報告 講演会全ての原発の再稼働を止めるために
国連・憲法問題研究会講演会
全ての原発の再稼働を止めるために
杉原浩司
3月15日、国連・憲法問題研究会講演会「全ての原発の再稼働を止めるために」を都内で行いました。講師は同じ国連・憲法問題研究会の仲間でもある杉原浩司さん(福島原発事故緊急会議、みどりの未来)。
最初にニュースの映像をやる予定でしたが、機械と合わなくて再生できず。そして、この間、傍聴行動で活躍している杉原さんは、前半で下記のような講演を行いました。
大飯原発が焦点
原発再稼動問題では関西電力大飯原発3、四号機が最初に再稼動されようとしている。それに対して、保安院の意見聴取会の傍聴、アクションなどに取り組んできた。
3・11アクションのメイン課題も再稼動反対。国は再稼動を目指して、3月中に地元のおおい町・福井県の同意を取ろうと、猛烈な働きかけをしている。3月後半の二週間が再稼動問題を左右する。市民がどういうことができるかが大事。
今日(3月15日)の時点で再稼動問題はどうなっているか。再稼動に向けてはストレステストというコンピュータシミュレーションを電力会社がやったが、シミュレーションだから、数字はいくらでも作れる。実際の作業は原発を作った三菱重工がやっている。
原子力安全・保安院は専門家を集めて、その意見聴取会を行った。そこにできた報告書を次々あげて議論をして、ある程度議論ができたと保安院が判断したら、勝手に議論を閉める。
そして、審査結果が妥当であるという大飯原発3、4号機の審査書が原子力安全委員会にわたっている。
原子力安全委員会は例のデタラメさんこと斑目春樹が委員長で五人からなる。それに外部有識者6人を加えた11人で検討会を五回開いた。
第五回検討会が3月13日で、翌14日の朝日新聞に大きく報道された。この日は別室のスクリーンで見る『傍聴』で初めて締め出された。僕らは抗議したが、職員、ガードマンが十人くらい立って通さない。
傍聴者を締め出して検討会を終えて、安全委員会が見解をまとめて出す。
二次評価を出さない保安院
再稼動に対して、反原発運動で声明「原子力安全委員会は大飯原発3、四号機のストレステスト一次評価を差し戻すべし」を出しました。
菅首相(当時)が浜岡を止め、海江田が佐賀県知事・玄海町長の了解を取ったとして再稼動で突破しようとした。ストレステストをやることになって、定期検査で原発が次々止まることになった。
そして、保安院の裁量で一次と二次のテストの区別ができた。一次は定期検査の原発。二次は全ての原発にかける評価。
一次評価は地震・津波が襲ったときにどの程度の揺れならメルトダウンが起きないかをはっきりさせる。
二次評価は過酷事故が起きたときに事故を拡大させないということまで想定する。
保安院は昨年中に二次評価を出せと言っていた。ところが、いまだにいつ出るか判らない。
これは保安院の策略で、二次評価を出してしまうと大変で、住民がどれくらい被爆するかというデリケートな内容。出てしまうと再稼動が難しくなる。だから、出さないで止めている。斑目委員長は、二次評価がないと安全審査として不十分だとはっきり言っている。波紋を呼んでいるが撤回していない。
だから、一次評価だけで安全評価でないというのが問題点の第一。
第二の問題点は活断層の連動を考慮してない。日本列島全体に活断層がある。浜岡も六ヶ所も泊も伊方も。
大飯原発でも陸の断層と海の断層が連動する。保安院が3・11の前からやっていた耐震バックチェックの前提の数字が甘かった。このことが保安院の別の意見聴取会で専門家から問題になっている。判断の前提が崩れる。
第3は津波。大飯の津波の想定は11・4メートル。福島で元の想定より9・5メートル高い津波が来たから、大飯でも9・5メートル足した。シミュレーションがいらない。これだけ見てもデタラメ。
しかも、津波は入り江など陸地に近づくと高くなる。ところが、保安院は『想定していません』と平気で言う。
第四に福島原発事故の検証を待つべきだ。誰にでも解る話です。この安全評価で福島級の事故が起きても安全と保安院は言い張っている。だが、事故調査は始まったばかり。国会事故調査委員会も政府事故調査委員会も報告書を出していない。立法府の事故調の結論も出ないうちに、事故を引き起こした保安院、安全委員会がゴーサインを出すとは茶番劇もいいところ。
