母の葬儀から、初めて私は父や母を介さずに親戚の方達と直接会話した。

私は親戚はみんな私を押さえつけるだろうと思っていた。
私が何か父の気に入らないことをした時、父の口で相談された誰かが私を説得に来たり、あなたは良い子だったはずなのにどうしてそんな事したの?って電話がかかってきたりしたから、私は自分の意見は世の中の全ての大人から見たら悪い事なんだと思い込んでいた。
親を否定する言動は許されないと思いながら、本当にそうなのか?本当にこんな辛い思いをしなくちゃいけないものなのか?間違っているのは、自分か世の中かって極論に苦しんだ。
悩んでも外に助けを求めるのは恥なのかもしれないし、否定されるに違いないと思ったし、家族の中でも外に家族の揉め事を話すのは恥だから辞めようみたいな空気があったと思う。

私の世界は狭かった。私は両親としか話していなかった。私が見てた外は両親が見せた外であり、両親の翻訳した話を外の人も私も信じていたんだと思う。父だって自分の味方になってくれるような人にしか話すわけないよね。

だから、初めて話した親戚の意見は思ってもないことばかりだった。
若いあなたがこんな田舎で年老いた父の介護に明け暮れて独身で暮らす必要なんかない。
あなたはあなたで幸せになるのが大切だよと言ってくれた。
私は本当にびっくりした。
父はずっとお前が俺の面倒をみるんだ。金だしてやったんだから。それがすじだろ。
って言っていたから、きっとそう言われるって思って身構えていた。

私は多分、そこでやっと大人への出口を見つけたと思う。
30歳で母をなくして始めて。