金管バンドのプログラミングについて3つの提唱 | 河野一之のブログ

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金管バンドのプログラミングについて3つの提唱

金管バンドのプログラムの歴史はオペラやオーケストラなどの

 

・管弦楽

・賛美歌

・軍楽音楽

・民謡

 

の作品を金管バンドのために編曲をし、演奏をされる事からはじまりました。

 

その後、このジャンルの芸術的価値を高めるため

・パーシー・フレッチャー「労働と愛」

・グスタフ・ホルスト「ムーアサイド組曲」

・レイフ・V ウィリアムス

・ギルヴァート・ヴィンター

・エリック・ボール

・エドワード・グレグソン

・ロイ・ニューサム

・etc

このような多くの偉大な作曲家たちによってオリジナル作品が生み出され、コンテストやコンサートで演奏され始めました。

その後、現代では管弦楽やオペラにとどまらず、ジャズやロック、ファンクに映画音楽など様々なジャンルの音楽が世界中のバンドで演奏されています。

 

またそれら様々な

・ジャンル

・指揮者

・バンド

 

それぞれのアイディアによって新たなエンターテイメントは作られつづけています。

そのような現在

母国、日本の金管バンド界にも様々なプログラミングに挑戦してもらいたいです。

そこで今日はプログラミングについて3つの提唱

 

もくじ

1、英国や海外のトレンドを取り入れたり、日本の作曲家に依頼する

2、色々な楽器を目立たせてみる

3、古典作品も取り入れる

 

1、英国や海外のトレンドを取り入れたり、日本の作曲家に依頼する

毎年11月イングランド北部にあるニューカッスルでブラス・イン・コンサート(Brass in Concert)というエンターテイメント式コンテストが開催されています。

約30分の持ち時間をそれぞれ与えられたバンドたちは、指揮者のもと優勝カップを争い本気のエンターテイメントに挑みます。

そのコンテストでは毎年新たに作曲をされた曲を使用したり、未出版のものを演奏することも多いので例えば今年2019年に演奏された曲をすぐ日本で行うというのは簡単な話ではなりません。

しかし、多くの作曲家は自分が発表したものを出版し販売することで生計をたてていますので1~2年たてば出版されているはずです、しかもこのコンテストは毎年DVDが発売されている+曲名と作編曲者名(完璧にではない)が記載されている場合が多いです。

なのでそれを元に楽譜を探すことができ、プログラムに加えられます。

イギリスで活躍しているバンドの「普段行なっているコンサート」へ日本から頻繁に足を運ぶのは難しいですが、DVDで欧州金管バンド業界の最高峰のプログラミングを学ぶのに送料入れても¥5,000もしません、とてもコスパがいいと思います。

World of Brass DVD

 

 

また今後強く望むのは、日本人の作曲家の方々にどんどん作曲や編曲の依頼をしてあげてほしいということです。

やはり作曲家や編曲家もタダで自分から金管バンドの作品を生み出すより吹奏楽や小編成アンサンブルのために創作をした方が売れやすいのも現実です。

なので我々からお金を支払い何度も依頼をし、金管バンド作品を作曲する技法や腕を身につけていただくのです。それが

 

・日本の金管バンド業界の発展につながります。

 

金管バンドを行う=日本円を英国ポンドや欧州ユーロに流出させながら海外の楽譜を輸入するのではなく、

地産地消で日本国内で機会を増やし、お金を回し、日式金管バンド作曲法や編曲法のノウハウを確立させなくてはなりません。

 

世界各地で行われているコンテストの課題曲に、邦人作品が現れたら熱いと思いませんか?

 

序文で書いた通り、初期の英国金管バンドがコンテストを行う際にオーケストラやオペラの作品を借りて演奏して居たのと同じように、今日本では海外の作品を借りて演奏をしていますが、素晴らしい作曲家、編曲家も多い母国の曲を増やしてもいいのではないかと思います。

 

僕は英国の大学院留学中に、作曲家学部一年にいた浜松生まれの作曲家"宮本貴奈"さんにソロ演奏で得た奨学金を渡し、国歌君が代や日本民謡を10曲ほど金管バンドのために編曲をしてもらいました。

そして大変幸運なことに大学にいた金管の生徒たち(コーリー、ダイク、フラワーズ、トラディーガー、シティ・オブ・カーディフなどの有名バンドにそれぞれ所属している)とコーリー指揮者のフィルに指揮をしてもらい試奏をしてもらうことができました。カーディフでみんなで吹いた君が代は一生の思い出です。

 

吹奏楽作品も日本の方々が日本人作曲家に作曲や編曲を依頼し研究をされ、今では世界中で法人作品が演奏されています。これは作曲家や編曲家の努力とその機会を与えた業界の力だと思います。真似をするわけではありませんが、素晴らしいレベルに花開いた日本の金管バンド業界も自分たち日本人の作品、日本の金管バンドの曲をもっと持ってもいいのではと思います。

 

ちょうど12月には日本曲特集として組まれた東京ブラスソサエティのコンサートも開催されるようです。

 

ぜひ

 

・作編曲家を育てるつもりで、機会を増やす

・どんどん演奏をし成功と失敗体験を繰り返す

・作品数を増やす

→質が上がる

 

という連鎖を生み出し日本の金管バンドを発展させましょう。

 

2、 色々な楽器を使ってみる

金管バンドは

 

・座席の位置を変える

・奏者の演奏する場所を変える

・楽器をフィーチャー(feature)する

・ソリストを立てる

・金管バンドに無い楽器や演出を使う

・etc

 

これらを使い楽器の種族が少ないゆえ単調になりやすい演奏会に彩りを添えます。

 

