憲法改正無限界説と憲法改正限界説

多くの近代的な成文憲法には、その内容として、憲法自体の改正手続を定めている。この改正手続に従って行われた憲法改正は、法的に正当なものとして承認される。もっとも、この手続に依ったとしても改正し得ない、「憲法改正の限界」を憲法に明記してあるものもある。また、このような憲法改正の限界が明記されていない場合にも、憲法改正を憲法全体に及ぼすことができるのか、それとも法理上一定の限界があるかについては、学説上争いがある。これが、憲法改正無限界説と憲法改正限界説との争いである。

憲法改正無限界説によれば、憲法改正手続に従った改正は、いかなる内容への憲法改正も法的に正当化される。これに対して、憲法改正限界説によれば、憲法改正手続に従った憲法改正といえども、改正前憲法の基本原理・根本規範を改めてしまうような改正は、改正前憲法によっては法的に正当化されないとされる。もっとも、改正前憲法によって法的に正当化されないからと言って、新憲法が当然に無効な憲法となるわけではなく、新たな原因によって正当性の理由付けが求められるに過ぎない