に囚われたままでいるんだろうかと怖くなった。


「・・アレ、呪いだったの?」
「そう。自分でも気づかないうちに、翔くんに刻みつけてたの。
一生消えない傷痕を。・・怖い大人でしょ」
「・・そっか」

そうだったのか。
だからいつまでも消えなかったのか。

「・・酷いな」
「ごめんね?」
「許さないよ。一生」
「・・うん」
「だから一生償って」
「・・、うん」

深いキスをして
潤のシャツの中へ手を滑り込ませる。

白い肌を露わにし、胸 の尖 を弄 って
溜息のような甘い吐息を溢しても

潤はもう、抵抗しなかった。