プログラミングを行う際に曲を選ぶのと同時に、これら上記のことも考えながら選んでみましょう。

 

例えば僕がお世話になっているNexusやRBBでは

 

・スコットランドのバグパイプ

・アボリジニの伝統楽器ディジュリデュ

・踊り

・歌謡ショー

・声を事前に録音し流すナレーション

 

NEXUS

 

 

 

RBB

 

 

 

など様々な事を行なってきました。

もちろんお客様には大好評です。

 

またコルネット全員で行うソリの曲を行ったり、打楽器を目立たせる曲を使ったりと聴き映えと共に演奏会の流れ自体にコントラストを加えるのはとても有効です。

 

金管バンドの曲の中には協奏曲だけではなく

 

ほぼ全パートそれぞれのためのfeatured piecesがあります。

 

またコルネットのために書かれたものでも他のパートで吹いてはいけないルールはありません。数年前のBrass for Japanで演奏されていたトランペット吹きの休日をベースパートで演奏するのはとても面白い案でした。

例:World of Brassの楽譜には各楽器別のFeatured Pieces

https://www.worldofbrass.com/sheet-music/brass-band/solos-and-features.html

 

僕が今憧れているのはパイプオルガンや合唱とのコラボ、更にアイリッシュバンドやミュージカル調、日本昔話の伴奏みたいなのも面白そうです。

 

まだ生まれて約2世紀の音楽、更に構成楽器か金管楽器と打楽器のみという

単調ゆえにアレンジのしがいはいくらでもあります。

 

ど定番はしっかり極め、時には奇を狙いお客様に金管バンドファンになって頂きましょう。

 

3、古典作品を取り入れる

現在大人気作曲家であるPhilip SparkeやPeter Graham、彼らの曲は世界中で愛され幅広く演奏されています。

 

もちろん”今”素晴らしい作曲家らの曲を演奏するというのはとても流行に乗っていますし、お客様からの人気も高いです。

 

しかし、そんな今人気で多大なる評価を得ている作曲家が勉強のもとにしてきたのが金管バンドクラシック作品です。

 

そのクラシックな作品を練習、研究をすることでより一層今に生きる作曲家たちの作品の理解にもつながります.またバンドのレパートリーを増やすのに加え

 

・日本の聴衆(お客様)の耳や感性を育てる

 

ことにもつながります。

 

近年、世界中のバンドのレベルも上がってきたことからコンテストのために作曲をされる作品の難易度が異常になっていた時期がありました。そんな時期、Edward Gregsonが2013年全英大会のために委嘱したのが「Of Distant Memories」です。古き良き金管バンドの音色とグレグソンらしいリズミカルで独特なハーモニーが難易度を上げた素晴らしい作品です。

 

声を公式にあげこの状況に危機感を募らせた指揮者や作曲家も少なくはありません。

 

オーケストラ業界では往年の名作で日々演奏されていますが、日本金管バンド業界ではそれが少ないように思えます。演奏されて1990年代に作曲をされた「ドラゴンの年」でしょうか

 

YoutubeのチャンネルにForgotten brassというチャンネルがあります。そこでは大昔のクラシック作品が無料で視聴できます。

 

 

 

またみなさんがお持ちのLPレコードやWorld of brassを筆頭に様々なCDショップでセール品で売られているクラシックCDの中には名曲が多々あります。

 

「新しい曲ばかりやっていてはいけない」では決してありません。

この主張は、プログラムの中に一曲金管バンドクラシックを入れてみるのも逆に新たな刺激ではないでしょうか?という提案です。

 

しかし、選曲をする際、金管バンドファンに金管バンドの古典をお楽しみ頂くのは簡単ですが、一般の音楽ファンの方々にお楽しみ頂くのには工夫が必要です。

例えば

 

・スクリーンを用意
←金管バンドの歴史

←その曲の重要性

←その曲の時代背景や作曲者について

←各主題ごとに鍵となる映像や画像を映写

 

・絵や聴きながら楽しめる文章をプログラムノートに載せる

・曲の前、または組曲などだったら曲中に曲の説明や演出を入れながら演奏をする

・etc

 

など様々な工夫のもとお聴きいただけば7~15分ほどの長めの曲であっても興味関心のもとお聞きいただけるはずです。

避けたい点はこちらの想いばかりとなり、古典の曲も金管バンドファン目線での提供ばかりとなってしまうとどうしても楽しみ方がわからないまま終わってしまう、それは無念です。

理想はまだ10代にもなっていない子供達にも聞いてもらえるような工夫ができたら最高です。

 

ぜひ日本の金管バンド奏者のため、そして我々の金管バンドの音色を楽しみに足をお運びくださるお客様のため考えてみてください。

 

まとめ

膨大な数ので作品が毎年生み出されている割に定番の曲ばかりが選ばれたり、古典の尺が長い作品は敬遠されたりする現状があります。

しかし、少しの工夫と新しい事への取り組み一つで、お客様により新しい世界を提供できる可能性は大いにあります。

 

また選曲においても、ある楽器を目立たせてみたり、バンドの配置を変えたりと単調になりやすいアンサンブルの欠点を逆手にとり、シンプルゆえに変化をさせやすいという利点に変換させ様々な工夫を取り組みましょう。

 

さらに既存の楽曲だけではなく、母国の作編曲家たちの力をさらに借り新しい私たち日本人のための作品を生み出す機会を増やし、日本印の日式金管バンドの発展を願います。

 

何事もバランスといいますが、英国や他欧州、アメリカ、豪州の作品は膨大な数があります。そこへ極東の日本産レパートリーが増えたらとても名誉な事です。

 

日本の金管バンドのさらなる発展にまたワクワクしますね。

 

ご読了ありがとうございました。

 


河野一之

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