第五に安全委員会で事故が起きた時のアクセスルートなどについても、保安院はこれからやります、二次評価でやりますという回答を連発する。サボり放題。
傍聴締め出しの問題性
第六に傍聴者締め出しの問題。傍聴は民主主義最後のセーフティネット。3・11が起きても原子力ムラのシステムは何も変わっていない。意見聴取会や審議会の人選の多く、文案の取りまとめなどは原発を推進してきた官僚たちが相変わらずやっている。脱原発に行くはずない。原子力ムラを解体しなければ覆せない。
傍聴は、市民がこれまで野放しにしてきた審議会などにかけつけて監視し時には野次る。そうでないとレールのまま進んでいく。
1月18日が保安院が初めて締め出しをしたときに、僕らは会場に行って3時間半遅らせて、保安院は締め出しのまま別室開催した。この問題が広く明らかになって、保安院は墓穴を掘った。
保安院は締め出しのまま終わりにして、安全委員会は五回目で締め出してきた。この問題は日本の民主主義のレベルを示している。米国原子力規制委員会では傍聴の規則を決めていて、小さいポスターなどを出せる。
文科省の原子力災害紛争審査会も何度も野次を飛ばしたら、その人だけ退席させられる。保安院・安全委員会は一律締め出しで知る権利を奪っている。
第七に自治体、市民の声を聞くべきだ。そもそも当事者はおおい町・福井県知事だけではない。住民はもちろん、福島を考えれば、京都も滋賀も影響を受ける。地元了解を広げなければならない。
ところが、野田政権は知事とおおい町長だけ落とせばいいという腹つもり。首長たちが求めているように、放射能の影響を受ける自治体と安全協定を結ぶべき。
そして、重要法案と同じように、全国で公聴会を開いて市民の意見を聞くべきだ。
原発ゼロを実現しよう!
だから、再稼動しようとしている野田政権は民主主義ではない。朝日新聞世論調査(3月十ー十1日)によると原発運転再開反対は五七%、賛成二七%。女性では反対六七%、賛成1五%。読売調査でも反対の方が多い。
政府の一年間の説得工作は失敗した。しかも、朝日調査で政府の安全対策が信用できるかで八〇%が使用できない回答している。
今は大きな山。これほどの状況で再稼動するというのなら、電話、ファックス、メールをはじめできることをなんでもやらなければならない。
再稼動問題はようやく海外にも伝わるようになったが、外国の人は稼動が五四機中二機だけと聞くと、日本は大丈夫か停電が頻発しているのではないかと聞かれる。
そんなことない。不要な照明が点いていて、トイレの便座は暖かい。それで再稼動したいというのは、もうけ・利権しかない。
あれだけの事故で十数万人を故郷から引き離して家族をバラバラにして、子どもを被爆させている。それなのに利権のために再稼動しようとしている。
3月26日東京電力柏崎刈羽原発6号機が止まり、5月上旬には泊原発が止まって稼動原発はゼロになる。
ゼロになれば、原発なしで大丈夫ということが誰の目にも明らかになる。
ゼロにすることは、日本の市民にとって大きな自信になる。利権を持っている人から見れば、ゼロから一にするのは大変。
そして、政府が夏に作ろうとしているエネルギー基本計画では脱原発を盛り込むべき。原発のリスクを地方に押し付け続けると言うのは不公正。早くなくすために、再稼動を止めて原発ゼロを実現する。
五月上旬には、原発ゼロを祝うアクションを世界に呼びかけることができるように、まずは今月中をがんばりたい。皆さんと行動して、何とか再稼動を止めて原発ゼロを実現したい。
以上の講演に続く質疑応答では、4月発足予定が延びようとしている原子力規制庁の見通しと、その人事をまともにさせなければならないこととメディアの問題点。緊急声明が求める保安院への差し戻しが可能なのかやストレステスト審査のあり方などの質問・意見がだされました。
杉原さんはそもそもストレステストに法的根拠がないこと。現在も安全審査の作業はJENSが下請けしており、それが改められなければ規制庁の意味がないこと。安全判断についての責任転嫁の構図を指摘。IAEAでさえ、周辺の利害関係者の同意が必要と助言していることなどを指摘。
ソーシャルメディア活用についても意見が出て、発言した人が流したMLを見てきた人もいました。