「いらっしゃー・・、あれえ、しょーちゃん!」

潤を連れて来たのは、近所の中華料理店。
ここは大学の仲間うちでも旨いと評判の店で、友人の雅紀の実家でもある。

「よ。2人だけど席ある?」
「あるよー!ね、友達?超イケメンだね!
ちょっと待ってて準備してくるから!」
一気に話すとバタバタと駆けて行った雅紀の忙しそうな後ろ姿を眺めながら

「翔くんの友達?」
潤が尋ねてくるから
「そう、大学のね。
ここ、あいつの親父さんの店で雅紀のヤツ春休み中こき使われてんの。
ここの小籠包激ウマだから!」
「へえ。楽しみ」

奥のテーブル席に通されて、とりあえず小籠包と餃子、あとは点心をいくつか。
「それとビール・・あ、潤は無理か」
「うん。気にしないでどうぞ」
「ま、俺もこないだハタチになったとこだけどね」
お言葉に甘えて、生ビールを頼んで
「乾杯ー!明日試験頑張れよ」
潤の烏龍茶とジョッキを合わせる。
「ありがとう翔くん」
ニコニコしてる潤はやっぱり可愛い。

「はー・・潤と酒飲む日が来るなんてなあ・・」
「いや、俺は飲んでないからね」
「そういや明日試験終わったらそのまま帰んの?」
「ううん。大野さんのとこ寄って帰る」
「智くん家?・・へえ、連絡取ってんの?」
「まあね。翔くんも一緒に行く?」
「あー、俺はバイトあるからなあ。
よろしく言っといてよ、また遊びに行くって」
「うん」

智くんも潤と同様実家が近所で、昔は俺たちとよく一緒に遊んでくれた一コ上の幼馴染だ。
今は都内の美大に通っていて、俺が受験の時も色々と助けてくれた。
穏やかで面倒見のいい智くんのことを、俺も潤も大好きで、さとにいさとにいと慕っていたけれど
今はお互い住んでる所が微妙に遠くて、入学してからはなかなか会えてなかったから、潤が今でも連絡を取り合っていたなんて全然知らなかった。

俺とは2年間音信不通だったのに・・
なんて自分のせいでそうしておいて、ちょっと拗ねたような気分になるなんて

ほんと自分勝手だな・・、俺。

{EBE3C092-AE9C-4F4B-99FB-68D08ED40E0E}

いい感じにお酒が入ると、再会してからどことなくぎこちなかった雰囲気が解けていく。

「なあ潤が受験するのって、どこの大学?」
「恥ずかしいから合格したら教えるよ」
「結果、ちゃんと連絡してこいよ?」
「うん。・・でも俺、翔くんの連絡先知らないんだけど」
「あ、そうだった。ったく母さんも不親切だよなあ」
とりあえずLINEと電話番号を交換する。
潤の電話番号は変わっていなかった。


途中で雅紀が
「サービスだよ〜」
餃子とビールのおかわりを持って乱入してきて
「ねえねえ、友達紹介してよ〜?」と煩い。
「ハイハイ、こっちは潤。俺の幼馴染。
潤、大学のツレの雅紀だよ」
「初めまして。松本潤です」
「わー、近くで見たらマジで綺麗な顔してるね」
「いや、何座ってんだよお前」
「いいじゃん、休憩だよ」
「ちょっ、ビール飲むなよ仕事中だろ?」
「ちょっとだけちょっとだけ!ねえ、潤くんは飲まないの?」
「こいつはまだ高校生だから飲めません!」
「ええ〜?翔ちゃんだって入学した時から飲んでたくせに〜」
「わ、やめろ雅紀!」
「・・・」

潤が目をまるくして見てきてる。
「ちが、違うぞ潤。あれはつまりその場の勢いで・・」
「ふふ。なんか、俺の知ってる翔くんとは違うね」
「へえ?潤くんが知ってる翔ちゃんってどんなの?」
「どんなって、落ち着いてて真面目な・・」
「へえ〜、今や金髪ピアスなのにね」
「・・・」
「しかもね、こないだヘソにもピアスを・・」
「わー!もうお前黙れ!ほら仕事に戻れって」
「何だよ、ケチ!
あ、そうだ、しいちゃん達との旅行の件考えてくれた?」
「それはまた今度話すから!」
「も〜、翔ちゃんがつれないからしいちゃん寂しがってたって、玲奈が言ってたよ?」
「ちょ、マジで黙れって、仕事しろ仕事!」
潤の前で、聞かれたくないような話ばっかする雅紀を無理矢理追い出した。


「・・ごめんな、あいつ騒がしいだろ」
謝ったら、黙って烏龍茶を飲んでいた潤が
「しいちゃん、って?」
「へ?・・ああ、椎名ね。雅紀の彼女の友達だよ」
「ふうん」
「それで・・えっと、何の話してたっけ?」

焦って話を戻す。

その椎名に、こないだ告白されて
ちょっといい感じになって、もうすぐ付き合いそうだなんて
そんな話、潤には聞かせたくなかった。

ーーー

ほろ酔いで家に帰って
「あー、腹いっぱい!」
かなりいい気分でベッドにダイブする。
「ふふふ。翔くん、酔ってるね?」
「ええ〜、あんな生中3杯くらいで酔うかよ」
とはいえ、みるみる睡魔に襲われるのはやっぱり酔ってるせいか・・

「あー、このまま寝てえ・・」
「そうしたら?俺、今夜はソファ借りるね」
ハッ。
「ダメダメ。お前明日本番なんだから!
ちゃんとベッドで寝ろ」
「大丈夫だって」
「ダメだって、ソファなんか。
俺も昨日全然熟睡出来なかったんだか・・、あ」
「やっぱり。ゴメンね?俺のせいで・・」
「や、違、そうじゃなくて」
「翔くんの部屋なんだから、ベッドで寝て?」
「だからダメだって、お前こそベッドで寝ろ」
「・・じゃあ、一緒に寝る?」
「は?」
「そしたら2人ともベッドで眠れるじゃん」
「・・え、っと・・」
「そうだ、アレしてよ。おまじない。
明日の試験、頑張れるように」
「・・・」

・・あれ?