報告・福島第一原発事故とは何か | 国連・憲法問題研究会ブログ

報告・福島第一原発事故とは何か

福島第一原発事故とは何か
山崎久隆さん


5月29日、学習会「福島第一原発事故とは何か?」を行いました。講師は山崎久隆さん(たんぽぽ舎)。普段使っている会場は震災の余波で空いてなくて大久保になりました。台風による大雨というあいにくの空模様でしたが、予定通り行いました。山崎さんは図・写真を映しながら、下記の講演を行い、参加者は山崎さんの講演に熱心に耳を傾けました。
 
 原発震災が起きることは判りきっていて言い続けてきたのに、実際に原発震災が起きる前に原発を止められなかった。「市民運動の責任」を感じている。これからの私達の運動は、ともかく今ある原発を一日も早く停止する。
 震災の後、原発を延命させるための「停電」が行われた。「節電キャンペーン」によって常時6000万キロワット発電量がないと停電が起きるかのようにマインドコントロールされている。


 だが、予定通り火力発電所が復旧すれば5500キロワット。昨年夏でもピークは6000万キロワットを超えなかった。今の15%節電キャンペーンで5%や10%の削減は難しくない。それに電力会社は大口需要者=大企業と需給調整契約を結んでいる。これは需給が逼迫したら送電を止める代わりに料金を安くする契約。電力会社は、普通は3時間前、緊急時には1時間前に電力をストップできる。これで4400万キロワット。「電気は余っている」と反論していかなければいけない。


 3・11東日本巨大地震のメカニズムだが、4つのプレートがぶつかる日本列島は大地震が不可避。石橋克彦さんが指摘したとおり、これからは大地動乱の時代。このようなところで原発建設・運転はあってはならない。
 原発は13ヶ月で定期検査なので来年の春頃には全て停止する。運転再開を許さないことが運動の課題。法的には知事の同意は必要ないが、現実には知事の同意なしの運転再開は無理。泊原発が危ないという見方もあるが、知事の多くはそんな重い決断はできないと思っている。

 福島第一原発事故の1号炉から4号炉で原版震災が起きた。補償問題があるので、東電は「異常な自然災害」で壊れたとしている。原発が火力発電所と違うのは停止した後、外部の電気で冷やさないとメルトダウンの危険があること。東電の変電所・送電鉄塔が津波ではなく地震で壊れた。事故の原因は津波ではなく地震。第一原発での揺れは東電が想定していた揺れと同じ600ガル。だから、設計ミス・施工ミス・想定ミス。福島原発は欠陥品。過失ではなく重過失。


 外部電源がなくなって、東電は全国から電源車を送ろうとしたが渋滞で着けなかった。官邸はヘリでの空輸も検討した。東北電力の電源車が夜中に着いたが、配電盤は地下で水没していた。非常用発電機を空輸したが、第一原発はアメリカの規格でケーブルが合わず送電できない。時間を空費している間に水素爆発した。

 文部科学省の「SPEEDI」の放射能拡散予想図は実際の測定とほぼ一致している。ところが「パニックを恐れた」政府が4月まで公表しなかったために活用されなかった。

 このために、数値が低かった南相馬の人たちが数値が高い飯館に避難して、その後再避難した。二重三重に間違っている。公表されていればこういう事態は防げた。彼らは情報を隠して人をだますことしかしていない。

 今後心配されるのは海洋汚染。放射性物質で白血病・がんの原因になるのはストロンチウム90だが、2ヶ月経っても公表されていない。なぜ測られないのか。


 福島の汚染地域はチェルノブイリより面積は狭いが、高汚染地域は変わらない。福島の東は海で放射性廃液はきちんと測定されていない。放射性物質の放出量がチェルノブイリの10分の1という発表は疑問。今のモニタリングポストは大陸での核実験用に高い場所に設置されている。人間への影響を調べるためには地表と地上1mで測定するように自治体、研究機関に要求していく必要がある。



 質疑応答ではどうやれば原発を止められるのか、海洋汚染は大丈夫か、アメリカの原発の汚染はどうなのか、山崎さんなど民間の研究者の提案を東電などは受け入れているのかなどなど。最後に国連憲法研から福島原発事故緊急会議と6・11行動への参加を呼びかけました。
 
 終了後、喫茶店に行って、時間切れで聞けなかった点をお聞きしました。
 山崎さんは、国会で騒がれた海水注入中止については、そもそもメルトダウンして建屋が吹っ飛んでいるのだから、争点になるのがおかしい。

 現在は司令官不在。菅官邸が大本営。ともかく二〇三高地をとってこいというアバウトな命令を出して、現場が右往左往している。現場の管理職は限界まで被曝しているので、もうすぐ不在になる。9ヶ月で収束という工程表を官邸が作らせたせいで必要な作業が行われなくなる。まず高レベル汚染している瓦礫を片付ける必要がある。米軍の核戦争対応部隊はデータだけ取って帰っていった。

 校庭の土を除去した後、校庭の隅に積んでいるのは危険。コンテナに詰めて原発に送るべき。チェルノブイリでもコンクリートの建物の除染は難しくないが、山林や田の除染は難しい。イラク戦争時にイラクで採取したイラクの土の鑑定を日本の検査機関・大学に依頼したら、全て断ってきて外国の検査機関に依頼したことなどと話していました。

 講演について詳しくは今後発行する報告集をお読みください。

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