これだけの通信網
そしてその速度
いま飛び交う情報量を
かつて
想像していた人は少ないのではないか
得たものは計り知れないが
失ったものもまた計り知れない
情報を知ったときの感動
かつて
電話は有線であり
情報を知る手段はラジオ、新聞、テレビくらい
いつもすれ違う人が誰なのか
何時にどこにいけば会えるのか
毎日試しながらやっと分かっていくもの
この行動はいまではストーカーと呼ばれる犯罪となっていく
やっとの想いで声をかける
限られた時間で必死に相手を知ろうと
下手くそなトークでがんばって引き出せた情報は
せいぜい学校名くらいなもの
電話なんてできない
親や兄弟が出たらどうする!?
今度は自分を知ってほしいと思う
手段は手紙
文才なんてない
絵文字でごまかせない
ひらがなばかりでは知性がないと思われるから
辞書を片手に難しい漢字を
何回か新聞広告の裏に書いてから
手紙に書き足していく
完成した手紙は
自分のことばかり書いてある
これを読んだら相手はどう感じるんだろう
あとこんな汚い字では嫌われるのではないか
いや
別にいま嫌われるとか好かれてるとか
そんな次元ではないではないか
書いた手紙をくしゃくしゃにして
ゴミ箱に放り込んで疲れて寝てしまう
何日もそれを繰り返して
やっと完成した手紙
なぜか八つ折りにしてポケットにいれておく
いつもの時間
手紙が完成するまではその時間と場所を避けていた
相手はそこにいた
さていよいよ渡そうか
こんにちは
と、互いに挨拶をする
唐突に相手から手を出してと言われ右手を差し出す
なにかを渡された
渡すだけ渡して相手は走り去っていった
手紙だった
家に帰ってひとりひっそりと渡された手紙を読む
字がきれいで
あの子がどんな子だったのか
何を思っていたのかを理解する
ポケットに入っている自分の手紙を破り捨てる
書かなければならないことが変わったから
返事
書かなきゃ
というとてつもなく面倒で時間のかかる作業ののち
知ることができた情報は
大変重く尊く愛おしいものになる
この壮大な崩れる気配のない現在の通信網が壊れた瞬間
失うものは大きいのであろうが
違う感覚ではあるかもしれないが
ふたたび大切ななにかを得ることに
なるのかもしれないな