私の初恋は、おそらく3歳くらいのときです。
「一目惚れ」などという言葉さえ知らない、幼かった頃の情景がはっきりと記憶に残っています。
保育園に通っていたのですが、そこに後から入園してきた女の子がいました。
その子を見た瞬間、私は恋に落ちたのです。
「かわいい。かわいすぎる。」
身悶えするような気持ちを、どう表現したら良いのでしょうか。
それから私は、ずっとその子のことが好きでした。
でもその子に、「好き」と言えなかったのです。
その子の関心を引きたくて、わざと意地悪をしたこともありました。
小学校の頃は、よくその子の家に遊びに行きましたよ。男女のグループで遊んだのですけどね。楽しかったなあ。
中学校は1学年2クラスだったので、学内でよく会いました。
ただ、接点はだんだんと少なくなりましたね。
その子は、バレーボール部。県内では強豪だったので、遅くまで練習していました。
一方の私は弱小野球部。日が落ちれば練習は終わりですから、いつも私の方が先に帰宅したのです。
家が中学校に近かったので、いつまでも明かりがついている体育館が見えました。
「まだ練習しているんだろうな。」そう思うと、居ても立ってもいられません。
バレー部の練習が終わるまで、私も家の庭で素振りをすることにしました。
それだけの情熱を持って恋焦がれていながら、「好き」の一言が言えないために、想いはまったく伝わりませんでした。
卒業前になって、何とか想いを伝えたいという気持ちが強くなりました。
そこで私がとった手段は、交換告白です。
親しい友達と、お互いに好きな相手に代わりに告白してあげるというもの。
なんともはや、今から思えば愚劣の極致ですね。
結果は言うまでもなく、友だち共に砕け散りました。
もっと早く、ただ「好き」と言えば良かったのに。
今ならそう思いますが、そのころは言えなかったのです。
断られるのが、怖くて仕方なかったから。
純情だったと言えばきれいに聞こえますが、自分に自信がなかったのです。
不安で不安で仕方なかったのです。
内気で、人見知りする、気の弱い軟弱男。それが私です。
まあでも、そのお陰で今があるとも言えますけどね。