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カープァ王国女王アウラ一世は、私室に腹心の部下数名を集め、非公式の会合を開いていた。
 テーブルの上に添えられた燭台の炎が、広い室内を薄暗く照らし出す。
 アウラは、南国らしい蔓を編んで作られた椅子の上で足を組み、集まった腹心の部下達を見据え、口を開く。

「で、婿殿のご様子は?」

 最初に話を振られたのは、一番端に控えていた、長い金髪の若い侍女だった。

「はい。先ほどやっと眠られたようです」

「そうか、良かった。しかし、婿殿は随分と夜にお強いようだ。今後は後宮の照明代を別途用意しておいた方が良いかもしれんな」

 アウラは考え込むように組んだ腕の上に顎をのせ、そう呟いた。
 善治郎が聞けば、不本意に感じる評価だろう。現在の時刻は、精々夜の十時前後。平日の帰宅は深夜零時、一時が当たり前だった善治郎の感覚でいえば、恐ろしく早い就寝である。
 善治郎としては、自分が寝るまで仕事から解放されない侍女達に気をつかい、たいして眠くもないのにあえて火を消してベッドに潜り込んだのだ。
 それを、「遅い」「夜に強い」などといわれては、立つ瀬がない。

 しかし、それも無理はない。その気になれば電気で二十四時間、いつでも十分な灯りが取れる現代日本と、灯りといえば原則、松明、蝋燭、ランプといった『炎』その物しか存在しないこの世界とでは、夜という時間帯に対する認識が根本的に違う。
 この世界では、夜開いている店舗というのは、ごく一部の職種に限られている。非常に忙しい王宮の中枢部でも『夜は寝るもの』という認識が、強く染みついているのである。

 アウラの言葉を受け、正面に立っていた文官らしき細面の中年男が、発言する。

「なにはともあれ、ご婚約成立、おめでとうございます、陛下。して、陛下はゼンジロウ様の人となりを、どのように見られましたか?」

 中年の男――ファビオ?デウバジェは、アウラの秘書官である。秘書官とは、本来それほど高い権限を持つ役職ではないのだが、現在カープァ王国は、女王であるアウラが宰相も元帥も置かず、政府と軍を直接指揮しているという関係もあり、『女王の右腕』と称される彼の権限は、その役職からは想像もつかないくらいに大きい。

 女王は、信頼する腹心の言葉に、小さく肩をすくめると、

「予想していたより遙かに頭が切れる御仁だ。冷静な判断力もあるし、度胸もそれなりに据わっている。これは『悪い誤算』だな」

 そう、言った。
 褒め言葉にしか聞こえない評価を、『悪い誤算』と言い切るのは、女王が夫に有能さを求めていない証拠である。
 アウラにとって理想の夫とは、ふってわいた贅沢におぼれ、金や女、美食といった即物的な欲望を満たすだけで満足し、政治権力には一切興味を示さない男である。

「特にあの、最後の質問。ゼンジロウ殿は、恐らく私の意図に気づいていた。その上で、こたびの婚姻を受け入れてくれたのであろうよ」

 アウラは、昼間のやり取り思いだし、クツクツと笑う。なにせ、わざわざ「もし私が、結婚した後、後宮に引き籠もり、可能な限り外部との接触を断ち、ただひたすらダラダラと遊びほうける日々を過ごしたとしたら、どう思うか?」なとど、ダイレクトに聞いてくるくらいだ。
 こちらが夫に何をして欲しいのか、より正確に言えば「何をして欲しくないのか」、十全に理解していると考えた方が良い。

「最初は平民の生まれ育ちだと思ったのだが、あの聡明さからすると、婿殿は異世界の貴族階級なのかもしれん」

「確かに、ありえますね」

「立ち振る舞いやマナーなどには少々疑問が残りますが、無学な一般庶民としては少々不自然なことは、事実です」

 アウラのかな